アトラスサウンドチーム、Spotify年間ランキングに急浮上 喜多條敦志に聞く、海外にも広がるゲーム音楽の現在

アトラスサウンドチームに聞くゲーム音楽の現在

「ゲームを構成する要素の一つである音楽」を意識したサウンドメイク

――昨今の音楽シーンを振り返ると、雑食性のような部分が際立ってきたように感じていて。喜多條さんの音楽は、そういった時代の流れとも合致している印象があります。10月31日、ホロライブ所属の森カリオペ(Mori Calliope)さんのオンラインライブにLotus Juiceさんがゲスト出演して「It's Going Down Now」を披露していました。色々な要因があると思いますが、現時点で(12月24日現在)この曲のパートが最もリプレイされているようです。

喜多條:本当にありがたい話ですね。この曲も元を辿れば『ペルソナ3』の世界観やオリジナルのBGMになじむよう意識して生まれたもので。自分の我を貫いて楽曲を作るというよりは、原作の世界観にあわせてサウンドを制作するイメージを持っていました。プレイヤーに違和感が発生しないように、というのが念頭にありましたね。それだけに、これだけ多くの方に支持していただけたのは『ペルソナ3』のもともとの音楽が非常に優れていたということでもあると思います。それから、この曲に欠かせないのはやはり高橋(あず美)さんの歌声ですね。

――少し視座を変えた質問になりますが、『ペルソナ3 リロード』の楽曲がそうであるように、近年はゲーム音楽がポップミュージックのプラットフォーム化しているように感じます。今や年間チャートにも大きく影響を与える存在ですが、当事者としてこの現状をどう見ていますか?

喜多條:自分もそういった変化を感じているんですが、ゲーム音楽はポップミュージックやアーティストさんが作る楽曲とは異なる性質を持っていると考えています。サウンドそのものの良し悪しよりも、プレイヤー自身の好きなシーンやキャラクターに紐づいている部分が大きいと思うんです。もちろん、楽曲のクオリティは大切ですが、何よりもゲームの体験ベースの魅力がサウンドの印象に大きく影響しているのかなと。最近はSNSの発展もあり、そういったものがシェアされやすくなっている点も変化の一因だと思います。ただ、ゲームを介したインタラクティブな性質は、ほかのアーティストさんたちの音楽とは違うかもしれません。ある程度客観性を担保されたドラマや映画のサントラともまた異なっていて、ゲームは主体性がプレイヤー側にあるのも重要だと思っています。

――あくまでもゲーム音楽は副次的なものという見方ですね。ただ、音楽そのものの魅力が十分に伝わりにくいという点は、音楽ライターとしてはなかなか歯がゆさを感じる部分でもあります。ゲームの体験に強く紐づくものであるがゆえに、音楽そのものにフォーカスするのが難しいといいますか。

喜多條:僕としては、やはりどこまでいっても「ゲームを構成する要素の一つである音楽」を意識して作っています。音楽だけ尖っていても、ビジュアルのイメージやUIに合わないと世界観として成立しなくなってしまうと思うんですよ。こういった考えは、“作品に寄り添った音楽が好き”だという私個人の好みも大きく影響している部分もあると思いますが、副次的なものであると優れた音楽であっても、作品自体が認知されないとどうしてもフォーカスされにくい側面はあると思います。ただ、冒頭から言っているようにSNSの発展などで、特定の分野を追っていなくても、広くシェアされるようになってきているのは、モノを作る身として嬉しくもあり、怖くもありますね(笑)。

――その一方で、ゲーム音楽がポップミュージックとしてもより注目されていくにあたり、個人的には界隈のコンポーザーがますます重要になっていくのではないかと感じています。現状、若い世代の活躍についてどのように見ていますか?

喜多條:実際、最近応募してくる若いコンポーザーの皆さんは、すごいスキルを持った方ばかりですよ。自分はその才能に戦々恐々としていますから(笑)。上の世代には多くのレジェンドがいますし、自分もまだまだ頑張らねばという思いです。具体的なことはまだ言えませんが、今後もライブをはじめ、アトラスサウンドチームとして色々な展開を予定していますので、ぜひ期待していてください。

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