Eveの壮大さと親密さが両立するライブ アジアツアー追加公演『文化』で再確認した“ぼくらの”居場所
5月から約1カ月にわたって行われたEveにとって初のアジアツアー『Eve Asia Tour 2024「Culture」』。6月9日、ツアーファイナルとして行われた横浜BUNTAI公演は、アジア各国を周る中で深めた自信と確信、また、日本のリスナーへの厚い信頼と再会の歓びが滲む、あまりにも感動的な凱旋公演だった。そしてこの夏、同ツアーの追加公演『Eve Asia Tour 2024 追加公演「文化」』が、8月20日、21日の2日間にわたって有明アリーナで開催された。本稿では、アジアツアーの締め括りとなった8月21日の公演の模様を振り返っていく。
今回、横浜BUNTAI公演からセットリストを大きく刷新。最初に歌われたのは、これまでのライブでは終盤に披露されることが多かった「廻廻奇譚」だ。驚きの幕開けに、イントロが鳴った瞬間、大きな歓声が会場全体から沸き起こった。超ワイドスクリーンを背にステージの中央に立ち、熱烈なロックチューンを堂々と歌い上げていくEveの勇姿に痺れる。観客が腕に装着したPIXMOBと乱反射するレーザーの輝きも相まって、ライブ冒頭にしていきなりクライマックスのような盛り上がりが生まれていた。
「帰ってきたぜ、東京!」「いけるかー!」という力強い呼びかけの後、「ファイトソング」へ。Eveは、ステージ中央から伸びた花道の先に設けられたセンターステージ(EveのInstagramのストーリーズの投稿で、「単眼猫型ギター」をイメージして制作されたセットであることが明かされていた)へ移動し、軽やかにステップを踏み、しなやかにターンをきめながら、四方の観客と至近距離で意思疎通を交わしていく。続けて、6月の横浜BUNTAI公演で初披露された「インソムニア」へ。すでに新しいライブアンセムと化していて、彼の情熱的なフィーリングが手に取るように伝わってきて胸が熱くなる。
「しょっぱなからすごい駆け足できちゃったけど、みんなついてこれてる?」「思い思いに、自由に楽しんでいってください」「今日はよろしく」という簡単な挨拶を経て、自らエレキギターを弾きながら「会心劇」「sister」を立て続けに披露。一際大きな歓声が巻き起こった「あの娘シークレット」では、2番サビ前の〈ゲームオーバーです〉を観客がばっちりと歌い上げる一幕も。Eveの表情こそ見えないが、ライブならではのコミュニケーションを心から楽しんでいる様子が確かに伝わってきた。
その後も、熾烈なバンドセッションを経て届けられた「逃避行」(この後のMCパートでは、バンドセッションから曲に入るタイミングを見失ったことを認め、その一連の流れを「ライブって感じだね」と振り返っていた)、Deu(PEOPLE 1)とのコラボ曲「フラットウッズのモンスターみたいに」、キタニタツヤとのコラボ曲「ラブソング」が次々と披露されるサプライズに満ちた展開が続く。熱狂のピークを何度も更新し続けていくような前半戦となった。
「座っていいですか」「みんなもよかったら座ってください」「アットホームな感じで聴いてください」という呼びかけの後に披露されたのは、アコースティックのアレンジが施された「トーキョーゲットー」だ。音数がグッと絞られたことで、歌のメロディの強さが浮き彫りになり、これまで何度も聴いてきた楽曲でありながら、まるでまっさらな新曲を聴いたようなフレッシュな感動が押し寄せてきた。Eveの歌とSUNNYが奏でるキーボードのみのアレンジで届けられた「闇夜」も、この日ならではの特別な名演で、丁寧に歌い届けられる切実さを湛えたメロディがいつにも増して深く心に沁みた。
スペシャルな展開はまだまだ続く。アコースティックコーナーを経て、ステージ上にオーケストラチームが登場。そして、ピアノとストリングスを主軸としたアレンジの「心海」が送り届けられる。そして、「今回のライブが決まった時に絶対やりたいと思っていました」という言葉を添えて、新曲「スイートメモリー」へと繋ぐ。鮮やかに躍動するストリングスサウンド、次第に熱を帯びていくバンドサウンドを推進力にして、Eveの凛とした歌声が高らかに響きわたる。その晴れやかなフィーリングを受け継ぐ形で、「群青讃歌」「花嵐」へ。ストリングスの調べが加わったことで、楽曲の世界がいつも以上に壮大に広がっていく。その一方で、いつだってEveの歌には、すぐ隣で語りかけてくれるような親密さがある。矛盾するようではあるが、壮大さと親密さが両立する点こそが、Eveのライブの素晴らしさの一つだと改めて思った。