ヤンキー×SF『東京卍リベンジャーズ』はなぜ“読ませる”? 複雑なストーリーの中に光る、和久井健のセンス
物語を創作する手法に、かけ離れた題材を組み合わせるというものがある。和久井健の『東京卍リベンジャーズ』も、そのひとつといえよう。なにしろ「ヤンキー」と「タイムプリープ」を組み合わせているのだ。原作・木内一雅、作画・渡辺潤の『代紋TAKE2』のような、「ヤクザ」と「タイムスリップ」を組み合わせた先行作品もあるが、内容はまったく別物。ヤンキー漫画とSF漫画が混然一体となったストーリーを、新鮮な気持ちで楽しめるのだ。
物語の主人公は、26歳童貞フリーターの花垣武道。自堕落にテレビを見ていた彼は、暴走族「東京卍會」の抗争に巻き込まれ、中学時代に恋人だった橘日向(ヒナタ)と、彼女の弟の直人が死んだことを知った。さらに何者かによって、電車のホームに突き落とされ、自身の死を確信する。だが気がつくと、中学2年の自分になっていた。この時点では走馬灯だと思っているが、タイムリープしたのである。
仲間たちと不良を気取っていた武道は、それとは知らずに東京卍會のメンバーと喧嘩し、ボコボコにされる。これがきっかけになり、人生を踏み外すことになったのだ。その後、武道は公園で絡まれていた小学生の直道を助けて握手をした。すると現代に戻ることができた。
驚く武道の前に現れたのが、組織犯罪課の刑事になった直人だ。過去の出会いにより、歴史が変わり、直人は生きていたのだ。しかしヒナタは、この歴史でも東京卍會の抗争に巻き込まれ死んでいた。直人から、武道が12年前の今日にタイムリープできる可能性が高いこと。現在と未来を往還するトリガーが、直人との握手らしい聞いた武道。ヒナタが死ぬ歴史を変えるため、東京卍會のツートップ、佐野万次郎と稀崎鉄太の出会いを阻止するよう頼まれる。かくして武道は再び12年前に跳ぶのだった。