マカロニえんぴつという音楽と旅した日々を巡る『TRIP INSIDE』 常に“今”がピークであることを証明した武道館ライブ

 マカロニえんぴつのワンマンライブ『TRIP INSIDE 〜Osaka-Jo Hall & Nippon Budokan〜』。10月5日、6日に大阪・大阪城ホール、10月11日、12日に東京・日本武道館で開催されたこの公演。最終日の武道館ライブでマカロニえんぴつは、セットリスト、演奏、演出、そして、バンドとオーディエンスの繋がりの強さを含め、キャリア史上の最高峰と言っても過言ではない圧巻のステージを繰り広げた。

マカロニえんぴつライブ写真(撮影=浜野カズシ)

 真っ赤なライトに照らされた舞台に登場したはっとり(Vo/Gt)、高野賢也(Ba/Cho)、田辺由明(Gt/Cho)、長谷川大喜(Key/Cho)、サポートドラムの高浦''suzzy''充孝が放ったオープニングナンバーは、ファンクラブの名前を冠した「OKKAKE」。「武道館!」というはっとりの第一声、タイトに引き締まったバンドサウンド、〈ずっと歌っていてくれよな?〉〈変わってしまうなよ〉という歌詞によって心地よい一体感を生み出す。さらにカラフルで幾何学的な映像とともに披露された「レモンパイ」で大合唱を巻き起こし、「チューハイ少女」では色とりどりのレーザーで会場を染め上げる。長谷川のシンセソロ、田辺のギターソロが炸裂した「愛のレンタル」まで一気に4曲を続け、観客のテンションは早くも最初のピークに達した。

マカロニえんぴつライブ写真(撮影=浜野カズシ)

マカロニえんぴつ はっとり ライブ写真(撮影=浜野カズシ)
はっとり
マカロニえんぴつ 高野賢也 ライブ写真(撮影=浜野カズシ)
高野賢也
マカロニえんぴつ 田辺由明 ライブ写真(撮影=浜野カズシ)
田辺由明
マカロニえんぴつ 長谷川大喜 ライブ写真(撮影=浜野カズシ)
長谷川大喜

 「はい、お待たせ! マカロニえんぴつです。すごいね、熱気が」。最初のMCではっとりは、今回のワンマンライブのタイトル『TRIP INSIDE』について説明した。「いつ好きになってくれたかはわからないけど、自分を好きになったその日、マカロニえんぴつがいたでしょう? 自分のことを嫌いになっちゃった日もマカロニえんぴつがいて。マカロニえんぴつと一緒に旅をしている感じだと思うんだ。あの曲に救われた、あの曲を抱きしめて過ごしていたなって、自分のなかを旅してもらいたいという思いで、『TRIP INSIDE』というタイトルを付けました」

 「ダラダラしゃべるのはここまで。アンコールもなし。曲をぶっ通して、フィジカルにいきたいと思います」(はっとり)という宣言通り、「listen to the radio」から6曲連続で演奏。中期The Beatles的な匂いを振りまく「poole」では長めのアウトロで盛り上げ、はっとりのギターと歌から始まった「MUSIC」ではメンバー個々の音が有機的に絡み合い、エモーショナルな音楽空間が出現。パルテノン神殿風の3D映像と壮大なサウンドが一つになった「メレンゲ」、スクリーンに大きな月を映し、〈きみのいない空に 少しだけど慣れてしまったんだ〉という切ないフレーズを響かせた「月へ行こう」など楽曲のテーマや世界観とリンクした演出も楽しい。

マカロニえんぴつライブ写真(撮影=浜野カズシ)

マカロニえんぴつライブ写真(撮影=浜野カズシ)

 多彩でポップなアレンジメントと、ロックバンドとしての強度の共存はマカロニえんぴつの特長であると同時に、ライブにおける課題でもあったと思うが、今回のライブではそのハードルを完璧にクリア。緻密さと爆発力を同時に感じさせる演奏は、デビュー10年目を迎えた今、明らかに精度を増していた。また、はっとりのボーカリゼーションも向上。この日は明らかに歌いやすそうだったし、伸び伸びと自由に歌の表現力を発揮していたように思う。たとえば「two much pain」の〈いかないで、ぼくの好きなひと〉における“悲しみのダイナミズム”と称すべき歌声には、彼のボーカリストとしてのポテンシャルがはっきりと表れていた。

 代表曲の一つ「なんでもないよ、」のサビで感動的なシンガロングを巻き起こしたあと、メンバー紹介と2度目のMCへ。「初恋っていつ?」といったトークに導かれたのは、はっとりの初恋の相手だった保育園の先生に捧げた「JUNKO」(幼少期のはっとりの個性を褒めてくれた“じゅんこ先生”はこの日、武道館に来られていたそうです)。ジャズを取り入れたサウンドが響き、スクリーンには保育園時代のはっとりとじゅんこ先生の写真が映し出される。間奏では、はっとりがサックスを手にステージ前方へ。華麗にサックスソロを披露……と思いきや、長谷川がシンセでフレーズを弾いていたというオチ。まるで昭和のコミックバンドのようなノリをぶち込めるのも、マカロニえんぴつの面白さだ。

マカロニえんぴつライブ写真(撮影=浜野カズシ)

 ステージ前方に幕を下ろし、ペルシャ絨毯のような模様や〈どうか会えるうちに会いたい人に!〉という文字を映しながら披露された「カーペット夜想曲」(幕を使ったのはこの1曲だけ。贅沢!)からライブは後半へ。「ブルーベリー・ナイツ」「リンジュー・ラヴ」「悲しみはバスに乗って」から「洗濯機と君とラヂオ」までライブで磨き上げてきた楽曲を次々と放つ。サウンドと歌の両方をめいっぱい楽しみ、手を挙げ、身体を揺らし、大きな声で歌うオーディエンスの姿も心に残った。マカロニえんぴつのライブにお約束はなく、基本的に“楽しみ方はみなさんで見つけてください”というスタンスなのだが、音楽を介した純粋なコミュニケーションがしっかりと成立していた。

マカロニえんぴつライブ写真(撮影=浜野カズシ)

マカロニえんぴつライブ写真(撮影=浜野カズシ)

マカロニえんぴつライブ写真(撮影=浜野カズシ)

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