Mrs. GREEN APPLEやTeleのサポート、Shiggy Jr.復活も話題に 森夏彦、ベーシストとして繋がってきた居場所

ベーシスト森夏彦が繋がってきた居場所

「Teleは音楽に対する没頭の仕方が他と違う」

――Teleには2022年の初ライブから参加していますが、どういった経緯だったのでしょうか?

森:キーボードの大ちゃん(奥野大樹)はTeleの発足からずっとアレンジを見てる人なんですけど、もともとShiggy Jr.のサポートでキーボードを弾いていたので、そこで知り合っていて。Teleのライブをやるときに大ちゃんが僕の名前を出してくれて、それからですね。2年前の(心斎橋)BIGCATでの初ライブから、ずっとやってます。

――Teleの魅力についてはどのように感じていますか?

森:もともと楽曲がすごく好きなタイプなので、それも魅力なんですけど、最初のBIGCATからの成長スピードが異常というか。最初は「この若者をしっかり支えてあげよう」みたいな、そういう親心だったんですけど、最近はもう「ちゃんとこの人についていこう」みたいな、それくらい成長してる。あと彼の魅力は没頭感ですよね。音楽に対する没頭の仕方が他の人と違うというか、自分の世界や音楽に対するエネルギーが頭の中でずっと沸騰してるような人なんだろうなって。スタジオでもずっと落ち着きなく歩き回ったり跳ねたりしてて、見てて面白い生き物だなっていうのはめちゃくちゃありますね(笑)。

――僕は東京キネマ倶楽部での初ワンマンからライブを観させてもらっていて、今年6月の武道館公演まで約1年半ぐらいだから、確かにすごいカーブで成長してますよね。でも今おっしゃった没頭感、いい意味での破れかぶれ感みたいなものはずっと通底していて、とても魅力的だなと思います。

森:この前の武道館に関しては、ステージの演出も上手いんだなって思いました。ホール以上のキャパでしっかり演出を入れてライブをするのは初めてだったんですけど、アイデアは彼が考えていて、砂漠のセットも良かったし、「そういうこともできるんだ」っていう。逆に納得もしたというか、あれだけ常に頭が爆発してるような人だったらそこまで考えるよなとも思って。彼は相当面白いですね。

――ミセスの大森さんもそうだと思うんですけど、今の20代のミュージシャンは視野が広くてクリエイティブ全般に目線を向けていますよね。Vaundyさんとかもまさにそうだと思いますし。

森:めちゃくちゃそうですね。元貴もそこが天才的な人だし、(Teleの谷口)喜多朗もそこがすごくて。彼は今24歳なんですけど、ちゃんと周りが見えているというか、自己プロデュースがちゃんとできていて、自分が今どの立ち位置にいて、どういうことをするべきかわかってる。すごく考えてやってるんだなっていうのは本当に思いますね。

――Teleの楽曲で好きな曲、すごいと思う曲を挙げてもらえますか?

森:「鯨の子」が好きですね。深淵な世界観があって、ライブでたまにスピリチュアルな気持ちになるというか、ただ演奏してるだけじゃなくて、溶けるような感覚になるときがあるぐらい、あの曲は深いんですよね。喜太朗も歌い回しを毎回変えたりして、ライブごとに表情が違うので。

Tele | 鯨の子 - Music Video

――彼も音楽的にはいろんなルーツがあると思うけど、サイケデリックな側面も含めてフィッシュマンズを感じる部分があって、そこも魅力的だなと思います。

森:それこそ没頭感というか。Yogee New Wavesにもそれはすごくあるんですけど、喜太朗もフィッシュマンズがめちゃくちゃ好きなので、影響も受けてるんだろうなって。最近ライブの演出でもサイケな部分が増えてきたような気もしてますね。初期の頃はもっとバンドライクで、それはそれで大好きなんですけど、最近の曲はよりスケールを増していて、もっといろんな人に曲を届けたいっていう喜多朗の気持ちが曲に出てる気がします。

再集結したShiggy Jr.への想い「みんなの音楽的才能がすごい」

――6月のTeleの日本武道館ライブの翌日が、Shiggy Jr.にとっての5年ぶりのライブ(『Shiggy Jr. 11th Anniversary ONE MAN LIVE “LIFE GOES ON”』)でした。森さんの結婚式で久しぶりに4人が集まり、そこからの流れで再び動き出したそうですが、森さんはShiggy Jr.の再集結をどのように受け止めていますか?

森:ちょうどTHE 2が終わったタイミングでShiggy Jr.が復活したので、まずバンドがあることの嬉しさを感じますよね。今は事務所には入らずに、自分たちの運営でやっていて、6月のライブも昔からの仲間だけを集めてチームで全部やったので、それが同窓会的な感じですごく楽しくて。今のところ、Shiggy Jr.はめっちゃコンスタントに活動していく予定ではないんですけど、戻れる場所があるって恵まれているなと感じますし、あとはやっぱり、みんなの音楽的才能がすごいなって。しげ(原田茂幸/Gt)はかっこいい曲を書いてくるし、諸石(和馬/Dr)の演奏もいいし、池田(智子/Vo)なんて5年ぶりのライブにも関わらず全然衰えてなくて、そういうところも尊敬できるから、解散する理由はもはやないかなって。なので、Shiggy Jr.に関してはゆるりと続けていきつつ、何かチャンスがあったら頑張ってみようかなぐらいの感じ。バンドってそういう気軽な感じでやっちゃいけないものだと思っていたんですけど、そうでもないんだよなってことに気づけた感じですかね。

Shiggy Jr. / サマータイムラブ MUSIC VIDEO

――昔は「俺はこのバンドで頑張るんだ」みたいな考え方じゃないとダメだと思っていた?

森:そうですね。今は全員バンドで成功しなくても別に大丈夫というか、みんなそれぞれ仕事があって、独立できてる人たちが集まってやっているので、プレッシャーがないのが一番デカくて。やっぱりそのプレッシャーも解散することになった理由の一つだったりするので、それがなくやっているバンドはただ楽しくて、そういう環境があるのはありがたいです。(メジャーに進出した)当時は「売れなきゃ」っていうのが辛かったというか……売れるためにいろいろ選択をする中で、圧倒的なリーダーがいるわけじゃない民主主義なバンドだったから、みんな流れに流されて、そのうちにだんだん変になっちゃって、「あれ? 自分たち何してたんだっけ?」みたいになってしまったり。これからはもうそういうことは起こり得ないって考えると、めちゃくちゃいいですよね。

――4月にはEP『LIFE GOES ON』もリリースされていますが、久々の制作はいかがでしたか?

森:あれ、1日で全部録っちゃったんですよ。しげがデモを全部作って、それを聴いて、家で練習して、録音するっていう。Shiggy Jr.はずっとそうなんですけど、みんなスキルが上がってるから、わりとサクサク進められたかな……でも制作がどうこうというよりは、メンバーで集まってわちゃわちゃしながらレコーディングしてるのが単純に楽しかったです。

――森さんはもともとそういうことがお好きなのかなと。シェアハウスの話にしろ、吉祥寺でのセッションにしろ、憧れの真部さんと初対面で裸の付き合いになったことにしろ(笑)、もちろん軸には音楽があるんだけど、それを通じてコミュニケーションを取ったり、誰かと繋がって何かをやることがお好きなのかなって。

森:自分がサポートをやるのに向いていると思うのは、そういうところかなと思いますね。音楽に限らずだと思うんですけど、どの現場に行っても、その中で自分の面白い居場所を見つけるのが得意というか。誰とやっても面白くいたいなっていう気持ちがあるし、面白い存在でいたい。そういう意味でもサポートは楽しいですね。

――では最後に、今後の活動についてはどのように考えていますか?

森:ベーシストとしては、やっぱりいろんな人と演奏したいっていうのが常にあって、今までやったことないジャンルもやってみたいし、自分を面白がって必要としてくれるところだったらどこでもやりたいなと思っています。それと同時に、ベーシストとしての成長のためにも、もっと全体の音楽力を上げたいなと思っていて。それこそ真部さんはギターもできるしプロデュースもできるし作曲もするから、それがベースにも返ってきてるのは前からめちゃくちゃ感じてたので、僕もベース以外のこともやっていきたくて。プロデュースとかもチャンスがあったらやってみたいです。この前、yonigeのビルボードライブ公演(『Something Blue』)のサポートでピアノを弾いたんですよ。ピアノはもともとやっていたのもあって、それもすごく面白かったですし、音楽に関わることをもっといろいろやりたい。曲も少しずつ作っているので、より総合的な成長をしたいなと思っていますね。

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