西野カナの活動再開はなぜこんなにも歓迎されたのか? 他の歌姫とは異なる等身大の存在感
西野カナが7月5日に「EYES ON YOU」を配信リリースした。
「ついに西野カナが帰ってきた!」と嬉しくなった人も多かったのではないだろうか。2010年代のJ-POPシーンを彩ってきた彼女が、無期限の活動休止を発表したのは2019年の年明けのこと。「EYES ON YOU」は、9月18日にリリースされるEP『Love Again』からの先行配信曲であり、彼女の復帰第1作目となる。
一方、この約5年半で彼女にまったく動きがなかったかというと、そうではない。少し遡ると、2021年6月1日にはこれまでに発表してきた全楽曲がサブスク解禁された。6月3日に公開されたSpotifyのバイラルチャート『バイラルトップ50(日本)』(5月27日~6月2日集計分)では、TOP10に9曲がランクイン(※1)。あらためて、彼女の人気ぶりを実感することとなった。
そして先日、活動再開を発表するとX(旧Twitter)では“西野カナ”がトレンド入りし、喜びの声があふれた。多くの人が、彼女の帰りを待っていたのだ。
なぜ、彼女はここまで多くのリスナーに愛されてきたのか。浜崎あゆみ、宇多田ヒカル、安室奈美恵――平成を代表する女性シンガーは数多く誕生してきたが、彼女たちと異なる西野の魅力は“親しみやすさ”だろう。
西野の楽曲の特徴として、共感性の高いリリックが挙げられる。たとえば、映画『ヒロイン失格』(2015年)の主題歌で、彼女の代表曲のひとつとなった「トリセツ」(2015年)。繊細な乙女心を“取扱説明書”になぞらえて表現したユニークなナンバーだ。〈急に不機嫌になることがあります。/理由を聞いても/答えないくせに放っとくと怒ります。〉〈定期的に褒めると長持ちします。/爪がキレイとか/小さな変化にも気づいてあげましょう。〉――そんな相手からは気づきにくい、かと言ってなかなか口にはしづらいことを見事に代弁した歌詞は、そのインパクトも相まって大きく話題となった。
作詞をする際、西野は自身や友人の実体験を参考にすると過去に明かしている。そのため、彼女の楽曲はストーリーが分かりやすい。「Darling」(2014年)では〈ねぇ Darling 脱ぎっぱなし/靴下も裏返しで/もー、誰が片づけるの?〉〈ねぇ早く 出かけよう/待って!携帯忘れたかも/あー、今ため息ついたでしょ?〉といった日常の一コマが描かれた後に、〈そう きっとこんな毎日が/幸せなのかな〉と歌われ、サビでは〈あなたしかいない〉と、互いに許し合えるかけがえのない相手への愛情が表現されている。
西野といえば恋愛ソングのイメージが強いが、支えてくれる友人への感謝を綴ったという「Best Friend」(2010年)でもその“共感できる歌詞”は発揮されている。〈ありがとう/君がいてくれて本当よかったよ〉というキャッチーなサビに続き、〈何でも打ち明けられる/ママにも言えないことも全部〉〈へこんでる時は/真っ先にメールくれる優しさに/もう何度も救われて〉といった歌詞からは、ふたりの関係性が見えてくる。