Snow Man 渡辺翔太、個性抜群の「うわっ」から垣間見える歌唱スキル BTS JUNG KOOKらにも通ずる豊かな余韻

 ボーカリストの特性について考えるとき、その本人が持つ固有の“癖”から読み解くと思わぬ視点が得られることがある。一見すると何気ないものかもしれない。でもそれが細かいほど、アーティストの才能が色濃く抽出される。Snow Man 渡辺翔太は、そうした“癖”自体がボーカリストとしての特性を裏打ちする代表的人物だと思う。

渡辺翔太が持つ署名的な「うわっ」

 『週刊ナイナイミュージック』(フジテレビ系)2024年10月30日放送回にSnow Manがゲスト出演した際、全国1万8000件の投稿から厳選された「Snow Manのかわいらしい所」が特集され、ラストに紹介された渡辺の「食レポのレパートリー『うわっ』しかないのがかわいらしい」がとても魅力的だった。「うわっ」は食レポ時に渡辺が発する癖である。番組では、Snow Manの公式YouTubeチャンネルで公開されている「Snow Man【ミシュランの名店】極上の焼き鳥をいただこう」の動画が引用されていた。つくねを食べてひたすら「うわっ」を連呼する。それを見たMC 岡村隆史がもう少しレパートリーを増やそうとコーナーをまとめたのだけれど、いやいやこの「うわっ」は単なる癖ではなく、我らがしょっぴー(渡辺翔太の愛称)の署名的特性なのだ。

Snow Man【ミシュランの名店】極上の焼き鳥をいただこう✨

 その署名性をめぐって他の動画を確認してみてもいい。向井康二と深澤辰哉、岩本照、渡辺の4人でラーメンを食べに行く「Snow Man【地元で有名なラーメン店】なんだかサイコーの日になりました」の動画は、メンバーそれぞれの「うわっ」と「うわぁ」の偏差が渋滞する神回だ。着席した途端、壁に貼られたお品書きを指差した深澤と向井の「うわぁ」がハモる。岩本が「うわぁって言ってんの、美味しそってあれ(意味)だから」としっかり解説する。ラーメンが運ばれてくると今度は深澤ソロの「うわっ」。飯テロ動画を撮影する向井も要所で「うわっ」を連発。深澤は「う」を強く、向井は「わ」を強く発音している。あえて「うわっ」を温存する渡辺は、向井が撮影する画面内で「う」も「わ」も強調することなく、「うわっ」と「うわぁ」の間くらいの音を慎ましくもシルキーに響かせ、語尾を区切らずに豊かな余韻としている。署名的な「うわっ」を細分化していく作業によって、単なる癖の一つが歌唱分析に役立ってくる。

Snow Man【地元で有名なラーメン店】なんだかサイコーの日になりました✨

“ロングトーン的母音”の発声によって音を色分け

 では、ボーカリストとしての渡辺の特性が、この「うわっ」によって具体的にどう裏打ちされているのか。彼のボーカルの特徴としてよく挙げられる伸びやかなロングトーンに関わってくる。たとえば昨年11月30日に放送された『ベストアーティスト2024』(日本テレビ系)に出演したSnow Manのパフォーマンスを見てみよう。2曲目の「タペストリー」で〈二人で綴る物語(ストーリー)〉 と歌う箇所の〈ストーリー〉が2小節分たっぷり歌い上げるロングトーンだ。渡辺のあとに再度同じフレーズをロングトーンで目黒蓮が繰り返すが、こういう明らかな見せ場とそうではないところで渡辺のロングトーンは使い分けられている。

 今度は1曲目の「EMPIRE」で渡辺が担当したパートに注目してみる。この日は療養のため活動制限中だった岩本に代わってトップバッターも務めた。気合い十分。まず〈感じよう さあ〉を「かん〜じよう」と1拍半、次に〈X Y Z まだ見ぬセカイ〉の〈セカイ〉を1拍伸ばす。モーツァルトの「交響曲 第25番 ト短調」第1主題のシンコペーションがサンプリングされることで中毒性が生まれている全体の4分の4拍子に対して1拍分ではロングトーンが成立しないが、〈セカイ〉の箇所が2拍目裏から入ることでタメのある余韻にロングトーン的資質が感じられる。このフレーズをさらに分解してみる。〈セカイ〉は「せかぁ〜い」と伸び、「うわっ」や「うわぁ」と同じ母音が含まれる。『週刊ナイナイミュージック』で渡辺は「うわっ」をオンエアで使ってくれるから発すると明かしているが、食レポ時などに日常的に意図して配置されたものだからこそ、歌唱時にも豊かな母音としてさりげなく響かせられるのだと僕は考えている。

 譜面上の記号(音符)でしかなく、不可視であるはずの“音”だが、渡辺は固有のロングトーン的母音の発声を駆使して、音色を自在に色分けしながら可視化しようとしているのではないか。『2024 FNS歌謡祭』(フジテレビ系、12月4日放送回)の映像上では、よりフィジカルな意味で可視化されている。Snow Manが披露する「ブラザービート」で、上手にいた渡辺が、自分のパートを歌うためにセンターに向けて動き出した瞬間だった。〈まあまあまあ〉と母音を連打する歌声が徐々に生々しく聴こえてくる。まるで彼のマイクだけが特殊な増幅機にでもなっているかのように声量がクレッシェンド。上手からセンターへの移動中、ボーカルがその動線をはっきりと可視化しながら音を粒立たせる。渡辺の歌声には不可視のものを可視化するスマートな強度みたいなものがある。さらにこの可視化の視点は、「うわっ」と類似する余韻と響きを伴いながら、他のボーカリストについても豊かな連想を広げてくれる。

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