FARMHOUSE「distance」、Xでの拡散でバイラルチャートイン “距離”から広がるストーリーへの共感
Viral Chart Focus
Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの4月24日付のTOP10は以下の通り(※1)。
1位:808「You」
2位:Jaxomy,Agatino Romero,Raffaella Carra「Pedro」
3位:ILLIT「Magnetic」
4位:ME:I「Click」
5位:FARMHOUSE「distance」
6位:LET ME KNOW「偽愛とハイボール」
7位:Chappell Roan「Good Luck, Babe!」
8位:Miyauchi「Swag」
9位:BABYMONSTER「SHEESH」
10位:トゲナシトゲアリ「雑踏、僕らの街」
今週は、4月23日付のデイリーバイラルチャートで初登場3位にランクインし、以降10位以内をキープしているFARMHOUSEの「distance」を取り上げる。
3月31日にデジタルリリースされた「distance」。HIPHOPファン/リスナーの間では話題になっていた楽曲だが、とある音楽リスナーが4月13日にX(旧Twitter)にて“曲が始まってわずか33秒で食らった神”というコメントとともに「distance」のMVを共有。その投稿が4月29日現在、約2.8万のいいね、約2500件のリポスト、ブックマーク(保存)数は6000件以上と、驚異的な数字を叩き出している。この現象は「distance」が、まさに“神曲”であったことを実証していると考察する。
FARMHOUSEは、埼玉県越生町出身の2MCからなるラップグループ SUSHIBOYSのメンバーだ。埼玉県入間郡に位置する越生町は、池袋から東武東上線に乗り約60分。関東1都2県の中にはあるが、埼玉県の奥にあり群馬に近く、都心からはかなりの“distance”がある。そんな、都心には行けるものの、わざわざ行かなければならないこの町から生まれた独特の視点で描かれたリリックと、変化自在で高いスキルのラップが特徴のSUSHIBOYSの存在は、2010年後半以降の日本のHIPHOPシーンを作ってきたグループのひとつと言っていいだろう。
2017年にリリースされたSUSHIBOYSの1stアルバム『NIGIRI』は、Apple Musicの「今週のNEW ARTIST」に選出されている。越生町の「町長になりたい」(※2)と話すFARMHOUSEが初のソロ音源を発表したのが2018年。これまでに「distance」を含めシングル5作品、アルバム2作品をドロップしている。「distance」は、そのタイトルのとおり“距離”がテーマ。メランコリックなフレーズがループする中、生活音のような音が入ってくるバックトラックの上で、タイトなフレーズを、間を大事にしながらも次々に繰り出すラップのコントラストがクールな1曲だ。ラップが楽曲そのもののリズムを司る存在になっているあたりは、FARMHOUSEのお得意技。後半に向かい、子音を強く発音しながらも、母音を低音で響かせるスキルなど、ラップの違いでストーリー性を出しているのも見事である。最初は小学校、中学校、高校、大学、会社までの距離をかかる時間で淡々とラップしていく。徒歩、自転車、電車、バイク、車……と、通学通勤手段の変遷、そして呟くように挟み込まれる“遠い”という言葉など、彼が育った環境を想像するのには十分な言葉が並ぶ。