『静かなるドン』新鮮組の総長・近藤静也の“名言”はなぜ響く? 綺麗事のない正論を検証

『静かなるドン』新鮮組の総長・近藤静也の“名言”はなぜ響く? 綺麗事のない正論を検証

 新田たつお原作の漫画『静かなるドン』。昼間は下着メーカーに勤める冴えないサラリーマンだが、実は1万の組員を持つ広域暴力団・新鮮組の総長・近藤静也が繰り広げる物語は人気が高く、単行本が108巻販売され、1994年には日本テレビ系列で実写ドラマ化、2000年と2009年には映画にもなった作品だ。

 そんな「静かなるドン」の魅力の1つに、近藤静也の説得力のある「名言」がある。今回はそんな名言を検証してみたい。

人は過去を忘れて幸福になることもある!

 同じ下着メーカーに勤務し恋仲にある秋野から、腹違いの妹・静子が横浜で白藤龍馬の妻として一緒に暮らしていることを告げられた静也は、「どういうことですか。静子はあの不死身の怪物、異蔵と失踪したはずだが」と取り乱す。

 そんな静也に秋野は「大男がどうやって知り合ったのかわからないけれど彼(龍馬)の部下になっている」「静子は生死に関わる病に倒れ、スイスの病院で何年も眠っていたそうよ」「そして最近意識を取り戻して帰国してきた」と経緯を説明する。

 そして秋野から「医療費を払っていた龍馬さんを夫と思っていたわ」「静子さん、記憶を失ってしまったの。あなたや私のことは何も覚えていないみたいなの」と記憶喪失になっていることを告げられた。

 静也は「つらい過去はみんな忘れて生まれ変わった」と喜び、「龍馬は夫を演じてくれているんですね?」と確認。秋野が「私は彼の母親にされちゃった」と話すと、「お願いします。黙っていてください」「人は過去を忘れて幸福になることもある!」と頭を下げた。(83巻)

 人間、生きていれば忘れたい記憶はあるもの。しかし、自ら消すことはほぼ不可能だ。静也が言うように、過去を忘れることができれば、幸せになることも、多々あることだろう。

上に立つ者の器量で下の者はどうにでも変わるのさ

 幹部会で「なんで1度裏切ったやつが参加しているのか」「新鮮組の大幹部はそんな簡単になれんのじゃ」と憤る生倉。

 静也は「いいじゃねえか。俺が直接盃をやって幹部に取り立ててやったんだから」と制す。しかし幹部からは「それじゃあ道理が通らねえ。こいつら反逆者ですよ」と不満の声が上がる。生倉は新参の幹部である板子に対し、「こいつは必ずまた裏切りますよ。この男の腹黒さは舎弟にしていたワシが一番良く知っている」と警告した。

 静也は「いや、もう裏切らないさ」と断言。そして納得できない幹部たちに、「上に立つ者の器量で下の者はどうにでも変わるのさ」と自信を見せる。さらに「こいつらも生きていくために必死なのさ。馬鹿な親分についてみろ。一家離散だ」「カタギの会社だってそうだぜ。ダメな社長が去って有能なトップに代わったら、パーッと視界が明るくなるもんよ」と説いた。(93巻)

 組織にとってトップの器量は、結束や結果に直結するもの。企業でも社長の交代で傾く、業績を伸ばすなどするケースは多々ある。静也の指摘は、そんな世の中の組織を表したものであると同時に、「自分なら裏切らせない」という自信の表れにも思えた。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「書評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる