『ぐらんぶる』の“バカ大学生ライフ”はもう戻ってこない 酒と裸とダイビングの開放感

『ぐらんぶる』突き抜けたバカバカしさ

 次々来るボケとツッコミの連打に容赦なく笑わせられる一方で、いま読むと「こんなん今ムリだよなあ」とちょっと考えさせられてしまう(本来そんなふうに読むようなマンガではないのだが……)。

 ダイビングサークルに成り行きで入れられたものの泳げないことで悩んでいる伊織に対して、「何も考えないで水の中を楽しむこと」が重要だとダイビング経験者の奈々華は説く。

 時節柄ごちゃごちゃ書いたが、本来は何も考えないで楽しむことがこの本の読者にも求められる。ゲラゲラ笑って夏休みっぽい開放感をリラックスして味わうのにぴったりな作品なのだ。フィクションとして/フィクションの中にしかないものが『ぐらんぶる』にはたしかにある。

 Don't think,feel! Grand-Blue.

■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。

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