BUMP OF CHICKEN、Official髭男dism、マカロニえんぴつ、優里……人気アーティストの意外なルーツ

 さまざまなプラットフォームで日々新たな音楽が発表され続けている現在の音楽シーン。語弊を恐れずに言うのであれば、それらの音楽に本当の意味でのオリジナルなものは存在しない。そこにあるのはオリジナリティ、独創“性”であり、0から1を生み出す営みではないのだ。音楽は、いわば秘伝のタレ。音楽の大きな潮流のなかで、一人ひとりのアーティストが時代や国境を越えて少しずつ自らの個性を継ぎ足しながら、音楽の限界値を押し広げてきた。過去の音楽から完全に断絶した音楽は存在し得ず、意図の有無にかかわらず過去の音楽的レガシーから影響を受けた形で最新の音楽シーンが成り立っているのである。

 もちろん、わかりやすく影響されたリファレンスを辿ることのできるアーティストや楽曲も存在するが、なかには実際に手掛けている作品やスタイルからは容易に見えてこない音楽的ルーツを持つアーティストがいる。今回は、そんな自らの音楽性とは方向性が大きく異なるアーティストやジャンルをルーツに持つミュージシャンを紹介していきたい。

 まず最初に紹介したいのは、BUMP OF CHICKENの屋台骨を支えるリズムセクション、ベースの直井由文とドラムの升秀夫に影響を与えた意外なあるバンドについて。BUMP OF CHICKENといえば、とりわけデビュー初期にはナードな雰囲気をまとってきたバンドであるが、直井と升が影響を受けたバンドは、そのイメージとは真逆なヴィジュアル系バンドの代名詞的存在、X JAPANである。BUMP OF CHICKENは、幼馴染同士で結成されたバンド。学生時代に直井と升の共通の話題として二人を繋ぐハブとなったのがX JAPANだという。互いにX JAPANが大好きだったことで友情が深まっていったのだ。リズムセクションの足腰の強さという意味合いにおいて、X JAPANからの音楽的な影響を感じさせるBUMP OF CHICKENだが、最も影響を受けているポイントはバンドのあり方ではないだろうか。

X Japan Kurenai from "The Last Live" HD

 幼稚園からの幼馴染であったYOSHIKIとToshlを中心に結成されたX JAPAN。その成り立ちは、BUMP OF CHICKENにも重なるところがある。そして、両バンドともに千葉県出身という共通点も見出すことができる。幼馴染によって郊外で結成されたバンドが全国区の成功を収めたX JAPANの姿をある種の憧れを持って見ていたのが直井と升ではないだろうか。X JAPANの成り立ちやバンドのストーリーにこそ、今のBUMP OF CHICKENへの大きな影響を感じ取ることができる。そんな影響が強く反映されているのが2007年に発表されたアルバム『orbital period』に収録されている「才悩人応援歌」だ。ドライブするベースや細かく刻まれるドラムが生む疾走感という音楽面だけでなく、平凡な自分自身やかつて抱いた大きな夢をシニカルにとらえながら、それでも前に進むことを肯定し、応援する歌詞は、X JAPANの成功を追いかけたBUMP OF CHICKENの自己投影のようでもあり、この楽曲を耳にするリスナーへのエールでもある。

 続いて紹介したいのが、日本におけるポップロックの旗手、Official髭男dismへ影響を与えたアーティストについてである。親しみやすいメロディラインや清涼感のあるアレンジが幅広い層の支持を集めている彼らの音楽性。しかし、彼らの音楽の根底には、よりハードな音楽からの影響が存在する。Official髭男dismではボーカルとピアノを担当する藤原聡だが、彼の音楽キャリアのスタートはドラマーとしてであった。そんな藤原が学生時代に衝撃的な影響を受けたのがヘヴィメタルバンド Slipknotである。

 Slipknotの複雑なドラムセットに興味を惹かれたことをきっかけに彼らの音源を聴き、その世界観に圧倒されたのだという。それまでクラシックやフュージョンに親しんでいた藤原の音楽の幅を一気に押し広げたのがSlipknotとの出会いだったのだ。また、ギタリストの小笹大輔は、ギタリストのポール・ギルバート(MR. BIG)に影響を受けたと公言しており、その技術的な影響は、楽曲のメロディアスで繊細なアレンジや緻密な音作りに表れている。

Slipknot「Psychosocial」MV
Mr. Big - Green Tinted Sixties Mind (Guitar playthrough by Paul Gilbert)

 昨年発表された彼らの配信シングル曲「ホワイトノイズ」は、まさにOfficial髭男dismのヘビーなサウンドが表面化した作品となっている。歪んだギターサウンドのイントロから幕を開けるこの楽曲。彼ららしい美しいメロディはそのままにロックなアレンジに振り切っているのだ。そして、しっかり用意されたギターソロでは、速弾きも披露され、ポールからの影響の片鱗が見え隠れしている。

Official髭男dism「ホワイトノイズ」MV

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる