百田夏菜子「いろんなものを引き寄せてたくさんの感情と出会ってきた」 初ソロアルバム『ビタミンB』を語る

百田夏菜子、初ソロアルバムを語る

 百田夏菜子が、初のソロアルバム『ビタミンB』をリリースした。ジャケットには満面の笑顔を浮かべている百田にリンゴが直撃している瞬間が収められ、楽曲には百田自身が綴る歌詞や深い絆を築いてきた氣志團・綾小路 翔による作品などが並ぶ。まさに百田夏菜子そのものと言うほかない、素晴らしいソロアルバムの誕生だ。

 百田は長いキャリアのなかで、なぜ今ソロアルバムを作り上げ、そしてももいろクローバーZの百田夏菜子と、ひとりの人間・百田夏菜子にどのように向き合ったのか。じっくり話してくれた。(編集部)

映画『すくってごらん』でのピアノとの出会い

百田夏菜子(撮影=加古伸弥)

――まずは、初のソロアルバムを出すことになった経緯を聞かせてください。

百田夏菜子(以下、百田):最初のきっかけは、ソロ曲がいっぱい増えてきたというのが大きかったです。私は2021年からソロでコンサートをやるようになって、ライブに向けてソロ曲を作ってきたけれど、それはライブでやるための楽曲だから、完成版の音源を作らずに、ライブでお披露目して。でも、ライブのあとにラジオでその曲をかけたいと思っても、そもそも音源がないからかけられないということが何度かあったんですよ。そういうこともあって、ソロ曲も増えてきましたし、「そろそろまとめましょう」という話が出たんです。ちょうど私が30歳になったタイミングで、自分が書いてきた歌詞がひとつのまとまった作品として出せるのはすごくうれしいことだなと思って、今回ソロアルバムを出させていただくことになりました。

――そもそも、ソロで歌ってみたいという願望はあったんですか?

百田:なかったです。自分がひとりでステージに立って歌うことも、以前はまったくイメージしたことがなくて。活動して今17年目ですけど、まさか自分のソロアルバムを出させていただける日がくるとは思ってもなかったです。

――他のメンバーもソロ活動を行ってますが、刺激を受けたりもしましたか?

百田:「みんなすごいな〜」っていつも思ってはいたんですけど、自分に置き換えて考えることはあまりできていなかったですね。でも、ファンの方の声は聞こえてはいたんですよ。「夏菜子ちゃんもソロやらないの?」って。だけど、ちょっと聞こえないフリというか(笑)。声は受け止めつつ、毎回「ももクロのライブにきてね!」と答えていたんです。

――避けてきたソロに前向きになれた瞬間はあったんですか。

百田:映画『すくってごらん』(2021年3月公開)に出させていただいた時に、ピアノに出会ったことがきっかけで、音楽や歌に対する思いとか向き合い方がまたひとつ変わりました。なんせ私は歌が苦手で、グループでたくさん歌わせていただいてはいるものの、ずーっと歌に苦手意識があったんです。歌は身近にあるものだけど、すっごく遠い存在、みたいな。一向に距離が縮まらない感覚があったんです。それが自信のなさにもつながっていたと思うんですよね。でも、ピアノと出会ったことでそうしたものが解決されていく感覚になれたというか。点と点が線でつながっていくのを経験できて、そこからは本当に意識が変わったと思います。あと、スタッフさんといろいろ相談しながらアルバムを作っていくという初めての経験も、すごく楽しい時間でした。

ももクロの百田夏菜子とソロの百田夏菜子

百田夏菜子(撮影=加古伸弥)

――今回、多くの楽曲で作詞されてます。どのようなきっかけで作詞を始めたんですか?

百田:ももクロは毎年バレンタインイベント(『ニッポン放送 ももいろクローバーZ ももクロくらぶxoxo ~バレンタイン DE NIGHT だぁ~Z!』)をやっていて、そこでは珍しくソロコーナーがあるんですよ。でも、私はソロコンもそんなにやらないし、なかなかソロ曲を更新できなくて毎年同じ曲を歌っていて。でも、みなさんに新しい曲を聴いてもらいたい気持ちもあるし、そこでスタッフさんに相談したら「じゃあ歌詞を書いてみたら?」と言っていただいたんです。それで初めて自分で作詞した「それぞれのミライ」という曲をお披露目しました(2020年2月『ももクロくらぶ xoxo ~バレンタイン DE NIGHT だぁ~Z! 2020』公演)。その時に、自分の書いた歌詞をステージで歌うこと自体がすごく新鮮だったんです、いつもと表現のアプローチが違うことも感じられて。「新たな表現や伝え方ができるのかもしれないな」「自分だからこそ歌える曲を作れたらいいな」と思って、そこから作詞をさせていただくようになりました。

――ももクロでの百田夏菜子とソロでの百田夏菜子の違いってどんなところにあると思いますか。

百田:ももクロは圧倒的に明るいし、すごくエネルギーがあって、「自分たちについてこい!」「大丈夫だよ!」ってお客さんを引っ張って、みんなの前を走っていくタイプなんですけど、普段の私はなかなかそうできないことも多いんです。ひとりだと、「そんな強くないかも……」という自分がいたりするんですよ。もちろんどっちも自分なんですけど、ももクロの自分だからこそ出せる陽のエネルギーやヒーロー感みたいなものは、ひとりではどうしたって無理なんです。あれはメンバーとモノノフのみんながいてできているものだと思うので、そこがもう圧倒的な違いですよね。ひとりではできない!

――ひとりでは無理と言い切りましたね(笑)。

百田:はい(笑)。曲にしても、ももクロはすごく前向きで、「一緒に行こうよ!」と引っ張っていく曲が多いじゃないですか。でも、自分が書いた曲を見ると、意識したわけじゃないのにポジティブにはなり切れていない部分があるんです。だからソロでは、グループでは触れることのない感情にスポットを当てて歌詞を書いてみたり、そういう違いがあるのかな。陽に対しての陰ということなのかなって。

――より人間くさいところを出す、みたいな。

百田:そうかもしれないです。ももクロは硬めの服を着ていろいろ装備してみんなで気合いを入れていく感じ。でも、ソロは柔らかめの服を着て装備もちょっと少なめ、みたいな感覚があります。

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