欅坂46「黒い羊」は欅歌謡の金字塔に ナスカとの強力タッグが生み出した“自己完結”の歌

 カップリング曲で試行錯誤を繰り返してきた欅坂46×ナスカの強力タッグが、ついにシングル8枚目にして打ち立てた欅歌謡の金字塔。

欅坂46『黒い羊』(TYPE-A)

 欅坂46の8thシングル表題曲「黒い羊」について、まず最初に思い浮かんだのがこの表現だった。ラジオ解禁の時点で作曲者は公表されていなかったが、一聴してすぐに見当がついた。荒れ狂うベースの響き、記憶がフラッシュバックするようなピアノのあて方、展開の多さ、曲のそこかしこに漂う陰鬱な雰囲気に、これまでナスカが欅坂46に提供してきた「エキセントリック」や「避雷針」といった楽曲のエッセンスをひしひしと感じる。

 ”黒い羊”とはのけ者、厄介者を意味する言葉だ。集団に馴染めない者はその集団から排除されていくという人間の残酷な一面を切り取ったテーマである。しかも、センターを務める平手友梨奈がこれまで見せてきたテレビ番組でのひとり笑わない姿や、俯いたパフォーマンス、そしてそれによって巻き起こる炎上や新センター待望論によって、彼女自身も同じような心理の餌食になっている側面があるため、まさに今現在の欅坂46を取り巻く状況を捉えたテーマ選びと言えるだろう。

 つまり、人の心の暗い部分を抉り出す曲のテーマが、欅坂46というグループそのものに起きている現象と渾然一体となり、虚実が入り乱れ、ある種のドキュメンタリー作品のようになっている。この構造があるからこそ、この曲はいわゆる”当て書き”の枠を飛び越えて、リアルな現実の問題として聴く者の心を刺激するのだ。

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