コレサワ、日常を生きるすべての人へ贈る極上の歌 ミニアルバム『日々愛々』で描いた7つの物語

コレサワ、日常の物語『日々愛々』を語る

 君がいなくなったばかりの部屋で、君が残した、嫌いだったたばこに火をつける。うまく言い得ない後悔や悲しみの瞬間を切り取った「たばこ」や、ミニアルバム『失恋スクラップ』(2020年)など、センチメンタルでリアルな恋愛ソングを描き、一方でユーモアたっぷりのキャッチーでポジティブな曲でもリスナーを増やしてきた、シンガーソングライター コレサワが、ミニアルバム『日々愛々』を配信リリースした。

 2022年には『サマラブ』、2023年には『かわいくしながら待ってるね』と続いてきたミニアルバムのなかでも、今作はタイトルの『日々愛々』にあるように、何気ない日々のそのなかにある普遍的な愛やワクワクする喜び、うまくいくばかりではない憂いや、乱暴なくらいのわがままさ、あるいは自分に語りかける静かで尊い時間が詰まっている。さまざまな温度の曲があるけれど、ちゃんとそこに、たしかで、美しい日常がある。そんなことを思わせてくれる作品に仕上がっている。5月からはバンドセットと弾き語りによる全国ツアーが決定して、今から楽しみだと語るコレサワに、今作への思いを聞いた。(吉羽さおり)

愚痴や別れを歌った曲でも、なるべくそれを明るく伝えたい

――この数年は配信でミニアルバムをリリースしてきましたが、作品を振り返った時に、自分の心境の変化などわかったりすることはあるんですか。

コレサワ:ふたつ前の作品が『サマラブ』で夏に寄った作品だったんですけど、前作の『かわいくしながら待ってるね』と今作は気持ち的には地続きというか、同じ枠のなかで続いている感じがあります。

――今作『日々愛々』を一聴した時にまず感じるのが、前作からの流れもそうですが、すごく肯定感が高いというか。より主人公の強さが出た作品になっているなと感じました。意識されているところはあるんですか?

コレサワ:意識しているのは、悲しすぎないように。聴いていて前向きになる音楽を作りたいということがテーマとしてあるんです。今作でも、愚痴や別れを歌った曲でも、なるべくそれを明るく伝えたいし、なるべくハッピーに、開き直った感じで生きていきたいというのが、自分の生きるテーマでもあって。その芯はブレずにいるんじゃないかなって思います。

――「私は私だ」っていう、よりそういう開放感がある気がします。

コレサワ:そうですね。今回は、「みんなはどう思うだろう?」ということをあまり考えすぎないようにしたというか。どう思ってもらってもエンタメとして受け取ってもらえたらいいな、って。「ライブ終わりに」とかは特にそうで。あとは、久しぶりにバンドセットでのツアーもできるので、バンドでツアーを回ることを意識して、どんな曲があったらみんなが楽しめるかを考えながら作りました。掛け声が入っていたり、ツアーでみんなで楽しめる一枚にしたいなっていう。

――まずはリード曲となる「君がおじいちゃんあたしがおばあちゃん」の話から伺っていきたいのですが。コレサワさんの曲というと、瞬間的な思いを切り取った恋愛の曲というのは多いと思いますが、こういう長い時間を描いた曲、長い目で見た大きな愛情を描いた曲というのが新鮮でした。

コレサワ:タイトルだけを見るとおじいちゃんおばあちゃんっていう、自分からしたら遠い世界というか――思ったよりもすぐにやってくるとは思うんですけど(笑)――好きな人と自分がしわくちゃになっても一緒にいたいと思っている瞬間を歌った曲ではあるので。これも一瞬の気持ち。今ふたりはそう思っているということを歌った曲かなと思います。

コレサワ「君がおじいちゃんあたしがおばあちゃん」【MUSIC VIDEO】

――TVアニメ『じいさんばあさん若返る』(TOKYO MXほか)のオープニング曲でもあるんですよね。曲自体はどのように書いていったんですか。

コレサワ:原作の漫画を読んだ時に、グッとくるセリフがあったので、それをメモしたりして。そこから、「もし自分が自分の好きな人と歳を重ねていくとしたら、どんなふうに生きていきたいかな?」と考えながら作りました。

――コレサワさんがいいセリフだなって思ったのは?

コレサワ:〈あなたが少し分けてくれた人生〉というところですね。人生はいろんな人から少しずつ分けてもらっているというような意味のセリフがあって、「たしかにそうだな」って。自分の人生は親からもらったものでもあるし、友だちの趣味とかいろいろな影響で自分の人生が作り上げられているもので、周りの人たちからちょっとずつもらっているんだなと思ったので、これは絶対に歌詞に入れたいなと思ったんです。最初にパッと思いついたお気に入りの歌詞は、〈出会った頃よりも増えた体重に〉なんですけどね(笑)。姿が変わっても、歳を取って歩けなくなったりしても、ずっとそばにいてくれる人がいたらいいな、という気持ちで作っていました。この曲を聴いて、あたたかい気持ちになってくれたら嬉しいなとも思いましたし。アニメで流れるし、さまざまな方が聴いてくれるきっかけにもなるので、この曲をリード曲にしました。

――アニメやタイアップで書き下ろすことって、コレサワさん自身はやりやすさはありますか。

コレサワ:私は好きですね。ちょっと試されてる気もするじゃないですか。アニメや楽曲提供もそうなんですけど、自分以外の人の恋愛や話を聞いた時も、自分のなかにはなかったものと自分が思いをドッキングさせて新しいものができたりするから。そういうのが面白いなって思います。今回は久しぶりの書き下ろしだったので、すごく楽しかったです。

――これは個人的に聞いてみたかったことなんですが、普段たくさんラブソングを書いていて、そのなかではいろんなリサーチもすると思うんです。この数年間のコロナ禍を経て、人が他者に求めること、自分に求めること、人との関係性や恋愛関係において、コレサワさんから見て「こんなふう変わってきているな」と感じることってあるんですか。

コレサワ:どうなんでしょうね……私自身としては、会いたい人には会ったほうがいいんだなと思いました。いつ会えなくなるかわからないから、デートはできる時にしたほうがいい、みたいな(笑)。私はコロナ禍以前から「明日死ぬかもしれない」と思って生きているタイプだから、常にそういうことを思っているところはあるんです。だから、あまりそこは変わらないかなあ。

――コロナ禍があって左右されるようなことはなかったというか。

コレサワ:人との関わり方はあまり変わらなかったですけど、逆にファンとの関わり方はすごく変わりました。一年くらい思うようにライブができなくなったコロナ禍には、私はライブをすることで自信をもらっていたんだなと気づいて。ライブがないと、誰も私の曲を聴いていないんじゃないかって思うけど、ライブでは「これだけの人が聴いてくれているんだ!」って認識できる。それで元気や勇気をもらっていたことに気づいた。だから、なるべくファンの喜ぶことややってほしいことをしようっていうきっかけになったのが、コロナ禍だったんです。

――その気づきを経て、たとえばどういうことをやっていますか?

コレサワ:なるべくリプライを返そうとか、“いいね”をすると喜んでくれるんだなとか(笑)。本当に些細なことなんですけどね。「こんなことをやってほしい」と教えてくれた時に、昔だったら「いや、私は自分のやりたいことをやるスタンスだから!」と思っていたけど、「やってほしいならちょっとやってみようかな?」って少し柔らかくなった気がします。ライブで手を振ったら喜んでくれたり。私はよくエゴサもするんですけど、「今日ライブでファンサしてくれた!」って書いてあったりして。それだけでその人にとっては幸せじゃないですか。そういうのは惜しみなくやったほうがいいんだなって思って。それは、K-POPを好きになったのも影響があるんですけどね。

――自分がいちファンとなって、よりファン心がわかったと。

コレサワ:「アイドルってこれだけファンサするんだ!」って。ライブ映像を観てもそうですけど、アイドルの方たちってファンのことをいちばん大事にしているじゃないですか。それを見習いたいと思ったのも、コロナ禍で好きになったアーティストがいたからなので。関わり方が、よりよくなったと思います。

――K-POPを好きになったのはこの数年の話ですか。

コレサワ:コロナ禍で自分のライブがなくなったりして、時間があったのでYouTubeを観ていたら流れてきたんですよね。私はBLACKPINKが好きなんですけど、それをK-POP好きの友だちに言ったら、誕生日プレゼントにライブDVDをくれたんです。それを観たら虜になっちゃって、ファンクラブにも入って(笑)。それでファンに対する接し方を学んだというか、いい連鎖があったかなと思います。

――ファンに対してだけでなく、音楽的なところでの影響とか、広がりはあるんですか。

コレサワ:ちょっと韻を踏んでみたりとか、ビートがある曲が好きになったりとか。自分でも打ち込みの曲を作ってみたり、音楽的にもいい影響があったと思いますね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる