資本主義ではなく“地球”の限界がやってくる? 『人新世の「資本論」』が2月期月間ベストセラーに

地球の限界を考える『人新世の「資本論」』

2月期月間ベストセラー【総合】ランキング(トーハン調べ)

1位『推し、燃ゆ』宇佐見りん 河出書房新社
2位『星ひとみの天星術』星ひとみ 幻冬舎
3位『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン/久山葉子 訳 新潮社
4位『NHK大河ドラマ・ガイド 青天を衝け 前編』大森美香 作/NHKドラマ制作班 監修/NHK出版 編 NHK出版
5位『心淋し川』西條奈加 集英社
6位『2021 J1&J2&J3選手名鑑』サッカーダイジェスト 責任編集 日本スポーツ企画出版社
7位『プロ野球カラー名鑑2021[ポケット版]』 ベースボール・マガジン社
8位『ONE PIECE magazine Vol.11』尾田栄一郎 原作 集英社
9位『現代語訳 論語と算盤』渋沢栄一、守屋淳 翻訳 筑摩書房
10位『人は話し方が9割』永松茂久 すばる舎
11位『本当の自由を手に入れる お金の大学』両@リベ大学長 朝日新聞出版
12位『在宅ひとり死のススメ』上野千鶴子 文藝春秋
13位『元彼の遺言状』新川帆立 宝島社
14位『呪術廻戦 逝く夏と還る秋』芥見下々、北國ばらっど 集英社
15位『ゴールデンパス 絶体絶命の中に開かれる奇跡の道』高橋佳子 三宝出版
16位『人新世の「資本論」』斎藤幸平 集英社
17位『てれびげーむマガジン March 2021』KADOKAWA
18位『呪術廻戦 夜明けのいばら道』芥見下々、北國ばらっど 集英社
19位『秘密の法 人生を変える新しい世界観』大川隆法 幸福の科学出版
20位『半藤一利の昭和史』 文藝春秋

 2021年2月期ベストセラーとして取り上げたいのは、1987年生まれの経済思想家・斎藤幸平『人新世の「資本論」』 (集英社新書)。中央公論社主催の「新書大賞」の大賞を受賞し、発行部数は20万部超。

 この本の主張は、二酸化炭素排出量を減らし、このままだと起こってしまう不可逆な気候変動の脅威を避けるには、巷で言われているようなSDGsやEVシフトなどでは不可能であり、資本主義ではなく著者が「脱成長コミュニズム」と呼ぶ生産様式への移行をするほかなく、そうすることで環境問題だけでなく、エッセンシャルワーカーが低賃金労働を強いられる構造や、長時間労働の是正などが可能になる、というものだ。

集英社新書らしい一冊

 集英社新書と言えば2011年に東日本大震災後に刊行された中沢新一『日本の大転換』や、2014年に刊行された、元証券エコノミストの経済学者・水野和夫による『資本主義の終焉と歴史の危機』、2019年刊行のマルクス・ガブリエルや斎藤幸平らの共著『資本主義の終わりか、人間の終焉か?』もベストセラーになっており、しばしば「資本主義はもう終わり」論でヒットを飛ばす左派レーベルという印象がある。

これまでの「資本主義の終わり」論との決定的な違いとしての「地球の限界」

 もちろん「資本主義の終焉」論は最近始まったわけではなく、問題の指摘とそのオルタナティブの提示は、斎藤氏が研究対象としている19世紀人のマルクスも言っていたし、資本主義が生み出す矛盾や危機が顕在化するたびに浮上してきた議論である。

 ただ今回は労働や貧困の問題が前に出ているのではなく、地球相手の話、自然科学レベルで予測されていることである故にこれまでの何度かの危機とは異なり、妥協・折衷的な改善では済まず、先送りすると生態系がとんでもないことになり、人類全体が大災害に見舞われかねない。

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