小林聡美×小泉今日子はどんなコンサートを画策する？ 古き良き“マニアック”な昭和歌謡の魅力
「美空ひばりみたいな声だった」（小泉）
ーーお2人は知り合ってからすごく長いんですよね。
小泉：私たち10代からドラマとかで共演していたんですよ。最初は16歳ぐらいのときで、私のいとこ役だったんだよね。
小林：時代劇でね。2人、学年も一緒ですし。
小泉：そこからはそんなに共演はなかったけど、大人になってから舞台やドラマでときどき一緒になる機会が増えて。今回もこういうふうに会えるのは恵まれてますよね。
ーーそれぞれにとって、どういう存在なんでしょうか？
小林：いやー、もう本当に、生きててくれてるだけで安心（笑）。本当に頼りがいのある存在です。
小泉：同じように私も（小林のことを）思いますけどね。この年代のミュージシャンや役者ってすごく多いんですけど、同級生の女性は少ないんです。でも、私は中学生の頃に映画『転校生』などで（小林を）見てるから、ずーっと好きで追いかけている人でもあるわけ。だから活動してくれているのがうれしい。あと、私とは生き方が全然違って、きちんと慎重に毎日を丁寧に生きてるんですよ。そういう姿を見てると、自分を「どうどうどうどう」と落ち着かせることができるようなところがある。
小林：でも私から見たら、ガーっと先に行ける小泉さんは、やっぱり憧れだったりするわけですよ。
ーーそういう意味では、いい組み合わせなんでしょうね、このお2人は。
小泉：そうですね。だから舞台とかにもこの2人で呼んでもらえることがあるのかも。
小林：（キャラが）被らない（笑）。
小泉：絶対に被らないから。
ーー小泉さんは小林さんが歌がうまいことは以前から知っていたんですか？
小泉：はい。映画のなかでちょっと歌っていたのは見ていたし、もともとうまいのも知ってるんです。共演したドラマの撮影の打ち上げとかで最後にカラオケになったりすることがよくあるんですけど、そういうときも2人でピンク・レディーメドレーを歌ったりしてました。
小林：ちょっとー！ 私はそんなにうまくないですよ。
小泉：うまいよ！ 今回も、キー合わせしていたら（小林の声域の）あるゾーンが、本当に美空ひばりみたいな声だった。
小林：それはすごいね（笑）。
小泉：ASA-CHANGと一緒に感心してたんだから。「本当にひばりさんみたいなゾーンがあるね」って。
ーーますますコンサートが楽しみになります。あらためて演出家としての小泉さんにお聞きしますが、今回の演出で、小林さんの歌をどうやって輝かせるか、何か気をつけているところはありますか？
小泉：俳優として長いキャリアを積んでいる方ですけど、小林聡美としてコンサートをやるのは本当に初体験でしょ？ 私は子どもの頃から歌手をやってきたけど、大人になってそれを初めてやるという立場だったら、何から何までわからないことだらけなのかも。だから、ちょっとした逃げ道じゃないけど「チャッピー小林とツタンカーメンズ」という屋号を用意して、「（歌手を）演じることもできるよ」という状況を作りました。お客さんが（小林を）見て「これは演じてるのかな？ 素なのかな？」をいろいろ楽しめるようにね。「チャッピー小林と東京ツタンカーメンズ」だったら、しっとりとした舞台はお客さんが想像しようがないでしょ。まんまとうまくいった感じ。
ーーあらためて小林さんにお聞きしますが、コンサートで歌うことは舞台の演技とはまったく違う体験になりますか？
小林：歌うために、声の出し方とか、呼吸の仕方をまったく経験のないところから積み上げていくのは、私には新しいことだらけです。
ーーもちろん演劇にもお客さんはいますけど、コンサートのお客さんとは相互作用というか、立って踊ったりする熱狂やコール＆レスポンスもあります。
小林：いや、みんな楽に聴いてもらっていいですよ（笑）。
ーーそのあたりは、やはり小泉さんの経験が役に立ちそうですね。
小泉：キー合わせをしていても、「歌いやすい声」と「聴きやすい声」が少し違ったりするんですよ。
小林：その違いは教えていただきました。
小泉：あとは、舞台って、作ったものを観客に見ていただくという点ではコンサートと通じるけど、初めて私が舞台に立ったときはすごく違和感を感じたんです。ライブってコミュニケーションだし、お客さんとの対話に近い。でも舞台では、それを無視するというメンタルをもうひとつ作らなくちゃいけないんだと思いました。これから聡美さんにはその逆の出来事が起こるわけです。
小林：そう。私は今までお客さんがいない前提でやってきたので。目の前にいるお客さんにどうアプローチするかは謎というか、手探りでやっていかないといけないですね。
ーー黄色い声が飛ぶかもしれませんしね。
小林：飛びますかね？ どうでしょう？
小泉：手拍子や拍手が来たりしますよ。
小林：あとは、歌い続けるための体力が持つかどうか、も問題ですね。小泉さんに聞いたら「全然疲れないよ！ 逆に元気になる」という答えだったので、この人は参考にならなかったな、と（笑）。
ーーそういうアドバイスも含めて、演出だけでなく、好きな曲を歌うことへの背中を押しているのが、今回の小泉さんの役割だったりするんでしょうね。
小泉：そうですね。「歌うのは楽しいよ」っていう感じ。人が何か新しいことをやるときにいちばん悲しいのって、何も反応をもらえないことじゃないですか。だから、いいところも悪いところも聡美さんには全部話したいって感じです。
小林：押してもらったり、引っ張ってもらったりしてます！ 今後厳しい指導があったとしても、それもうれしいです！
ーーこれだけキャリアを積まれて、まだ初めての楽しみがあるって素晴らしいことですよ。
小林：ありがたいことです。
小泉：ね！ 体のなかから活性化しそう！
ーーそして、これが最初ですけど、すでに「クセになるかも」という予感もないですか？
小林：そうなったら面白いですよね。今の段階でも初めての体験がすごく多くて新鮮なので。
小泉：たとえば、今回のコンサートがきっかけで「歌うんだ」って知られて、誰かのライブに呼ばれて1曲歌うとか、そういう場面は増えるかもね。
小林：そういうのは楽しいよね。
ーーさらには、「小林聡美は昭和の面白ソングの研究家である」ということが知られるかもしれません。
小林：今回、初めて「あ、これは研究に似た活動だったんだ」と思った（笑）
小泉：しかも、研究してるのは「シティポップ」とかじゃないからね（笑）。そういうゾーンの研究家としてのインタビューがきたらどうする？
小林：ちゃんと答えられるようにまとめとかなきゃね（笑）！
『小林聡美NIGHT SPECTACLES チャッピー小林と東京ツタンカーメンズ』
2024年4月6日（土）13:00開場 14:00開演／17:00開場 18:00開演
2024年4月7日（日）13:00開場 14:00開演／17:00開場 18:00開演
会場：神奈川・横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール（神奈川県横浜市中区新港1丁目1-1）
【出演】
小林聡美
東京ツタンカーメンズ
ASA-CHANG（Perc.）、FUMING（Key.）、細川圭一（Gt.）、岩川峰人（Ba.）、三星章紘（Drs.）、上野まこと（Sax.）、河原真彩（Tp.）、瀧本尚史（Tb.）、真城めぐみ（Chor.）、Kiwa（Chor.）
GUEST：阿部サダヲ
【STAFF】
演出：小泉今日子
音楽監督：ASA-CHANG
舞台監督：ウシヤマノボル
照明：鈴木博史
音響：橋本木生
衣装：堀越絹衣
ヘアメイク：北一騎
宣伝写真：三浦憲治
宣伝デザイン：坂本志保
制作協力：大人計画／モチロン
企画・製作・主催：WOWOW
【チケット】
￥11,000（全席指定／税込）
チケットの発売情報は公式サイトからご確認ください。
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