津野米咲が遺した数々の楽曲と意志 赤い公園『THE PARK』、SMAPやモー娘。への提供曲、客演など振り返る

 赤い公園の津野米咲さんが10月18日に亡くなった。今月2日に29歳になったばかり。あまりにも早すぎる。

 筆者が彼女と最後に喋ったのは昨年11月に東京・EX THEATER ROPPONGIで開催された『FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”』終演後の挨拶。その日披露された数多くの新曲に、「ポップでありながらも、どこか変態性を帯びた津野さんの記名性が光る楽曲」と自分なりの最大の賛辞を贈った。赤い公園の音楽性を知らない人が横で聞いていたら、きっと訝しげな目で見られていたことだろう。それでも両手を頬に当て、朗らかな表情を浮かべて喜んでくれた津野さんの笑顔を今でも鮮明に思い出す。

 津野さんは赤い公園のギタリストで楽曲のソングライティングとプロデュースを手がけるバンドの中心メンバー。様々なアーティストへの楽曲提供でも知られる人物だった。彼女のクリエイターとしての特徴は突き抜けたポップスとソリッドなアンダーグラウンドの両極を手がけられることにある。そのポップスの代表作にあるのが、2013年にSMAPに提供した「Joy!!」。グループにとって50枚目の記念すべきシングルであり、津野さんはこの時21歳で「Joy!!」を作り上げている。SMAPのコンサートには欠かせない、会場が一体となるライブチューンだ。思わず踊りだしたくなるディスコサウンドは、後にモーニング娘。’16に提供した「泡沫サタデーナイト!」にも通ずるものがある。ジャニーズだけでなく、ハロー!プロジェクトにも精通していた津野さんは、「『LOVEマシーン』の再来」と言われたハロプロ好きも唸る「泡沫サタデーナイト!」を作詞作曲し、その後も℃-ute、Buono!、こぶしファクトリー、つばきファクトリー、鈴木愛理とハロプロ関連アーティストへの楽曲提供は続いていった。

モーニング娘。’16『泡沫サタデーナイト!』(Morning Musume。’16[Ephemeral Saturday Night]) (Promotion Edit)

 同世代のバンドだけでなく、aikoやYUKIといった女性シンガーからも一目置かれていた津野さん。2018年リリースのYUKIのシングル『トロイメライ』に収録された「かたまり」は、YUKIが自ら津野さんにコンタクトして完成した楽曲だ。津野さんが担当したのは作曲、編曲とギター演奏。エレピのカラフルで胸が弾むイントロに、流麗なストリングス、サビのコーラスとYUKIの作風を踏襲しながらも、ところどころでインサートされるつん裂くようなギターリフは決して楽曲を殺すことなく彼女の存在証明を鳴らしている。

「かたまり」

 ギタリストとしてはほかにも、Creepy Nuts × 菅田将暉「日曜日よりの使者」にVIVA LA J-ROCK ANTHEMSの一人として参加。中でも特筆したいのは2013年にギターとコーラスで参加した長澤知之の「そのキスひとつで」。赤い公園のサウンドカラーの一つでもあるシューゲイザーが前面に出た客演だ。さらに付け加えれば、今年1月に配信リリースされたクリープハイプの「愛す(津野米咲 Remix)」は彼女がリミックスしたエレクトロポップ。タイム感が強く出たビートに、後半にかけて色濃くなっていくノイズは彼女の変態性が垣間見える部分である。

「日曜日よりの使者」
長澤知之 / そのキスひとつで
Busu (Maisa Tsuno Remix)

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