『東京卍リベンジャーズ』『代紋TAKE2』 …… アウトローとタイムリープの親和性の高さを考察

なぜアウトローとタイムリープは親和性が高い?

 話を戻して、『東京卍~』は『東京リベンジャーズ』として実写映画化されたが、そこでキャスティングされたのは若手イケメン俳優たちだ。その並びの話題性や彼らの人気を見込んでのこともあるだろう。しかしポイントは彼らが“今が旬”の存在であることだ。彼ら自身が放つキラキラやギラギラが、あの頃、あの場所で、あの時代を生きていた刹那的な男たちの輝きや危うさや色気に重なる。『東京卍~』を読んでいると、こちらもまた往年のヤンキー漫画である『ホットロード』(紡木たく)のフレーズが頭をよぎる。「もう一度 あの頃のあの子たちに逢いたい」。同じ意味での感傷が、『東京卍~』にも漂う。

 青春を懐かしむタイムリープもの自体も数多いが、その中でも不良ものはいつまでもこんな時代は続かないという終わりの気配が色濃い。今となってはヤンキー漫画のイメージはまるでないが、松本大洋もまたはみ出した青春を描いてきた漫画家だ。

 氏が1993年に発表した『青い春 松本大洋短編集』(小学館)のあとがきでこんなことを綴っている。

「学生時代、私は俗に『不良』と呼ばれるタイプの人間では有りませんでしたが、その類の友人は多く、(中略)彼らの写真をよく撮らされました。(中略)今にして思えば現在をすでに過去として捉えていた彼らにとってカメラというアイテムがとても重要であることも理解出来るのです(中略)」

 今は終わる。抗争には終止符が打たれる。無茶をしていた少年たちは分別を知る大人になる。また、その中で命を落とす人もいる……。そこにこそアウトロー×タイムリープの親和性の高さがある。あの時代はあの時代にしかないと語って見せているという意味では、タイムリープもののアウトローものほど倫理観の高い作品はないとも言えるかもしれない。若さならではの大暴れ×その若さも終わるという無常観。実は不良とSFミスマッチ以上に、そのギャップとそれがもたらす切なさがアウトロー×タイムリープの肝だ。

■書籍情報
『東京卍リベンジャーズ(1)』
和久井健 著
定価:
出版社:講談社

『代紋TAKE2(1)』
原作:木内一雅
作画:渡辺潤
定価:660円(税込/電子)
出版社:講談社

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