『女の園の星』小林先生はなぜ熱狂的なファンを得たのか? 不思議な魅力を考察
『女の園の星』の売り上げが累計100万部を突破した(2021年9月16日現在)。9月3日にはLINEスタンプが発売され、発売直後にクリエイターズスタンプの全世代ランキングで1位を記録するほどの人気を博している。
スタンプのラインナップとして、照れ顔をする「星先生」や女子生徒「松岡さん」の描く『エターナル カオル』のワンシーン、作中で「幸運を呼ぶステッカー」として噂になったクワガタボーイなど、個性豊かな顔ぶれが集結している。
スタンプとして収録された人物は星先生が最も多いが、2番目に多かったのは「小林先生」のスタンプであった。観察日記をつけるほどのファンがいる星先生とは対照的に、作中で生徒から支持される様子があまり見られない小林先生。しかし読者からの人気は非常に高く、誕生日である2021年の6月30日には、SNSでイラストや「#小林先生ピザ食べて」というハッシュタグと共に誕生日を祝うメッセージが数多く投稿された程だ。本稿では読者から熱狂的な支持を得る小林先生の魅力を考察したい。
大人な雰囲気とのギャップが生まれるふるまい
職員室では星先生と会話をするシーンが多い小林先生。数学科の担当であり、小林先生の弟も作中に登場している。またバレー部の顧問を担当しており、作中に登場する他の先生と比べて腕や肩回りの筋肉が発達しているように見える。
お兄さんという立場や筋肉質な体型から、大人として頼りがいのある人物のように見えるが、どこか子どものような一面も多く垣間見える。
例えば「4時間目(第4話)」で描かれた星先生と服装について会話する場面。星先生が毎日同じ種類のシャツを着ていることから、小林先生は星先生の家がシャツの工場であり、人型のロボットがその日の体調に最適な一着を選んでくれるという妄想を、3ページにわたり頭の中で繰り広げる。
「8時間目」では同僚の中村先生が80歳のおばあちゃんと夜中の公園でヨガ選手権を開催しているという、あからさまなデマを信じ込み、星先生に突っ込まれる姿も見られた。見た目と反し子どものようなあどけなさから生まれるギャップは、小林先生の魅力のひとつであろう。
ときに幼さを感じさせる小林先生であるが、女子生徒との距離感はさほど近くないように思える。「5時間目」において、星先生の誕生日をお祝いするためにバズーカ砲を模したクラッカーを持参した「鳥井さん」との会話で、小林先生は「つまんな~い」や「くだらな~い」など素っ気ないと思える対応をする様子が見られた。
また「10時間目」では生徒から「授業で当てるとき…地味に怖くない……?」や「なんかたまに寄生獣っぽくなるよねあの人…」などの印象を持たれていることも明かされた。
女子生徒たちが魅力として感じているかは定かでないが、生徒に媚びることをせず、ミステリアスな一面を匂わせる様子も小林先生のキャラクターに深みを出しているのだと感じる。