『劇場版プロセカ』を彩る新曲群の背景と本質 じん、TeddyLoid、DECO*27らボカロPによる随所に光る技

 2025年1月17日の封切りから、今なお大勢のファンが劇場へと足を運ぶ『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』』(以下、『劇場版プロセカ』)。本作は現在のボカロシーンを語る上で欠かせないコンテンツでもある、アプリゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の世界観を下地に、オリジナルストーリーでの物語を展開。制作決定の一報から今日に至るまで様々な施策や取り組みをもって、多くのファンを長期間楽しませ続ける作品ともなっている。

『劇場版プロジェクトセカイ壊れたセカイと歌えないミク』本編残し映像

 様々な面で特筆すべき点のある今作だが、やはり注目を集めたのは豪華ボカロP陣による多数の書き下ろし曲だ。また、その中でも作中で大きな役割を担う一部の楽曲に見られる、“異例の制作手法”も多くのシーンリスナーを驚かせたことだろう。

 そこで今回は『劇場版プロセカ』という作品を彩った提供曲たちが生まれた経緯やこれらの曲が作中でどのような役割を担う音楽となったのかを改めて振り返ることで、本作に華を添えた楽曲群の魅力や聴き所についても再確認してみたい。

 まずは作品の顔となる主題歌から見てみよう。今作の物語の幕開けを彩るオープニング曲は40mP×sasakure.‌UKによる「はじまりの未来」。そして大団円の幕引きを担うエンディング曲はじん×TeddyLoidによる「Worlders」だ。

 今作の劇場版パンフレットは2種類発行されており、音楽制作関係者のコメントやインタビューなどが総括されたミュージックエディション版では、各ボカロPによる対談形式で各曲の制作経緯なども明かされている。

 「はじまりの未来」は、学生たちの“日常感”や物語の始まるワクワク感、そして夏らしさを着想元に制作された楽曲。シーンを黎明期から支えるボカロPを映画の制作サイドが指名し、それに応える形で、40mPとsasakure.‌UK両者の密な“交換日記風”のやりとりを経て生まれた楽曲だという。

劇場版オープニングテーマ「始まりの未来」

 エンディング主題歌の「Worlders」は、コンテンツ内キャラクター総勢26名の全員歌唱という形式を取った楽曲だ。自身の持つ気質とは対極的な作風にやや苦戦した部分もあったと制作を主導したじんは語っていたが、そんな彼が本楽曲を作るにあたってどうしても力を借りたいと、TeddyLoidに白羽の矢を立てたのがタッグのきっかけだったそう。

劇場版エンディングテーマ「Worlders」

 これらに加え作中で大きな鍵を握るのが、バーチャルシンガーや各ユニットへとそれぞれ書き下ろされた新曲6曲である。これらの曲については、すべての作詞作曲を担ったのはなんとボカロP・DECO*27たった1人。だが、編曲でいよわやGiga、すりぃら計6名のボカロPが1人ずつ各曲を担当し、結果ユニットの個性がそれぞれ明確に落とし込まれた作品群が誕生した、という経緯になる。

 作詞と作曲を別々のクリエイターが担当する形はこれまでにもある光景だったが、“作詞作曲”と“編曲”という役割分担を1人対複数人で、かつこれほどの規模感で一斉に行ったケースは非常に稀だろう。なぜこのような特殊な形式での制作に挑んだのか、疑問に思ったリスナーもきっと多かったに違いない。だが劇中の物語を追うことで、その背景となる制作の意図に気づいた人々も、おそらく大勢いたのではないだろうか。

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