欅坂46/櫻坂46、NMB48らに楽曲提供 ナスカ、グループや歌詞の魅力を最大限に引き出す作曲術

ナスカ、ヒット生み出す作曲術

 櫻坂46や乃木坂46といった坂道グループ、AKB48などに楽曲提供してきた二人組ユニット ナスカ。同ユニットがNMB48の最新シングル表題曲「これが愛なのか?」及び、カップリング曲「青春テトラポット」を手がけている。

 ユニットとしてメジャーデビューを経験し、作家としてのキャリアにおいてアイドルグループへの初提供曲となった欅坂46「エキセントリック」でヒットを記録。それぞれのグループの特性と秋元康の歌詞の魅力を引き出す楽曲の数々は多くのファンから支持を集めている。

 リアルサウンドでは、山内パンプキンとだいし君にインタビュー。バンドを出自に持つユニットならではの制作プロセス、二人組だからこそ持てる客観性など、名曲を生み出してきた手腕を紐解いていく。(編集部)

NMB48 特集

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作家としての転機になった欅坂46「エキセントリック」

欅坂46 『エキセントリック』

ーーナスカとして楽曲制作する際、どのようなプロセスを経て完成させていくんでしょうか?

山内パンプキン(以下、山内):楽曲によってやり方は違ってくるんですけど、大まかには「こんな曲をやろうか?」というアイデアを持ってきた人が指揮をとりながら、そのアイデアを共有して一緒に作り上げていくことが多いです。

だいし君:そうですね。基本的にはイントロ、AメロやBメロやサビもアイデアを持ち寄ったほうがイニシアチブを持って決めることが多くて、相手の意見も尊重しながら進めています。

ーーナスカは作曲のみならず、自分たちでアレンジまで手がけることも少なくないですが、例えばほかのアレンジャーさんがアレンジを担当する際、デモ音源はどこまで完成したものを渡すんでしょう?

山内:基本的には、ほぼ仕上げたものをデモで提出することが多いです。ディレクターさんによってはそのままのアレンジで、ナスカのチーム名義で通すこともあれば、そこからディレクターさんがほかのアレンジャーさんにご依頼することもあります。

ーー楽曲制作をユニットとして手がけることのメリットは、おふたりはどういうところだと考えていますか?

山内:自分ひとりで完成させたものに対して、他者に聴いてもらうことで自分にはない感想をもらえて、それがまた新たなアイデアにつながっていく。自分ひとりの力だけでは到達できない部分まで踏み込んで曲を作れるところが、ユニットでやるメリットかなと思います。

だいし君:「ふたりでやれば曲が倍作れるんじゃないか」と思うかもしれませんが、お互いが納得した曲しか進行しないので、作れる曲がひとりでやるよりも半分以下になっている感覚もあって。ただそのぶん強度のある曲が作れているとも思っています。

ーー昨今、コライトという形で複数のソングライターで1曲を作り上げる形も一般的になりつつありますが、ナスカの作曲スタイルはコライトともまた異なるものなんでしょうか?

山内:違うかもしれません。コライトの場合はそれぞれ役割が異なっていたりするかもしれないですけど、ナスカの場合はふたりともすべての工程を担当するので。そういう意味では、バンドの曲作りに近いんですかね。

ーーナスカ自体がもともとバンドからスタートしているので、当時からのバンドマン気質みたいなものも影響しているのかもしれませんね。

山内:この形でずっと続けてきたから、途中からやり方を変えることがなかなか難しくて。でも、今いろいろな曲作りの方法を試しながらやっています。

ーーちなみに、おふたりにとっての音楽ルーツはどういったものでしょう?

だいし君:僕はUKロックを思春期に聴きまくっていて。そのへんからの影響は、多少なりともあるんじゃないかと思います。

山内:私は好きな曲ができたら1日中それしか聴かないような音楽の楽しみ方をしてきて。わりと暗い曲ばかり聴いていて、UKロックも好きで、あとは映画音楽……それこそ歌モノ、インストに限らず、聴いただけで映像が浮かんでくるような、ドラマチックな展開やコード進行が好きで、そういう音楽からの影響も強いのかもしれません。

ーーなるほど。では、ナスカとして最初にアイドルグループに楽曲提供するようになったきっかけは?

だいし君:それはもう秋元康先生の存在が大きくて。ナスカはバンドとしてスタートしたんですが、途中でメンバーが抜けてこのふたりだけになってしまい、この先どんな音楽活動をしていこうかと模索していく中で、作曲家としての活路を見出し始めたんですが。ただ、そこに対してもちゃんと進んでいけるのか自信があったわけではなくて。いろんなやり方を探っていた中で、「秋元先生と1曲だけでもいいから作ってみたい」という目標ができました。

山内:「最後1年だけチャレンジしよう」ということになり。それが欅坂46の「エキセントリック」だったんです。

ーーそう考えると、「エキセントリック」という楽曲はナスカにとって大きなターニングポイントだったわけですね。それ以降、アイドルグループの楽曲を数々手がけるようになりますが、曲作りへの向き合い方や音楽そのものへの向き合い方、関心の向け方に変化を感じることは?

山内:やはり、秋元先生と一緒に曲を作らせてもらったことが一番大きくて。仮歌のやり取りの中で本当に何度も歌詞を書き直してくださって、最後の最後まで曲を良くしようと真摯に向き合っていて。こだわりを持って歌詞を作り上げていく姿に、自分たちも常にこうありたいと思ったし、プロの作品作りを間近で味わえたことで自分たちの曲との向き合い方にも大きな影響を及ぼしたと思います。

だいし君:アイドルに提供することってもっとドライな感じなのかなと思っていたんですけど、「エキセントリック」を提供させてもらったときにメンバーの方が曲を気に入ってくださって。そういう声が僕たちにまで伝わることで、よりグループやメンバーのことを考えるようになったことは、その後の曲作りにも影響したと思います。僕たちはあくまで外部の人間なんですけど、当事者のような思いで曲を作っていけるようになったことは、一緒にお仕事させていただいて以降より強く感じています。

ーー例えば、楽曲をブラッシュアップさせていく中で、届いた歌詞に触発されてメロディや曲の流れが変わることもあるんでしょうか?

山内:秋元先生の歌詞がより良いメロディや符割りを引き出してくれることがあるので、どんどん良い方向に変わっていきます。

だいし君:以前ナスカとしてユニバーサルからCDを出させてもらったとき、当時のディレクターさんが「いい歌詞っていうのは、歌詞が上がってきたときに縦にバーっと読めるんだよ」と言っていて。その頃は正直ピンと来ていなかったんですけど、それが「エキセントリック」の仮歌入れで初めて秋元先生からいただいた歌詞を確認したときに、本当に上から下へ、縦にドーンと読めて「これか!」と初めて実感したんです。言葉がリズムを持っているから、スルスルと進んでいく感覚が強いというか。特に「エキセントリック」はメロディなのか語りなのかラップなのか、そういうテイストが強かったこともあって、秋元先生の言葉のリズムと曲が持つグルーヴが化学反応を起こして感動したんです。この感覚を味わいたくて、今も曲を作っているところはあると思います。

ーーナスカはこれまでに乃木坂46やAKB48などにも楽曲提供をしていますが、アイドルグループへの楽曲提供にあたってどんなことを大事にしていますか?

山内:「グループの魅力が引き出されるような楽曲はなんだろう?」ということを一番に考えます。

だいし君:加えて、コンペの場合は具体的に「こういうイメージの曲が欲しい」と、リファレンスとなるものを提示されることもあるので。それまでのグループのカラーを踏襲しつつ、その中でいただいた条件を踏まえながらさらに自分たちらしさでグループの魅力を引き出せれば、ということを考えています。

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