『ONE PIECE』アラバスタ編はなぜ人気なのか? 痛快な”ジャイアントキリング”の魅力を考察
1997年『週刊少年ジャンプ』にて連載を開始した、海洋冒険ファンタジー作品『ONE PIECE』(集英社)。『ONE PIECE』は2020年12月現在までに97巻を刊行し、少年心をくすぐる物語で読者を魅了してきた。そんな『ONE PIECE』のストーリーで、特にファンに愛されているエピソードがある。
そのエピソードとは、まだ結成してまもない麦わらの一味が、国の命運を賭け、王下七武海・クロコダイル率いるバロックワークスと死闘をくり広げるアラバスタ編である。なぜアラバスタ編はファンの間で語り継がれる名エピソードになりえたのだろうか。本稿ではその理由を検証してみたい。
アラバスタ編は主人公・モンキー・D・ルフィ率いる“麦わらの一味”が、「偉大なる航路(グランドライン)」に突入する場面から始まる。麦わらの一味は最初に訪れた島「ウィスキーピーク」にて、ある少女と出会うが、その少女がネフェルタリ・ビビであった。ビビは当時、秘密犯罪会社「バロックワークス」のエージェントとして活動していたが、実はアラバスタの次期王女であり、アラバスタの乗っ取りを目論むバロックワークスの潜入調査を行っていたのだ。
しかし、クロコダイルの身辺を嗅ぎ回る不審な行動がきっかけで、正体がバレてしまい、組織から狙われる身に。そしてビビは麦わらの一味にアラバスタまで連れて行って欲しいと懇願する。
バロックワークスのトップに君臨するのは、王下七武海の1人サー・クロコダイルである。海賊ならば知らない者はいないほどの強者で、これまでルフィが相手にしてきた敵とは文字通り“格が違う”相手。ビビと行動を共にすることは、クロコダイルをも敵にすることを意味するが、ルフィはビビの頼みを快諾する。こうして一味はビビとアラバスタまでの航路を共にすることになった。
巨人が決闘を続ける太古の島「リトルガーデン」、かつての医療大国でありチョッパーの生まれ故郷「ドラム王国」2つの島を経て、一味はアラバスタに上陸。
時を同じくしてアラバスタでは、度重なる国王の横暴な政治に耐えきれなくなった国民が、国を守るために武器を取ることを決意し、今にも王国軍と反乱軍の内紛が勃発しようとしていた。
しかしこの騒動の裏には大きなカラクリがあった。反乱軍がこれまで見ていた横暴な王の姿は、クロコダイルの部下であり、マネマネの実の能力者・ボン・クレーが演じた虚像だったのである。クロコダイルの狙いは、意図的に内紛を起こし国を弱体化させることにあった。何も知らない反乱軍と国王軍は、互いに国を想い武器を取る。
唯一すべてを知るビビと麦わらの一味は、アラバスタを救うため孤軍奮闘。反乱軍に真実を伝えようとするビビだが、無情にも内紛は始まってしまう。そしてバロックワークスと戦闘を繰り広げる麦わらの一味の面々。バロックワークスの幹部は、過去の敵とは比べ物にならないほどの強者揃いであった。
一味でNo.2の実力者であるゾロは、”殺し屋”ダズ・ボーネスと激しい戦闘を繰り広げるが、自身を「全身刃物」に変えることができるスパスパの実の能力により傷一つ付けられず生死の境をさまよう。
ルフィに至っては、クロコダイルというロギア系能力者との初の本格戦闘に苦戦を強いられ、圧倒的な実力差のもと2度も敗北を喫することとなった。