『死役所』の人気が衰えない理由 「その後」を想像させる巧みな手法に迫る
物語の上で死後が描かれても描かれなくても、そこに死者本人は存在しないことだ。死役所からは生きていた頃の世界は見えず、自分が死んだ後何が起こっているのか知ることは永遠に叶わない。それは時に幸せなことであり、時に不幸なことだ。どのような思いで死役所に来ても、最終的には「どうすることもできない」と諦め全員が成仏するほかないのだ。彼らは既に死んでいて決して生き返ることはできない。
死役所の各エピソードの結末は残酷と言えるほどシンプルだ。無駄がない。読者はその後を予想しながら、いつまで経っても読み終えた後の余韻をかみしめることができる。
これこそが『死役所』が長期間高い人気を保ち続けている理由ではないかと思う。
死役所に勤務している死刑囚たちの生前のエピソードも、物語が進むにつれて少しずつ明かされていく。彼らは死役所勤務の任期をまっとうすると成仏できる。だがその先が地獄なのか天国なのか、はっきりとはわからない。これは死刑囚以外の死者も同じだ。現実の世界で生きている人たちが、死後の世界があるのかないのか死ぬまでわからないのと似ている。
11月9日、最新刊の17巻が発売された。生と死の物語はこれからも続いていく。
■若林理央
フリーライター。
東京都在住、大阪府出身。取材記事や書評・漫画評を中心に執筆している。趣味は読書とミュージカルを見ること。
■書籍情報
『死役所(17)』
あずみきし 著
価格:本体490円+税
出版社:新潮社
公式サイト