キリンの首はなぜ長いデザインに? 『天地創造デザイン部』は“楽しく学べる”コメディ漫画の新境地へ

『天地創造デザイン部』の魅力

クスッと笑える下請けあるある

 また天地創造デザイン部の面白さの理由は、共感性の高さにもある。

 そもそも天地創造社のデザイナーたちはなぜ、地上に住まう生き物を造っているのか。それは天地を創造した神が生き物たちも造ろう、としたものの面倒になったため、そのデザインと製造を天地創造社に委託(という丸投げ)したからだ。

 「かわいくてかわいくない」

 「翼がないのに飛ぶ」

 「ふわふわなのにとがってる」

 「足がないのに走る動物を、とりあえず3案」

 「クライアントは神様」という(呪いにもなりえる)言葉が比喩ではなく現実のものとなっている世界で、デザイナーたちは神からの依頼という名の“無茶振り”に振り回されている。「なる早」でという依頼に対して迅速に対応したのに反応がなかなか返ってこない、「おまかせで」と言われて造ったのに何度も修正が入るといった“下請けあるある”に愚痴や弱音を吐く彼らを見て、デザイナーでなくとも「分かる!」と共感してしまう人もきっと少なくないだろう。

 ただそれらの言動がネガティブなものとして伝わってこないのも、本作の魅力だと思う。それはきっと、個性豊かなデザイナーたちが、自分の“得意”を活かして生き物造りに励んでいるからだろう。

 天地創造社デザイン部のデザイナーたちはそれぞれ、得意分野を持っている。例えばペガサスを提案したデザイン部の室長・土屋の代表作は馬だ。彼は馬のかっこよさに捉われすぎてもいるため、過去に何度も不採用を食らっているにも関わらず、馬をベースにしたデザインをことあるごとに提案する厄介な一面も持っている。

 こんなちょっとめんどくさくもユニークなメンバーが揃う天地創造社のデザイン部は、互いが互いの得意分野を認め、理解しあっている。だから自分だけでアイデアが生みだせない時は、他のデザイナーの過去作や知見に頼り、新たなデザインに活かすことも珍しくない。時に“造形美”対“機能美”といったデザインにかけるポリシーがぶつかり合うこともあるが、彼らはそれすらも新たな生命を生み出す糧とする。神の無茶振りに振り回されながらも、長所を自他共に認識し、それを最大限に活かせる環境で働く彼らは、ちょっと羨ましさすら覚えるほどにイキイキとしているのだ。

 『天地創造デザイン部』は、子どもから大人まで幅広い読者に新たな発見を届けてくれるだけでなく、自分の長所を生かして働くことの楽しさも伝えてくれる。読めばきっと、一家に1シリーズ置きたくなる作品ではないだろうか。2021年1月7日(木)からは、テレビアニメの放送もスタートする。

■クリス
福岡県在住のフリーライター。企業の採用やPRコンテンツ記事を中心に執筆。ブログでは、趣味のアニメや漫画の感想文を書いている。ブログTwitter

■書籍情報
『天地創造デザイン部(1) 』
原作:蛇蔵&鈴木ツタ
作画:たら子
価格:本体650円+税
出版社:講談社
公式サイト

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