Aooo、『バズリズム02』『Eight-Jam』でなぜ評価された? “ロックバンド”好きを魅了するエッジの立った音楽性

Aooo、エッジの立った音楽性

 「Aooo」と書いて、「アウー」と読む。由来はメンバーの血液型。2023年に結成された4ピースロックバンドである彼らは、言わば、「スーパーグループ」である。ボーカルは、アイドルグループ・アイドルネッサンスのメンバーとして活動を開始し、その後、赤い公園のボーカルも務めた石野理子。ギターは、ボカロPとして「テレキャスタービーボーイ」や「エゴロック」など有名曲を生み出し、また自身で歌唱するシンガーソングライターとしても活動する、すりぃ。ベースは、ももいろクローバーZやYOASOBIのサポートとして世界を舞台に活躍するベーシスト、やまもとひかる。ドラムは、ボカロPとして「フォニイ」などの有名曲を放ち、星街すいせいのヒット曲「ビビデバ」を手掛けるほか、自身のユニットNOMELON NOLEMONでは映画『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) -Beginning-』挿入歌を担当するなど、多くの話題を集めるツミキ。個々が確かなキャリアを積んできた実力者であり、音楽界の若きスターたち。こんな錚々たる顔ぶれが集まっているのだから、Aoooを「スーパーグループ」と呼んでも差支えはないだろう。

 しかしながら、そんなAoooが生み出す音楽そのものを「スーパーグループ」という観念的な重量のある言葉で形容するのは、いささか、はばかられる。というのも、Aoooのバンドサウンドは、スーパーグループのそれと言うには、あまりに衝動的で、無邪気で、みずみずしいのだ。「ヒットメイカー同士でコラボして、一発当てましょう」なんて浅はかな魂胆とは、完全に無縁。人と人が出会い、音と音が出合う。その瞬間にあるマジカルな喜びと興奮が火花のように弾けている。「私とアンタは違う人間だった!」という違和感すら、ゲラゲラと笑っている。今、Aoooが奏でているのは、そんなサウンドなのだ。昨年10月にリリースされたセルフタイトルの1stフルアルバム『Aooo』は、とにかく鮮烈なアルバムだ。ここに収録されているのはネームバリューのある音楽家たちによる横綱相撲のウェルメイドなポップソングではなく、バンドの初期衝動を生々しくパッケージングした鋭利なロックソングたち。「バンド」だからこそ生み出し得る、1stアルバムとしての傑作――それが『Aooo』なのだ。

Aooo「サラダボウル」from Aooo 1st Live Tour "BOWWOW"

 本作『Aooo』は、ドラム、ベース、ギター、ボーカルがヒリヒリとした緊迫感の中で調和し、疾走する、トータルタイム1分ちょっとの見事なオープニングトラック「FLASH FORWARD」で幕を開け、バンドの現時点での代名詞的な1曲「サラダボウル」に続いていく。この幕開けだけをとっても、ロックバンドの1stアルバムとして、完璧。「サラダボウル」もまた、各楽器がソリッドに絡み合いながら突き進んでいく楽曲だが、作詞作曲を手掛けたすりぃらしい中毒性のあるメロディが華やかさをもたらし、柔軟でパーカッシブなドラムが、ともすれば密室的になりかねないアンサンブルを空間的に押し広げ、さらに「笑い」のエッセンスすら与えていく。語弊のある書き方かもしれないが、Aoooの音楽において「笑い」は大切なエッセンスだ。言い換えるならば、シリアスさに押しつぶされない余裕や遊び、と言っていいかもしれない。何を考えているのかまったく想像もつかない他者と出会った時に感じる緊張と不安すら、笑いに変えてしまう――そんなダイナミズムが、Aoooの音楽にはある。

 最近はどうか知らないが、私が小学生くらいの頃にはアメリカ合衆国の多人種、多民族が共存するありようを「人種のサラダボウル」と呼ぶのだと学校で習ったものだ。「サラダボウル」とは、つまり、「混在」を意味する。まさにAoooを象徴する言葉でもあると言えるだろう。もしも、この記事を読んでくれているあなたが、ロックバンドとは楽器の演奏に乗せて、甘くて感傷的なラブソングを歌うものだと思っているのだとしたら……それだけじゃないんだよ。『Aooo』を聴けばわかるだろう。様々な個性、価値観、人生――それらが出合い、混ざり合った先で生まれる、その歪なカオスすら爆笑しながら肯定してしまえるのが、ロックバンドという希望の音楽表現なのだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる