『ONE PIECE』ヤマトは麦わらの一味となるか? ワノ国編、最重要人物を考察
2021年1月4日に発売された「週刊少年ジャンプ」5・6合併号にて、記念すべき1000話を迎えた海洋冒険ファンタジー作品『ONE PIECE』(集英社)。1000話を突破した現在、作品は町人が和装に身を包み、侍が闊歩する「ワノ国」が舞台となっている。ルフィ初となる四皇との正面衝突に大きな盛り上がりを見せる『ONE PIECE』だが、本稿では作者・尾田栄一郎が「ずーっと描きたかった」と語るワノ国編のポイントを紹介する。
ワノ国は世界政府未加盟国であり、鎖国国家である。幼少の頃から「開国は悪」と徹底的に教え込まれ、出国自体が犯罪とされていた。そのため入国するだけでも一筋縄ではいかないが、ルフィたち麦わらの一味は四皇・百獣のカイドウの首を獲るため、ワノ国に潜伏することとなる。
現在のワノ国の状況は、無惨の一言。華やかなのは花の都のみで、かつては活気があった各里も今や残飯を漁らなければその日を生きられない暮らしを強いられていた。
その理由はワノ国を悪政で束ねる将軍・黒炭オロチと、その後ろに控えるカイドウだ。カイドウはワノ国を私物化し、大量の武器工場を島に構える。その影響で水や魚は汚染され、とても口にできる代物ではなくなっていたのだ。
モモの助や錦えもんの大切な故郷であるワノ国は、民衆を苦しめる工場で作られた武器によって、オロチの実権強化・独裁を許すという最悪の状況に陥っていたのである。
城跡で身を隠す一味は、錦えもんからかつて九里の大名であった「光月おでん」という男の悲運な半生を聞かされる。この光月おでんこそがワノ国編を盛り上げた人物であり、ワノ国編の重要人物である。
おでんは元将軍・光月スキヤキの息子だ。その性格は自分勝手で破天荒。金にも女にもだらしなく、とても国を背負えるような人間ではなかった。しかしその強い腕っぷしと人情深い性格から、一部の人間からは厚い信頼を獲得していたおでんには、ある目標があった。
それは「国を出ること」だ。おでんは鎖国を貫き外交を行わないワノ国を、ずっと窮屈だと考えていた。将軍の息子でありながら、おでんは冒険に出る機会を虎視淡々と伺っていたのだ。そこに現れたのが、若かりし頃の“世界最強の海賊”エドワード・ニューゲート、通称白ひげ。
おでんは家臣の反対を押し切り白ひげの船に乗り、航海を共にすることになった。そしておでんは航海の最中、ある男と運命的な出会いを果たす。その男こそ大海賊時代の口火を切った張本人、海賊王・ゴール・D・ロジャーだ。
出会いは敵同士だったおでんとロジャーだが、すぐに意気投合。ロジャーは古代文字解読のため、おでんを航海へ連れて行かせてくれと白ひげに懇願。しかしおでんを弟のように可愛がっていた白ひげは、最後までおでんと離れることを拒否。おでんは“世界最強の海賊“白ひげと、“海賊王”ゴール・D・ロジャーが取り合うほどの侍であったことがこのエピソードから伺える。
おでんが長い航海を終えワノ国に帰国すると、そこはすでにオロチとカイドウの支配下にあった。今やオロチに逆らう者など誰もいないなか、最後までオロチとカイドウに刃を向けるおでん。しかしおでんはオロチの謀略にハマり、無念の最期を迎えてしまう……。
そのおでんの仇を討つべく行動する錦えもん達に助太刀する形で立ち上がったのが、何を隠そう麦わらの一味だった。このおでんという男の登場により、読者はこれまでベールに包まれていたロジャーの冒険の一端を垣間見ることができた。ワノ国編の発端でありその豪快すぎる人生で読者を魅了したおでんは、間違いなくワノ国編最重要人物と言えるだろう。