『グラミー』ノミネート、ONE OK ROCKとのコラボも話題のテディ・スウィムズ その歩みと意外なルーツ

テディ・スウィムズ、2024年を代表する声

 『第67回 グラミー賞』の授賞式が現地時間2月2日、ロサンゼルスのクリプト・ドットコム・アリーナで行われた。主要4部門はそれぞれ、年間最優秀レコード&年間最優秀楽曲をケンドリック・ラマー、年間最優秀アルバムをビヨンセ、最優秀新人賞をチャペル・ローンが受賞。日本人アーティストでは坂本龍一がニューエイジ、アンビエント、チャント・アルバム賞、宅見将典がグローバル・ミュージック・パフォーマンス賞にノミネートされていたが受賞は逃した。

 本稿で紹介したいのは、同じく受賞には至らなかったものの最優秀新人賞にノミネートされていたテディ・スウィムズ。2023年にリリースされたデビューアルバム『I've Tried Everything But Therapy (Part 1)』収録曲「Lose Control」が米Billboardのメインソングチャート「Billboard Hot 100」で1位を獲得し、全世界で約15億再生の大ヒット。オーセンティックなソウル、R&Bを軸にしながら、ヘヴィメタル、ファンク、カントリーなど幅広いテイストを取り入れた音楽性、そして何より、豊かなエモーションと聴く者を包み込み、癒してくれる歌声によって大きな注目を集め続けているアトランタ出身のシンガーソングライターだ。

【和訳】Teddy Swims - Lose Control (Lyric Video) 【公式】

 マイケル・ジャクソン「Rock with You」、エイミー・ワインハウス「Valerie」、H.E.R.「Focus」、ビリー・アイリッシュ「idontwannabeyouanymore」、ハリー・スタイルズ「Lights Up」などのカバー動画をきっかけに、ソウルフルかつハートウォームな歌声とタトゥーだらけの個性的なルックスが世界中の音楽リスナーにシェアされたテディ・スウィムズ。2020年にデビュー作『Unlearning EP』を発表し、内面を掘り下げたリアルな歌詞、感情豊かなボーカルによって、高い評価を得た。

Teddy Swims - Rock with You (Michael Jackson Cover)
Teddy Swims - idontwannabeyouanymore (Billie Eilish Cover)

 その歌声は多くのアーティストからも賞賛され、メーガン・トレイナー、イレニアム、MK、BURNSなどとのコラボレーションが実現した。また、2022年にはONE OK ROCKの「Free Them (feat.Teddy Swims)」に参加。“自分の思いを隠すのをやめて、すべて解き放とう”というメッセージを込めたこの曲によって、テディの歌声に触れた日本の音楽リスナーも多いはずだ。

One Ok Rock - Free Them (feat. Teddy Swims) [Official Audio]

 2023年9月にはデビューアルバム『I've Tried Everything But Therapy (Part 1)』をリリース。収録曲「Lose Control」によって、テディは世界的ブレイクを果たした。「Lose Control」は60年代のソウル〜ブルースを想起させるバラードナンバー。“君がそばにいてくれないと、自分を見失ってしまう”という切実な想いを描いた歌詞、感情の機微を生々しく響かせるボーカルからは、テディの作家性とシンガーとしての魅力がダイレクトに伝わってくる。

 この曲を書いたきっかけは、付き合っていたパートナーとの健康的とは言えない関係に直面したことだという。根底にあるのは、恋愛の依存性から抜け出し、お互いのために前に進もうとする葛藤。自身の体験をリアルに反映しているからこそ、「Lose Control」は国境を越え、多くの人々の心情を揺さぶったのだと思う。自らの人生や日常をさらけ出し、それをリスナーと共有することで、互いの癒しに結び付ける。そんなテディの音楽の在り方は、アルバム『I've Tried Everything But Therapy (Part 1)』によって明確に提示されている。

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