雇用、移民、SF、瞑想までーー『21 Lessons』は現代の諸問題への向き合い方を教えてくれる

『21 Lessons』が描き出す現代の様相

おわりに

 本書ではこのあと、第一部でテクノロジーに関連した社会の難題(労働や自由)を取り扱った後、第二部では考えうる多様な対応を考察していく(AIを用いて人間の自由と平等を保護するグローバルなコミュニティを創り出せるか、など)。

 第三部ではテロの脅威やグローバルな戦争の危険に対して何ができるか、第四部は抽象度を増し、悪行と正義をどこまで区別できるか、SFを例にとって、現実を虚構から隔てる明確な境界は依然として存在するのか、など相互に関連し合った多様なテーマを追求していくことになる。21という数字は単に21世紀から引っ張ってきただけで、数合わせの章があるだろうなと思っていたが、たとえば労働の章では今後アルゴリズムに権限を移行する流れは避けられないとして、その時に問題になるのは「自由」である──と自由の章につながっていくので、(意外と)きっちり相互に関係しているのも好印象。

■冬木糸一
書評のブログ「基本読書」運営中。「SFマガジン」で海外SF書評、「本の雑誌」でノンフィクション書評の連載中。ノンフィクションレビューサイト「HONZ」執筆陣。

■書籍情報
『21 Lessons(トゥエンティワン・レッスンズ) 21 世紀の人類のための21 の思考』
ユヴァル・ノア・ハラリ 著/柴田裕之 訳
判型:四六判
価格:本体2,400円+税
公式サイト:http://www.kawade.co.jp/21lessons/

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