サザンオールスターズが歌う“先人への愛と感謝” 「神様からの贈り物」に込められたエンタメ史へのリスペクト

 2025年、NHKが放送をはじめて100年の節目の年を迎えている。現在放送中の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』は「放送100年プロジェクト」の一環の一つであり、昨年末の『第75回NHK紅白歌合戦』で郷ひろみがNHKの蓄積してきたアーカイブ映像を駆使したスペシャルなステージを披露していたのも関連企画に数えられるだろう。プロジェクトのキャッチコピーは「ひとりを思う、みんなのメディアへ。」。関連番組のテーマソングには、サザンオールスターズが新曲「神様からの贈り物」を提供している。

 「神様からの贈り物」は、3月19日にリリースのニューアルバム『THANK YOU SO MUCH』の収録楽曲。ラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(TOKYO FM系列)では、プロジェクトのテーマソングだということが発表される前からオンエアがされており、耳の早いファンから極上のポップソングでありながら、桑田佳祐の新たなソングライティングを感じさせる楽曲であると大好評を得ていた。

 2月14日に「放送100年プロジェクト」関連番組のテーマソングであることが発表され、同月16日には「神様からの贈り物」とNHKの過去番組のアーカイブ映像を組み合わせたコラボレーションムービーがNHK総合で初オンエアとなった。現在は特設サイトでもその映像が一部見られるものの、オンエアでは倍のフル尺でコラボ映像を堪能することができた。

【放送100年関連番組テーマソング】サザンオールスターズ「神様からの贈り物」スペシャルムービー ショートバージョン│NHK

 「神様からの贈り物」は、桑田が日本のエンタテインメントへのリスペクトを込め、そして同時に放送および芸能の歴史が凝縮された楽曲。まるでMVかと見間違うほどにNHKで放送されたスペシャルムービーの完成度は高く、映像との親和性は抜群だ。まさに“夢の共演”といえる。4分という長さの中で使われている映像を挙げ出すとキリがないため、音楽の側面から迫っていくと、まず目に止まるのが、1Aのパート〈毎日が何気なく クレイジーだったよ〉のフレーズに、桑田のルーツにもあるハナ肇とクレージーキャッツが登場している部分だ。さらに、2Aパート〈歌の文句なら そう“また逢う日まで”〉には、「また逢う日まで」を代表曲に持つ尾崎紀世彦の姿。大サビの〈Woo…上を向いて歩こう〉で坂本九が登場するのを皮切りにして、そこから沢田研二、小泉今日子、西田敏行、森進一、YOASOBIらを経て、2019年にサザンとして大トリを務めた『第69回NHK紅白歌合戦』での桑田と松任谷由実の語り草となっている映像、そこから氷川きよし、北島三郎で締めくくられるという粋な構成となっている。映像全体としては、桑田が「若い広場」で主題歌を務めたNHK連続テレビ小説『ひよっこ』をはじめとする朝ドラや大河ドラマ、歴代のオリンピック、年代を象徴する歴史的なニュースなど、様々なジャンルの映像が使用されている中で、やはり印象的に残るのは先述したような『紅白』でのステージであり、どこまで桑田の思いが反映されているかは定かではないが、「神様からの贈り物」という楽曲を紐解くヒントになっていることは確かだろう。楽曲のラストのフレーズは、〈あの歌と出会い あなたがいれば 何にも怖くない〉。桑田自身にとってのエンタメと先人への愛と感謝を込めた楽曲でありながら、聴く人それぞれにとっての歌との出会い、“神様からの贈り物”について歌われた普遍的な楽曲であるようにも思える。

 サザンが2014年にリリースした「東京VICTORY」は、6年後に来たる東京オリンピックをきっかけに生まれた楽曲だった。当時、『SONGSスペシャル』に「時を駆けるサザンオールスターズ 変わりゆくニッポン」と題してサザンが出演し、「東京VICTORY」を演奏していたことを思い出す。2020年に民放共同企画“一緒にやろう”応援ソングとして桑田がソロ名義で提供した「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」を例に、サザン/桑田は日本のエンタメの歴史、テレビの歴史を楽曲に色濃く映し出してきた。「神様からの贈り物」もまた、エンタメの100年、ポップミュージックの100年を描きながら、変わらぬ未来への希望を桑田は歌っている。

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