破格のスケールの少女漫画『BASARA』の革新性 壮大なストーリーが共感を呼んだワケ

『BASARA』はなぜ革新的だったのか?
田村由美『7SEEDS(1)』

 ありていに泣きわめくでも逆上するでもなく、激しい拒絶をどう描くか。作者が女性だったからこそ出てきた切実な表現だったと思うし、だからこそ多くの女性読者にも感覚を伴って受け止められたのではないだろうか。死と隣り合わせの世界で、大きすぎる運命に立ち向かう少女。それだけでは現実離れしすぎて共感を呼びにくいところを、リアルな身体的感覚を持って身近に感じられるような仕掛けは『BASARA』において度々機能した。そしてそれは少女漫画というフィールドの中で本作が受け入れられた要因のひとつだったように思う。

 幾人かの仲間を失いながらも、最後には革命を成し遂げ新たな時代の始まりを導いた更紗。外伝では後日談も描かれ、いわゆる“俺たた”エンドで物語は幕を閉じるが、人が生まれ、死に、未来を形作っていくというテーマは、そのまま次作の『7SEEDS』に受け継がれていると考えると感慨深いものがある。少女漫画という枠にとらわれず、人物やドラマを描くことに徹底的に向き合い、極上のエンタメとして成立させる。『BASARA』が今なお忘れ難い存在であるのは、そんな革新的な作品だったからではないだろうか。

■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。

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