宇垣美里が語る、マンガから学んだ生き方 「自分を嫌いになっても変えられないから、好きになるしかない」
フリーアナウンサーとして多方面で活躍する宇垣美里の新著『今日もマンガを読んでいる』が、2021年12月14日、文藝春秋から発売される。宇垣にとって4冊目の著書となる本書は、2019年から現在も続いている「週刊文春」連載の「宇垣総裁のマンガ党宣言!」をまとめたもので、大のマンガ好きで知られる宇垣の「マンガ愛」が余すところなく詰め込まれている。
独自の視点で選りすぐった54作品の紹介をメインとしながら、これまでの経験や人生観、フィロソフィーをミックスさせている点が秀逸で、その快活な語り口は読み手にマンガへの興味はもちろん、読者にたくさんのワクワクを与えてくれるのではないだろうか。加えて本書には、宇垣が敬愛する作家・恩田陸氏との対談「わたしたちは少女マンガで強くなった」の他、TBSアナウンサー時代に書いたエッセイ8篇も収録。宇垣ファンにも、マンガファンにも、マンガにあまり馴染みのない宇垣ファンにも、そして多くの読書好きの人々にも受け入れられる一冊と言えるだろう。
そんな本書の発売を前に、宇垣本人にインタビュー。マンガへの想いや連載にあたっての苦労話、クリエイティブな活動に対する考えなどについて訊いた。(木下恵修)
1日に2~3冊のペースで次々とマンガを読破
ーー宇垣さんにとって4冊目の著書、まずはおめでとうございます。連載中のコラムが書籍化されるなど人気が伺えるわけですが、本書の発売にあたって、あらためて感想をお聞かせください。宇垣:ありがとうございます! 現在いくつか連載をさせていただいているんですけども、そのなかで「宇垣総裁のマンガ党宣言!」は私にとってトップレベルでカロリーの高い連載なんです。時間もかけていますし、締切にウンウンうなされながら書いたりもしていますので、そんな力をかけているものが本になるのは、純粋にとても嬉しいです。
ーー連載のオファーがあったときは、どのように感じましたか?
宇垣:私がとってもマンガを好きだということを知ってくださって、共通の友人を介してご連絡をいただきました。以前から書くこと自体は好きでしたし、連載が増えることも嬉しかったです。何より好きなことを仕事にできるのはとっても幸せなことだと思っていますので、こうしてお声がけいただいて本当に幸運だなと感じました。
ーー普段どのくらいマンガを読んでいますか? また、どのような過程で紹介するマンガを決めているのでしょうか。宇垣:その時々によって違いはありますが、1日に2~3冊は読んでると思います。新刊に限らず、SNSの広告で出てくるような懐かしいマンガなども読んだりしています。急にハマっちゃって『金色のガッシュ!!』を全部読んでみたり、「ジャンプ+」や「Mee」などのアプリを使って1話ずつ読んでいるものもあります。
隔週で締切があって、編集者さんから「次はどのようにしますか?」とご連絡をいただいたら、2週間のうちに読んだマンガをお伝えし、これまでの連載内容と雰囲気が被ったりしないかなどを考慮した上で絞っていただいて、最終的に紹介作品を決めています。基本的に新刊のものを紹介しているのですが、タイミングの問題で発売されて少し経ってから気づいた作品や、以前にも取り上げた作者の作品でどうしてもご紹介できないものもありました。一方で、編集者さんに「この作品について書きたいです!」と相談して、それで組んでいただくこともありますね。
ーー連載を始めてから、あらためてマンガに対する想いや考えなどについて、気づきはありましたか?
宇垣:それまでは、マンガを読んで「メッチャ良かった」という感じで自己完結していたのですが、連載にあたっては「言葉」にしなければなりません。作品を読んで「どういう意味で」「どう感じて」「どう心を動かされたのか」など、自分なりに因数分解するように解き明かす必要があります。それは、自分自身を理解する手立てにもなったと思いますし、言葉にして説明することの大切さ、感情をきちんと言葉に表現することの大切さをあらためて感じましたね。やっぱり、こうした機会がないとどうしてもフワッと楽しんで終わっちゃうんですけど、「何が・なぜ、良かったんだろう」ということを考えることにより、作品に対する理解がとても深まったように思います。
シスターフッドを描いたようなマンガも、少年マンガも
ーーマンガに目覚めたきっかけは何だったのでしょうか?宇垣:もともと本を読むこと、「物語」に触れることがすごく好きだったんです。物心ついたころから絵本が大好きで、両親も「この子は本が好きなんだな」と思ってくれていたようで、いろいろと買い与えてくれましたね。小学生のころは「りぼん」や「ちゃお」などの少女マンガ雑誌も読んでいましたが、私にとっては「物語が好きだ」というラインのなかにマンガもあったという感じです。特別にマンガだけを追い続けてきたということではなく、通常の本も好きですし、映画も舞台も好きですし。そのなかで一番身近にあったのがマンガだったのかなと思っています。
ーー子供のころに読んだマンガ作品で印象に残っているものはありますか?
宇垣:テレビをつけたらアニメが流れていますので、割とそっちから入ることも多かったんですよね。たとえば『セーラームーン』とか、連載の第1回目で紹介した『カードキャプターさくら』とか。こうした作品たちがもともとはマンガだったことを知って、コミックスを貸してくれる人がいて読み始めたのが始まりですね。『名探偵コナン』や『犬夜叉』なども、そうした原体験のなかで知って好きになった作品たちです。
ーー少女マンガもたくさん取り上げていらっしゃいますが、このごろの少女マンガの傾向いついて、感じるところはありますか?
宇垣:マンガって時代を先取りするものですし、より自由な作品が増えているなと感じています。もちろんそうではない作品もあると思いますが、私が好んでそうした作品をチョイスしているというのもありますね。「こうあるべき」みたいな従来の発想から解き放たれた作品がすごく多いなと。たとえば、女の子同士でケンカするのではなく手を取り合った良い関係性を描いたような作品が増えているように感じていて、すごくホッコリしますね。たとえば、藤井みほな先生の『GALS!』ですね。この連載では続編の方の『GALS!!』を取り上げています。もともと女の子同士の友情を描いた作品なのですが、最初の作品から時を経て主人公の蘭ちゃんを時代が求めているんだなと感じました。基本的に私はシスターフッド(女性の絆)を描いたような物語が好きなので、そうした傾向の作品を多めに取り上げているかも知れませんね。
ーーたとえば『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』、『進撃の巨人』などの大人気少年マンガも複数取り上げられていますが、女性である宇垣さんから見た少年マンガの魅力とは何でしょうか?
宇垣:子供のころから「少年ジャンプ」も読んでましたし、私は『ONE PIECE』の世代で、「みんな読んで然るべき!」みたいなマンガも多かったので、とくに“少年マンガだから”という意識はないですね。ブームになる作品も多いと思いますが、それだけ多くの人に刺さるものがあって、それこそ世相を反映した作品もありますよね。そのなかで、どこかに自分を重ねたり、ドキドキワクワクできるようなところが魅力なんだろうなぁと思います。たとえば『チェンソーマン』の藤本タツキ先生の作品には、先生ご自身の意志や信念、一本筋の通ったようなものがどの作品にも感じることできて以前から好きだったので、「時代が追いついたぜ!」といった気持ちです(笑)。