SIX LOUNGE、Omoinotake、緑黄色社会……楽器隊による作詞で際立つ“ボーカリストを活かす言葉”

 バンドにおいては、ボーカリストが楽曲の作詞作曲を行うのが定番だ。自分が歌いたいメロディに、自分が歌いたい言葉を乗せる表現欲求は自然なものと言える。しかし中には、メインボーカルではない楽器隊のメンバーが作詞を担当しているバンドもおり、音楽シーンにおいて存在感を示している。本稿では今季も大活躍が予感される、そんなバンドたちについて紹介したい。

SIX LOUNGE

 10月より放送中のTVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-相剋譚-』(テレビ東京系)のオープニングテーマ「言葉にせずとも」を担当しているSIX LOUNGEは、大半の歌詞をナガマツシンタロウ(Dr)が手がけている。作曲の多くはヤマグチユウモリ(Vo/Gt)が務めており、作詞作曲が分業されているのが特徴だ。ヤマグチが家で曲を聴かせて、風呂に入ってるうちにナガマツが歌詞を書き上げていたという逸話があって以降、この形で楽曲が制作されている(※1)。偶発的な始まり方であるが、ナガマツの歌詞は初期から現在に至るまでSIX LOUNGEのロックンロールを言語として伝え続けている。

TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-相剋譚-』ノンクレジットオープニングムービー

 中島らもを一番好きな作家に挙げ、映画好きでもあるナガマツが綴る言葉は素朴かつロマンチックな描写が多く、SIX LOUNGEの楽曲が持つ直情的なエネルギーとの親和性がとても高い。「歌詞を書くときに、その言葉を発するのがユウモリっていうことは頭に置いて書くようにしています」という発言からもわかる通り(※2)、ヤマグチの芯が太くもしなやかな歌声で発せられることで完成する歌詞と言えるだろう。

 「リカ」や「メリールー」をはじめ、ラブソングの多さも特徴的で、ここでもオールドスクールなロックバンドらしい耽美さと退廃性を継承している。ナガマツがドラマーということもあってかメロディに対する言葉のリズム感も抜群であり、美しく作り込まれた言葉でありながら衝動を損なわずに胸を熱くさせてくれる歌詞なのだ。ロックンロールと文学をともに愛するナガマツだからこそできる客観的かつ情熱的な作詞アプローチと言えるだろう。

SIX LOUNGE - リカ / THE FIRST TAKE
SIX LOUNGE - メリールー(Official Video)

Omoinotake

 年始にリリースした「幾億光年」のストリーミング再生数が自身初の3億回を突破したOmoinotake。現在放送中のドラマ『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』(日本テレビ系)の主題歌「ラストノート」を担当するなど好調を続け、今年のブレイク筆頭株と言えるが、彼らもまた作詞作曲は分業制で行うバンドだ。作曲は藤井怜央(Vo/Key)が務め、作詞は福島智朗(Ba)が手掛ける楽曲が大半である。

Omoinotake | ラストノート 【TV size - Official Lyric Video】

 もともとは福島が作詞作曲をともに担当していたが、音楽性を変えるにあたって、藤井が鍵盤での作曲を始めたことが現在の制作スタイルになったきっかけ(※3)。活動初期は英語詞が中心だったというが、現在はストレートな日本語詞を得意としている。福島は愛称が“エモアキ”であり、その名の通りエモーショナルな言語表現が持ち味だ。Omoinotakeというバンド名も福島が好きな言葉“思いの丈”から名づけられたものであり(※4)、福島のパーソナルかつ切実な感情が歌の中で表現されていると言えるだろう。

 メッセージやストーリーを伝えると同時に、押韻の気持ちよさや藤井が歌う母音の伸びも重要視した歌詞になっているのは、彼がベースというリズム楽器を操っているからこそ。言うなれば音楽的快楽と感動を誘う言葉の力強さの両立である。例えば「One Day」では「韻を重視していた頃の自分と、伝えたいメッセージがある自分がうまく混ざり合った」(※5)と語られており、その技巧は今も進化し続けていると言えるだろう。

Omoinotake / One Day [Official Music Video]
Omoinotake | 幾億光年 【Official Music Video】

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