精神科医・樺沢紫苑が教える”ストレスフリーな生き方” 「職場の人間関係はもっとドライでいい」

精神科医が説く”ストレスフリーな生き方”

まずは自分から行動してみることの重要性

――コミュニティや人間関係の大切さについても書かれています。自己開示がうまく出来ない、友人に誘われたら行くけれど、自分からも声を掛けることは苦手という人もいるようです。

樺沢:本人がどうしたいかですよね。「人間関係は努力なしでは成長しない」というのが重要です。なんとなく会社に行って仕事をしているだけでは、人間関係が育つわけもなく、学校でも自分から話しかけない、誰とも目を合わさずにいたら仲良くなるはずないんですね。

 人間関係を深めたいなら自分から行動するしかないし、黙って待っていても誰も相手にしてくれません。いつまでも孤独なままでしょう。「ちょっと暇だからご飯行かない?」ととりあえず声を掛けてみる。その日相手が忙しくても、「わかった、また今度ね!」とそれでいいじゃないですか。

 「自己開示が苦手」という人に、自分から何か行動したみたか聞いてみると、何もやっていない人がとても多い。もちろん、一人でいるのが好きという人は無理に頑張らなくてもいいと思いますよ。

 インプット、アウトプット、フィードバックの流れがあるように、人間は何か行動を起こして、結果を修正していくことでしか変化や成長はできません。何もせずに、頭の中だけで考え、1回アクションを起こして成功というのはあり得ないんですよ。それなら何回かアクションを起こして誘ってもらえるような工夫をしてみる。仮に好ましくない結果になったとしても、それは失敗でなくトライアンドエラー。成長と考えるといいですね。失敗を恐れて何もしないなら、私はこのままでいいということになってしまいます。

 私の感覚ではだいたい80%くらいの人はコミュニケーションが苦手だし、寂しさ、生きづらさを感じています。ですからコミュニケーションが苦手な人同士は、同じ感覚を共有できるはずだし、共感しやすい。自分から勇気を出して話をしていくと、皆さんが思っている以上に友達や彼女は出来やすいでしょうね。

――本書には言語、非言語のコミュニケーションのお話もありますが、笑顔でいたり、誘いやすい雰囲気を作ることも大切なんですよね。

樺沢:本人は気づいていないかもしれませんが、自分はモテるはずがない、別に友達はいらない、結婚なんかしなくていいと思っていると、脳からサインが出て非言語(ノンバーバル)として表情や態度に出ているし、相手にも伝わります。しかし、私は友達を作りたい、彼氏彼女を作りたいと思っていればウェルカムな態度になっていくと思いますよ。心を開く、オープンにすることがとても大切です。

すべての職場は人間関係が良くない

――本書の中で、「すべての職場で人間関係は良くない」という言葉も印象的でした。

樺沢:人間関係よりもまず仕事ができるかどうかですよね。仕事ができない人は上司に怒られたり、同僚のフォローが必要になったりと、次第に周りから風当たりが強くなっていきます。これを言うとたくさんの批判コメントがつきますが、私は人間関係がうまくいっていないのは仕事ができないからだとも思っています。まずは早く仕事を覚えて最低限人並みの水準までできるようにしておかないと、どこに行っても厳しい扱いを受けるでしょう。

 1:2:7の法則というのがあって、人が10人いたら1人はあなたのことを嫌いな人、2人はあなたの味方、7人はどちらでもないんですよ。本来は自分のことを支えてくれる人に時間をさけばいいのですが、人はなぜか悪い方にばかり注目して8,9割くらいエネルギーを費やしてしまう。

 そもそも学校で1クラス40人いて、全員が仲良しということはあり得ません。会社も仲良し組織ではなく、仕事がつつがなく進めば問題もない。人間関係にエネルギーを注いでも異動や転職もあるし、もっとドライな気持ちでいいと思います。人間関係を気にするよりも、自分のスキルや能力を伸ばすような自己投資をしてあげるといいと思います。自分を伸ばすことができると他の人を助けてあげることができるんですよ。あなたが職場の仲間を助けているのなら、職場の人間関係は良くなります。

――ネガティブな気持ちになってしまった時に心がけた方がいいことはありますか?

樺沢:アウトプットの法則で、脳は2週間のうちに3回以上同じ話をすると忘れません。上司に叱られた、彼氏と別れたと飲み会で話し、電話でもまた別の友人に話し、SNSで発信する。1日で3回もアウトプットすれば脳の仕組みから当然忘れなくなるし、自分で心の傷を開いているようなものです。

 ネガティブな出来事をアウトプットしないようにするだけで、トラウマや嫌な気持ちにさいなまれることも無くなります。過去の出来事やトラウマは自分が作っているんです。嫌なことは1回まで、嫌なことをアウトプットするのではなく、寝る直前にポジティブなことを思い出す、ポジティブ日記を3行書くことが有効です。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる