細川たかしはネットミーム、山本譲二はメタル化……若者たちも魅了するベテラン演歌歌手の面白さ

氷川きよし、石川さゆり、藤あや子などのアプローチ

 前述したように、演歌は“日本の心”、“日本といえば演歌”という古くからの考え方がある。そしてメインリスナーも「年配」である。昨今の演歌界のムーブメントの鍵となっているのは、そんな固定されたイメージとのギャップである。

 デビュー時から第一線で活躍する氷川きよしは、キャリアとともに自身のパーソナリティをどんどん生かすようになり、ビジュアル系ロックを思わせるパフォーマンスにまで進化を遂げていった。なかでも特別枠で出場した2022年の『第73回NHK紅白歌合戦』での「限界突破×サバイバー」のステージは、氷川の人間性まで伝わってきて感動を覚えるものだった。デビュー曲「きよしのズンドコ節」(2002年)も含め、氷川は演歌に多様な表現をもたらした“平成以降のパイオニア”と言える。

 石川さゆりは、先に記述したマーティ・フリードマンとのコラボレーションだけではなく、石川さゆり with 奥田民生名義で発表した「Baby Baby」(2010年)で奥田のルーツの一つであるモータウンサウンド、椎名林檎が手がけた「暗夜の心中立て」(2014年)では椎名独特の妖しさや艶やかな世界観、布袋寅泰とはセッションという形で「天城越え」ほかをエキサイティングに演奏するなど、相手のフォーマットと絶妙に融合したコラボを次々実現させている。石川は、日本のロック、ポップスのアーティストたちの間でまさにアイコン化している。

 ほかにも藤あや子はSNSで公開している愛猫たちとの日々が「癒される」として親しまれ、さらに2022年には大胆なポージングやビキニショットも披露している写真集を発表。5月に子宮体がんを患っていることをXで公表した際には、ファンからもたくさんのエールが届けられた。もともと演歌歌手として人気が高かった藤だが、近年はSNSでのさまざまな発信を通して、若者にも愛される人物になった。

 「演歌とはこういうもの」という捉え方を利用し、たとえば細川たかしのように演歌を良い意味でパロディ化するなど、ギャップを含めた意外性あるアプローチで若者らからも親しまれるようになった演歌界。そういったことを入口に、演歌の新しい魅力が発見される可能性もかなり高いのではないだろうか。

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