UDAが語る、初の著書『kesho:化粧』に込めた思い 「伝えたいのは、メイクの“How To”ではなく“考え方”」

UDAが『kesho:化粧』を作った理由

 2021年4月29日、メイクアップアーティストのUDAが自身初となる書籍『kesho:化粧』(NORMAL)を発売した。本作は、2015年から2017年にかけて、美容専門誌『HAIR MODE』(女性モード社)の連載にて披露した“七十二候(「立春」や「夏至」などの二十四節季をさらに細分化した日本の季節の表し方)に基づいたメイク”をまとめた一冊。連載時にはなかった候も新たに追加し、七十二候分のメイクを見事に完成させている。

 今までのメイク本にはない新感覚のアプローチ。本作制作の裏側で、UDA氏は何を感じていたのか。368ページの重みに込められたメイクへの思いを聞いた。(とり)

『kesho:化粧』に掲載された写真

和菓子から着想した日本人にあったメイク

――本作で伝えられているメイクは、いわゆるトレンドに則った「How To」ではなく、もっと根本的なメイクへの「考え方」に触れるものだと思いました。どのような経緯で本作を制作するに至ったのか、キャリアの振り返りも含めて、あらためて聞かせてください。

UDA:まず、僕は2011年から約7年間、ファッション誌『GINZA』(マガジンハウス)で「ニッポン美人化計画」という連載をやっていました。この連載は、ファッション誌によくあるような“プロのモデルでトレンドメイク”を紹介するのではなく、一般の方を街でハントして、その人それぞれの“個性や特徴を活かしたメイク”の楽しみ方を伝えるのが目的で。当時、一般の方の魅力をひとりずつ引き出すような連載は他になかったから、「ニッポン美人化計画」が見たくて『GINZA』を購読している読者もいたくらいです。最終的には110人もの女性に出演していただきましたが、連載が終わる頃には、2000通ほど応募が来ていたそうです。

――UDAさんにメイクをしてもらいたかった女性が、少なくとも2000人はいたというわけですね。

UDA:例え連載が続いたとしても、2000人全員を連載の中でメイクするのは途方もないですよね!(笑)。じゃあ、どうすればみなさんの気持ちに応えられるのか。そう考えたとき、ふと「美容師さんだ」と思って。

――美容師さん、ですか?

UDA:髪を切ってもらう際、みなさん基本的には、信頼のある美容師さんにお願いするじゃないですか。そんな美容師さんが、ヘアセットと一緒にメイクを提案することができたら、2000人どころか、もっと多くの方が自分にあったメイクを見つけられるかもしれないと思ったんですよね。『HAIR MODE』で連載をはじめたのは、そのような狙いからです。

――そうだったんですね

UDA:その頃、たまたま他誌のビューティページで「桜ビューティー」をテーマにしたメイクの仕事があったんですよ。目頭や目尻に蛍光ピンクをちょんちょんとのせて、花を咲かせるような感じのメイクで。その仕上がりを見て、まるで和菓子のようで西洋的なメイクよりしっくりくるなと感じて、自分のなかで新しい表現に繋がった実感がありました。和菓子の表現を辿れば、より日本人の顔立ちにあったメイクができるのではないか?と。そこから、和菓子をはじめとする和の色使いがどのようなアプローチから生まれているのかについて、詳しく勉強するようになりました。

――本作の冒頭にて、本作が示す「kesho」の概念を説明するにあたって書かれているエピソードですね。和菓子の色使いが日本人にあうというのは、本作で紹介されているメイクを見て大変納得しました。

UDA:そもそもメイクの多くは、西洋人の“立体的な顔”に対するコンプレックスから影響を受けていると考えていて。東洋人である日本人が西洋人の顔立ちにあわせてメイクことだけでは限界があるというのは、前から薄々感じていたし、和菓子のようなかわいらしさは、若者にも、おばあちゃんにも、何なら七五三でメイクをする子どもにもしっくりくるはずだとも思っていて。

 その矢先、タイミングよく『HAIR MODE』で一冊丸ごと特集を組んでもらえることになったんですよ。そのため『HAIR MODE』での取材も兼ねて、和文化を学びに京都へ行きました。ちょうど別の仕事でお世話になっていた京都で460余年続く老舗の呉服屋・千總(ちそう)さんに伺って、着物や染めの職人さんに話を聞いたほか、和菓子の職人さんや芸妓さんの頭を結う専門の方など、さまざまなスペシャリストに取材をさせていただいて。そうしたら、みなさん口を揃えて「季節」の話をされていて。

――なるほど。確かに、俳句に季語があったり、季節ごとに旬の食材を味わったり、四季は日本の文化に深く関っていますもんね。

UDA:そうなんですよね。それで今度は、季節についても調べるようになって、本作のインスピレーション源ともなった和菓子の作品集『IKKOAN』(青幻舎)に出会いました。これは、東京にある和菓子屋「一幸庵」の店主・水上力さんが、和菓子で七十二候を表現し、それらを作品としてまとめた一冊で、僕自身、七十二候という季節の表し方もこの本ではじめて知りました。

 衝撃でしたよ。“メイクに和菓子の要素を取り入れる感覚”を表現するための拠り所はこれしかないって思いました。

――各メイクに記されている「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」や「桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)」というタイトルは、七十二候で表されている季節の名称なんですよね。

UDA:そうです。当初は50パターンくらいのメイクを掲載する予定でしたが、季節感の表し方もまだ曖昧でした。それが、72パターンという具体的な数字と根拠が見つかったから、もう七十二候以外の選択肢はありませんでした。季節と一口に言っても、「夜は肌寒くなってきたよね」「気付いたら葉っぱの色が変わっているね」といった具合に、緩やかな移ろいがありますよね。この繊細なディテールから受ける感覚をメイクに取り入れる「考え方」を実感してもらう意味でも、七十二候の季節感は非常にピッタリでした。



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