コレサワ「元彼女のみなさまへ」が導く恋愛の“いじらしさ” ラブソングでヒットを生む理由とその才能
9月4日にデジタルリリースされた、シンガーソングライター・コレサワの最新曲「元彼女のみなさまへ」が、今話題を集めている。
Billboard JAPAN「TikTok Weekly Top 20」では、9月18日付の同チャート2位に初登場。次週から2週連続で首位を獲得し、その後も3位以内をキープして、圧倒的な強さを見せている。TikTokでの「元彼女のみなさまへ」を使用した動画の投稿本数は120万を突破しているのだ。
10代、20代の女性を中心にサビに合わせて顔の周りで手振りをする「#踊ってみた」動画の投稿が増加し、そこから火がついてバズが起こったのだと思うが、Vlog的な日常動画などにも楽曲が使用され始め、今後さまざまな動画のBGMとして派生していくこと、さらにInstagramのリールでも急上昇曲に登場してきていることなどを考えると、今まで以上のヒット、そしてロングヒットになる兆しが見えてきた。
2017年に1stアルバム『コレカラー』でメジャーデビューしたコレサワは、ライブを除いて一切素顔を明かさない形で活動をしている。ジャケット写真やアーティスト写真からもわかるように、自身のビジュアルはクマのキャラクター・れ子ちゃんが担当しているのだ。
デビュー当時から、10代、20代の女性に圧倒的に支持されるコレサワのラブソング。その魅力は果たしてどこにあるのだろうか?
コレサワのラブソングが、同性に支持される大きな理由のひとつが歌詞だ。恋愛という状況を“好き”という感情を起点にしながら、多彩な角度から見て綴られた歌詞は、聴き手の主観やさまざまな恋愛感情、もっと言ってしまえば恋愛そのものを肯定する客観性を持っているのだ。「元彼女のみなさまへ」は、タイトル通り彼氏の“元カノ”に向けられた言葉が並ぶ。一部分だけ切り取ったら、元カノへのマウントや嫌味に捉えられそうな表現もあるが、最後には「こんな素敵な彼にしてくれてありがとう」という感謝が綴られるのが面白い。この感謝がストンと腑に落ちるのは、この曲の主人公である今カノが〈昔の話はあんま聞きたくないけど〉と言いながらも、ひとりの女性として彼氏の過去としっかりと向き合っているのが伝わってくるからだ。恋愛を謳歌している今カノの幸福感を、コレサワならではの視点と言葉で見事に表現している。
現在、Spotifyで700万回再生を突破した「元彼女のみなさまへ」は、カントリーのテイストを取り入れた軽快でキュートなナンバー。コレサワ自身もリズム感を生み出すように、フレーズの最後の音を早めに切り上げるように歌っている。イントロの最後や途中に出てくる「パッパッパー」というコーラスで、モータウンの影響をチラリと見せたり、途中でサウンド全体に加工をかけたりと、コレサワがいかにさまざまな音楽を聴いて、自身のポップスとして昇華させているのかもわかる。タイトでキャッチーなフレーズの繰り返しが肝になる曲だが、途中でテンポダウンし、少し翳のあるメロディを消え入るような声で聴かせるなど、サウンドにストーリー性もあり、より歌詞に感情移入しやすくなっているのだと思う。