昭和の劇場を彩った「一週間の芸術」映画絵看板が1冊に 看板絵師へのインタビューも

昭和の劇場を彩った「一週間の芸術」1冊に

 昭和の映画絵看板を作品解説ともに紹介した『昭和の映画絵看板 ~看板絵師たちのアートワーク~』が、2021年6月16日にトゥーヴァージンズより発売された。

 映画全盛期の昭和30年代を中心に、かつて映画館や劇場街には巨大な「手描きの絵看板」が掲げられていた。一週間ほどで掛け替えられる絵看板は、その華やかさと儚さから「一週間の芸術」とも言われていたが、映画があまりにも日常的であったためか、現存する記録写真は僅かしかなく貴重な資料となっている。

 本書は、大阪の通称「ミナミ」と呼ばれる難波、道頓堀、千日前周辺で絵看板を手がけていた工房「不二工芸」で奇跡的に残されていた貴重なアーカイブから、国内外の名作絵看板写真を紹介。保存されていた1,000枚の記録写真から、厳選した300枚を全作品解説つきで掲載。映画絵看板の写真を通して戦後の映画史を展望することができる。

 激動の時代・昭和を、映画史とともに年表化し、社会情勢と映画が相互に影響を与えあっていた戦後から昭和末期の時勢も理解し、文化的観点からも当時の日本を一望できる。ほかにも、かつて看板絵師として活躍していた職人へのインタビューや昭和35年の大阪・千日前の「タイムスリップマップ」を収録。映画が最大の娯楽であった当時の人々の生活を、多角的な視点から眺めることができる。

 本書のアートディレクションは、是枝裕和監督『海よりもまだ深く』の宣伝制作や「サントリーウーロン茶」などの広告制作で知られる、アートディレクター・葛⻄薫氏が担当。人の目を惹きつける要素をふんだんに詰め込みデザインされた映画絵看板とは対照的に、その芸術がもっとも引き立つように、整えられたシンプルなデザインが魅力の1冊となっている。

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《作品紹介例》
○第1章 昭和20年代の映画看板 1947-1954
『シンデレラ姫』『別離』『硫⻩島の砂』『若草物語』『凸凹海軍の巻』『ジャンヌ・ダーク』など
○第2章 昭和30年代の映画看板1 1955-1959
『十戒』『日本誕生』『ベビイドール』『標高8125メートル マナスルに立つ』『エデンの東』など
○第3章 昭和30年代の映画看板2 1960-1964
『太陽がいっぱい』『⻄部に賭ける女』『敵は本能寺にあり』『キングコング対ゴジラ』『マイ・フェア・レディ』など
○第4章 昭和40年代の映画看板 1965-1972
『東京オリンピック』『メリー・ポピンズ』『パリは燃えているか』『ドリトル先生不思議な旅』『風と共に去りぬ』など
○第5章 昭和50年以降の映画看板 1975-1987
『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』『007/ムーンレイカー』『里見八犬伝』『スター・ウォーズ』など

■書籍情報
『昭和の映画絵看板 ~看板絵師たちのアートワーク~』
監修:岡田秀則
企画:貴田奈津子
アートディレクター:葛⻄薫
発売日:2021年6月16日
定価:本体価格2,700円(+税)

監修:岡田秀則(おかだ・ひでのり)
東京大学教養学部卒業。国立映画アーカイブ主任研究員。映画のフィルム/関連マテリアルの収集・保存や、上映企画の運営などに携わり、映画展覧会のキュレーションも担当。国内外の映画史を踏まえたさまざまな論考を発表している。著書に『映画という《物体 X》』(立東舎)がある。

企画:貴田奈津子(きだ・なつこ)
主に日仏間でアーティストのエージェント業務に携わり、広告や出版の仕事が多い。訳書に『フィリップ・ワイズベッカーの郷土玩具一二支めぐり』(⻘幻舎)、著書に『絵本のつくりかた〈2〉 ―フランスのアーティスト10名が語る創作のすべて』(美術出版社)などがある。

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