爆風スランプ、再集結を経て26年ぶりのツアー完走! 原点回帰と現在地の交点で溢れた美しきパワー
2024年11月17日、LINE CUBE SHIBUYAにて『爆風スランプ〜IKIGAI〜デビュー40周年日中友好LIVE “あなたのIKIGAIナンデスカ?”ライブ』が行われた。
今年2024年に、デビュー40周年を記念し、26年ぶりにサンプラザ中野くん(Vo)、パッパラー河合(Gt)、ファンキー末吉(Dr)、バーベQ和佐田(Ba)の4人が再集結。新曲「IKIGAI」を8月25日に、一枚は全曲新録で、もう一枚は全曲リマスタリングし、未音源化の曲も新たに収録した2枚組ベストアルバム『40th Anniversary BEST ALBUM IKIGAI 2024』を10月23日にリリースした。そして行った、愛知・兵庫・東京の4本のツアーのファイナルが、この日である。この日のステージの模様は、スペースシャワーTVで生中継された。
タイトルに「日中友好LIVE」とついているように、このライブには、中国の布衣楽隊(BuYi Band)がゲスト出演した。中国在住のファンキー末吉がプロデュースして世に出し、後に2018年にドラマーとして正式加入した、4人組ロックバンドである。
最初に3曲を演奏、4曲目は「リゾ・ラバ」の布衣楽隊バージョン。曲の途中からサンプラザ中野くん→パッパラー河合→バーベQ和佐田の順で爆風スランプのメンバーが登場し、曲に加わっていく。中野くんは2コーラス目のリードボーカル、河合はギターソロ、和佐田は金のマントを羽織ってステージ下まで歩き回り、ボーカルもとった。
そして、初期のライブのオープニングの定番だった、メンバー紹介曲「えらいこっちゃ」で、爆風スランプのライブが本格的にスタートする。この曲もそうであるように、ベストアルバム収録曲が軸になったセットリストだが、ベストアルバム未収録曲も演奏された。
ちょっと整理してみます。
①ベストアルバムに入っていて演奏された曲
「えらいこっちゃ」は、音源では河合は自分の番になると自己紹介だけしてギターを弾かないが、この日はちゃんとソロを弾いた。「War」を外さなかったのは、ふたつの戦争が起きているという、今の世界の状況を鑑みてだと思う(中野くんも、歌う前にそのようなMCをした)。
ダブルアンコールが、「大きくってすいません号」に乗って各地をツアーしていた頃を歌った「THE BLUE BUS BLUES」と、ヒットしたのは数年後だが、初出は1985年の2ndアルバム『しあわせ』である「大きな玉ねぎの下で」の2曲だったのは、初期への原点回帰のようで、何かとても、美しいものがあった。
当時人気だったジャパメタのパロディとして作られた「たいやきやいた」は、10曲目に演奏された。1984年リリースの1stアルバム『よい』収録曲で、シングルではないのにMVが作られた曲である。
演奏に入る前のファンキー末吉の口上は、40年前と一字一句同じだった。爆風スランプがツアーで広島にきた時に二度目撃したので覚えています。のちに、爆風スランプを脱退した江川ほーじんが、ACTIONの山根基嗣、44MAGNUMの梅原達也とファンクバンド=RHINOCEROSを結成することと、もっとあとに末吉と和佐田がLOUDNESSの二井原実とメタルバンド・X.Y.Z.→Aを結成することを、当時の自分に教えてやりたい。信じないと思う。
そして、新曲「IKIGAI」は、一度目のアンコールの2曲目にプレイ。初期爆風スランプ的構造のこの曲を、今の爆風スランプが生でやるといかに威力に満ちたものになるのか、それがまざまざとわかる素晴らしさだった。なお、「マイ・ラブ」シリーズは、メンバーがそれぞれの出身地のことを歌う曲で、8曲終わったところでじゃんけんして、和佐田が勝ったので〈京都マイ・ラブ〉になったのだった。
②ベストアルバムに入っていなくて演奏された曲
「ひどく暑かった日のラブソング」「よい〜うわさに、なりたい」「旅人〜The Longest Journey」は、いずれも、シングルだったりアルバムタイトル曲だったりで、ベストアルバムに入っていない方が不思議な曲である。なので、納得。
個人的には、ファーストアルバムの2曲、「よい〜うわさに、なりたい」の、中崎英也作曲の2曲のメドレーが聴けたのが嬉しかった。そう、初期の爆風スランプ、外の作曲家の曲も結構あったのだ。
4曲目の「夕焼け物語」と7曲目の「それから」は、いずれも爆風スランプのなかの屈指のラブソングである。なので、これも納得。なお、「夕焼け物語」から、サポートキーボードのジミー岩崎が加わった。中学生の頃から爆風スランプの大ファンだそうで、彼を紹介した中野くん、「岩崎くんに代表されるわけではございませんけども」とオーディエンスのほうを向き、「あの時の中高生が、今、中高年」。
今回のツアーのサブテーマが、この「あの時の中高生が、今、中高年」だそうで、中野くん、「中高年のほうが、中高生の時よりも自由に動けます。いろんなところに行けます。そして何よりも、お金にもちょっと余裕があります」。オーディエンス、みんな、笑って拍手。
中野くん、「そんなわけで、ここ渋谷に集ってくれたみなさんの中高年パワーをもって、最後まで楽しく盛り上がっていこう!」と叫び、オーディエンスに「中高年パワー!」のコールを求める。これ以降、何度もこの「中高年パワー!」コールが交わされるライブになった。
で、「スーパーラップX」と「耳たぶ〜目ん玉」は、どちらも河合が歌う曲で、どちらも飛び道具的な、「こういう曲もあるのが爆風スランプ」な存在。なので、ライブに彩りをつける意味合いで、セトリに入れたのだと思う。
「スーパーラップX」は、タイトル通り河合がラップする曲で、河合、末吉、和佐田で演奏。バッキバキの演奏で、この3人の腕の確かさを見せつける。「耳たぶ〜目ん玉」のメドレーは、「耳たぶって(目ん玉)って不思議、舐めてみたくなる」という短い曲で、河合の弾き語り。この曲を嬉しそうに歌う60代の河合を、嬉しそうに観ている50代〜60代が中心のオーディエンス、という幸福な画になりました。超満員のLINE CUBE SHIBUYAが。