日本の思想はどんな問題と向き合ってきたか? 『日本思想史』著者が語る、王権と神仏で捉え直す通史
さらに日本の思想を読み解くための書籍
――本書を読み終えたあと、さらに読むべき本などありましたら、いくつか教えていただけますか?
末木:ひとつは、自分の本の宣伝になるので恐縮ですが、以前私が書いた『日本の思想をよむ』(角川書店)という本が、今度文庫化されることになりまして。こちらは、過去のいろんなテキストの特徴を、引用などを交えてあまり硬くならない形で書いたエッセイです。ひとつ参考になると思います。
そして原典に当たると言っても、特に文語で描かれた古典は、なかなか読むのが難しいところがありますが、中央公論社の「中公クラシックス」というシリーズなどは、すべて現代語訳になっているので、非常に読みやすいと思います。
あとやはり、日本の思想というものを考える場合に大きいヒントとなるのは、丸山眞男さんの『日本の思想』(岩波新書)でしょう。この本は、日本人のものの考え方を、わりと冷静に、その良いところも悪いところも含めて論じているので、いまだに読む価値は十分にあると思います。
――スタンダードな一冊であると。
末木:そうですね。あと、最近のもので言ったら、本書の参考文献にも挙げましたが、苅部直さんの『日本思想への道案内』(NTT出版)や『日本思想史の名著30』(ちくま新書)なども、非常に参考になると思います。苅部さんは、むしろ政治思想史から入っている方で、宗教のほうから出発した私とは言わば逆方向で、別の方向から日本の思想に光を当てているところがあるので、私の本と読み比べていただくと、その両面から日本の思想を捉えられるようなところがあるかもしれないです。あと、海外の日本研究などを踏まえながら、新しい形で今の日本を見つめ直したものとしては、小林康夫さんと中島隆博さんが編まれた『日本を解き放つ』(東京大学出版会)という本があるので、そちらを手に取ってみるのもいいかもしれません。
■書籍情報
『日本思想史』
末木文美士 著
価格: 本体880円+税
出版社:岩波書店
公式サイト