コレサワ、誰かの“人生”に寄り添う求心力 解釈の余白を与えるワンマンショー『コレシアター05』の真髄

コレサワ『コレシアター05』レポ

 コレサワが、11月から12月にかけて『コレサワ ワンマンショー 2024 コレシアター05』を開催した。『コレシアター』は、コレサワのアートワークを監修するデザイナーのウチボリシンペによるイラストレーションや映像をふんだんに用いた、映画のような物語性あふれるショーだ。「映画の主題歌をやりたいのに誰も使ってくれない、だったら自分で映画っぽいライブをやっちゃえ!」という想いから2014年に始まり、通常のワンマンライブと一味も二味も異なるエンターテインメントショーを展開している。本ツアーはそんな『コレシアター』シリーズの第5弾として、2018年以降約6年ぶりに開催された。本稿では、12月19日に昭和女子大学人見記念講堂で行われた東京追加公演の模様をお届けする。

 上演時刻。ブザーが鳴り響き、コレサワのキャラクター・れ子ちゃんが上映中の注意事項をアナウンスする。そのキュートさに、客席から早くも「かわいい!」という声が漏れ聞こえてきた。舞台の幕開けを飾ったのは、フィルム映画の映写機の音に乗せて流れ始めた「シュシュ」だ。「みんなは、れ子ちゃんの秘密を知ってる?」――そんな言葉を合図に、バックスクリーンに映るれ子ちゃんとお揃いのうさぎのぬいぐるみを背負ったコレサワが、軽快なステップでステージに現れた。映画のなかで道を歩くれ子ちゃん同様、その場で足踏みしながら丁寧に音を紡いでいく。

『コレサワ ワンマンショー 2024 コレシアター05』

 いつの間にか心にぽっかり大きな穴が開いてしまい、旅に出たれ子ちゃんが最初に見つけたのは“LOVE”。コレサワの十八番とも言える“愛”を描いた作品たちが揃い踏みのラブソングユニットだ。「あたしが死んでも」、「あたしを彼女にしたいなら」、「元彼女のみなさまへ」、「浮気したらあかんで」、そして「最終電車」まで、歴代のラブソングがまるで人生を描くように歌い繋がれていく。SNSでバズを生んだ今年リリースの新曲「元彼女のみなさまへ」では、バックスクリーンに映るカラオケ風の歌詞を見ながら一緒に口ずさめる演出が嬉しい計らいだ。「浮気したらあかんで」では、「今日彼氏連れてきたんやけど、紹介してもいい?」と登場した彼氏の“犬くん”と仲良くダンスを披露。〈浮気したらあかんで!〉と言い聞かせるかわいらしい掛け合いで世界観をよりポップに見せたかと思いきや、「最終電車」ではこれがエンタメであることも忘れるほどリアルな想いのこもった歌に引き込まれる。

『コレサワ ワンマンショー 2024 コレシアター05』

 しかし、“LOVE”を見つけてもれ子ちゃんの心の穴が埋まることはなく、むしろ嫌いな自分を見つけて塞ぎ込んでしまう。続く“BROKEN HEART”ユニットでは、誰もが突き当たる人生の壁にそっと寄り添ってくれる歌声が観客を包み込んだ。静かに輝く光を星空のように会場に散りばめ、語りかけるように奏でられたのは「プラネタリウムに憧れた」。すれ違い始める恋模様を歌った刹那、それとは対極にエレキギターがギュインギュインと掻き鳴らされる「いたいいたい」では、恋愛と背中合わせの“心の痛み”が叫ばれる。やがて、カラカラだった乙女心にふいにしゅわっと染み込んだときめきに〈ちょっとだけでいいから/あなたと間違えたい〉と一晩だけ揺れる心をまっさらに歌った「彼氏はいません今夜だけ」や、〈大好きだったのに ばか〉と勇敢な一歩で関係に終止符を打つ「さよなら恋人」。シアターのなかの物語のはずなのに、妙にリアルで、なんだか自らを追憶しているようだ。

『コレサワ ワンマンショー 2024 コレシアター05』

 失恋の穴が塞がらないれ子ちゃん。“LONELINESS”ユニットでは、ひとりぼっちになったれ子ちゃんを、同じくステージにひとり残されたコレサワが、アコースティックギター一本の音色で「笑えよ乙女」を歌い、やさしく包み込む。

 れ子ちゃんの心のど真ん中にぽっかり空いた大きな穴を「気持ち悪い」という周囲の声に、れ子ちゃんは思わず耳を塞ぐ。しかし、ずっとれ子ちゃんの背中で見守っていたうさぎのぬいぐるみは、「みんなが気持ち悪いって言うの」というれ子ちゃんの言葉に、「ぼくはみんなじゃないよ」「ぼくがまもってあげる」と、そんな憂鬱も愛してくれる。いつしかボロボロになってしまったうさぎを抱えてぽろぽろと大粒の涙をこぼすれ子ちゃんの口から、一言溢れた。「あたしがずっとそばにいるよ」――。

『コレサワ ワンマンショー 2024 コレシアター05』

 うさぎは、「Moon」でコレサワの歌声に見送られるようにして月へと跳んでいった。そんな空に、次はベルの音が響き始める。「2024年はどんな年だった?」。そう尋ねるコレサワは、「今年は(バンドメンバー)みんなでテレビ出れたね。あと、『レコ大』(『第66回輝く!日本レコード大賞』)の作詩賞も!」「でも、最近腸内フローラの検査をしたらね……」と、すべてをオープンに教えてくれる。

 そんななか、サンタさんから猫のぬいぐるみのプレゼントが届いた。窓の外に見えたサンタさんの影は、月へと旅立ったあのうさぎのぬいぐるみが変身した姿。そう、コレサワが長い時をともに過ごしたペットのうさぎ・むぅちゃんが、きっと今ともに暮らしている愛猫のメロウを彼女の元に連れてきてくれたのだ。メロウとの新たな暮らしで生まれたのであろう楽曲「にゃんにゃんにゃん」を歌い終えると、「悲しい別れも新たな出会いに繋がっているのかも」と前向きになったれ子ちゃんの気持ちと重ねるように、激しいロックサウンドが誰しもを肯定してくれる「SPARK!!」で、最後の“DREAM”ユニットがはじまった。〈叶わなかった夢数えないで〉〈愛されていないフリなどしないで〉〈素敵な日々ばっかりじゃなくていいよ〉〈全部歌ってあげる〉。無責任な言葉を並べるでもなく、ただひたすら、ありのままでいいのだと肯定してくれる彼女の歌に生かされている人は、どれだけいることだろう。

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