『るろうに剣心 最終章 The Final』は“重すぎる原作”をどう昇華する? 漫画版「人誅編」から考察

『るろうに剣心』映画は原作をどう昇華?

 コロナ禍の影響で公開延期を余儀なくされた映画『るろうに剣心 最終章 The Final』がいよいよ公開となった。最終章の名の通り、原作の「人誅編」を実写化した今作の見どころについて、原作を振り返りながらポイントを3つ挙げていきたい。

剣心が悩み、苦しみ、絶望する重すぎる展開

 まず挙げられるのが、人誅編はとにかく“重い”ということであろう。それまでの『るろうに剣心』は、登場人物それぞれが“幕末”という動乱の時代を生きてきたが故に心に傷を負い、その経験から養われた信念、想いを貫き、新時代を生きていこうとしていた。時にその信念がぶつかり合い、対立する様を、少年漫画らしいバトルとエンターテインメントに昇華して描いてきた作品だ。

 しかしこの人誅編は、いわば剣心の過去、緋村(人斬り)抜刀斎として犯した罪への弾劾と剣心自身の贖罪の物語である。剣心の回想、悩み、絶望……とにかく明るい話題が本当に終盤まで訪れない。当時、作者の和月伸宏自身も、どうやっても話が重くなる展開をいかにしてエンタメに持っていくかに苦慮した様子が伺えたが、先の志々雄編が少年漫画として最高の王道展開だっただけに、テーマ的にそれ以上のカタルシスをもたらすには至らなかったというのが正直な感想ではある。

 ただ、この剣心の悩みや苦しみの心理描写、雪代縁の姉・巴への盲執と剣心への狂気を孕んだ憎しみ、薫の剣心への想い。これらは実に実写表現向きのファクターだろう。役者たちの演技によって、この重い展開に対してより感情移入させることができるのか、まずはバトルシーン以外のパートでの表現に注目したい。

雪代縁とのバトルシーン

 姉を殺された恨み、殺した相手である剣心への憎悪を糧に魔都・上海の修羅場に身を投じ、倭刀術を身につけ闇社会の頂点へ登り詰め、いよいよ復讐をはたさんがために満を辞して剣心の前に姿を現した、今作最大の敵である雪代縁。剣心への苛烈な憎しみのために異常発達した神経、狂経脈による超人的な運動能力と、日本の剣術に大陸の体術を合わせた倭刀術を合わせ繰り出されるダイナミック攻撃の数々は、剣心がこれまで戦ってきたどの剣士よりも独特であった。

 映画『るろうに剣心』シリーズのアクロバティックで迫力あるバトルシーンはこれまでも定評があったが(牙突を除く)、縁の動きはおそらくこれまでのバトルシーンとは違った、新たな世界を我々に見せてくれるのではという期待感は大きい。この内面の表現もバトルのアクションも難しい縁という役を、新田真剣佑がどのように演じているのか、こちらも目が離せないポイントである。

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