『るろうに剣心 最終章 The Final』は“重すぎる原作”をどう昇華する? 漫画版「人誅編」から考察

『るろうに剣心』映画は原作をどう昇華?

左之助、弥彦との関係性

 人誅編自体がいわば剣心と雪代家の私闘である一方で、原作では左之助、弥彦、ほかの主要メンバーも要所要所で重要な役割を果たしている。剣心の贖罪と答え探しがテーマの1つではあるが、縁(そして巴、薫)絡みの出来事だけでなく、徹頭徹尾、答えは決まっていてブレない斎藤一、志々雄編で一つの答えを見出した蒼紫、そしてそれぞれの答えをみつけていく左之助、弥彦らの存在も見逃せない。彼らの存在があったからこそ、剣心は答えに辿り着くことができたのだ。

 左之助、弥彦がらみのエピソードも人誅編では重要なのだが、左之助のエピソードはその性質上、ちゃんと描かれないのが非常に惜しい内容である。もともとこれまでの作品も映画の尺の問題で、左之助との関係性はそこまで深く描かれていないが、『るろうに剣心』を語る上で、やはり剣心と左之助の男同士の信頼関係、その二人を見て育った弥彦というのは欠かせないファクターである。急に今作でこの関係性が深く描かれることはないと思うが、原作の片鱗を少し感じられるといいなと期待する部分もある。

 以上3つのポイントを挙げてみたが、これまで映画を追ってきて原作は未読という方がいたら、ぜひ原作を読んでみてほしい。なぜ映画『るろうに剣心』がこれだけ素晴らしい作品になったのか、なぜ『るろうに剣心』という漫画が長く愛されている作品なのか、そして当時のジャンプを支えていた看板作品だったのかが理解できるはずだ。

 6月に公開の『The Beginning』では人誅編の回想シーン、人斬り抜刀斎と巴の出会いと別れまでが描かれる。こちらに関しては短編のエピソードとしては漫画作品としても屈指の名作であると言える内容だ。ぜひ公開前に原作を一読いただけると、より映画が楽しめ、そして泣けることは間違い無いだろう。ちなみにOVA化された追憶編、これも素晴らしい作品なので、観ることをお勧めしたい。

■関口裕一(せきぐち ゆういち)
スポーツライター。スポーツ・ライフスタイル・ウェブマガジン『MELOS(メロス)』などを中心に、芸能、ゲーム、モノ関係の媒体で執筆。他に2.5次元舞台のビジュアル撮影のディレクションも担当。

■書籍情報
『るろうに剣心 完全版(15)』
和月伸宏 著
価格:1,257円(税込)
出版社:集英社
公式サイト

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