韓国文学の次は韓国ウェブ小説? 『俺だけレベルアップな件』『アデライド』日本上陸の背景
日本のラノベ/ウェブ小説は韓国で売れなくなってきている
一方、逆はどうかと言うと、日本のラノベやウェブ小説は一部を除いて韓国では売れなくなってきており、従来以上にコア層が読むものになってきている。中高生をはじめとする若い世代は「待てば無料」のカカオページ、あるいは「小説家になろう」同様の完全無料の小説サイトjoara、munpiaなどで読める国産ウェブ小説に流れているからだ。
日本のラノベの多くは翻訳されていても当然有料、それも「待てば無料」式の話売りではなく巻売り(1冊単位での販売)でしか読めないことが多い。しかも、以前より売れなくなったことで定価が上がり、割高な印象を与えており、ますます新規読者を遠ざけている。と言っても別にここで日韓対立を煽りたいわけではないし、優劣を言いたいわけでもない。ただ事実を紹介したまでだ。
一読者としては韓国ウェブ小説を、ウェブトゥーンや映像を経由せずに原作自体をもっといろいろ読みたいし、多くの人に読んでみてもらいたい。たとえ短期的には成果が出ずともD&C MEDIAには成功するまで投資を継続してほしいし、他社も含めて後続が生まれやすい環境をつくってもらいたいと願っている。
■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。