yasu、ボーカルとしての凄さと稀有な声 Janne Da Arc解散から5年目の春に向けて

 Janne Da Arcの解散が発表されたのは2019年の春――もうすぐ5年になる。こればかりは時間の感覚が麻痺し、長いとも短いとも感じられる、なんとも不思議な感情に陥る人も多いのではないだろうか。今だからこそ、Janne Da Arcのボーカリストであり、Acid Black Cherryとしても大きな功績を残してきたyasuの作り出す音楽の魅力をあらためて紐解いてみたい。

 筆者の立場を明らかにしておくと、国内の音楽ジャンルにおいてヴィジュアル系だけはあまり明るくない。Janne Da ArcやAcid Black Cherryの熱心なファンというわけでもない。だが、積極的に音楽に触れる生活をしていると彼らの音楽は必然的に耳に入ってきたし、その楽曲のいくつかは印象深く心に刻まれた。何よりyasuというボーカリストは、その稀有さゆえに、心に残っている存在である。

 いちばんの魅力は、やはりその歌声だ。透明感が美しく、繊細なガラス細工のような響きを持ちながらも、時に激しく力強い鋭利な刃のような側面も見せる。その透明度ゆえにどこかで聴いたことがあるような響きの声に感じられるのだが、実のところ他のどこでも聴いたことがないし、誰にも似ていない。ここにyasuのボーカリストとしての凄まじさの一端を感じるのだ。

 その美しい声は、彼の音楽を幅広い層へ拡散させる大きな力を持っている。ロマンチックな音楽世界と美しさをもって世を夢中にさせてきたのはもちろんのこと、V系アーティストには珍しいほどの男性ファンの多さは、広く知られるところである。

 Janne Da ArcにしてもAcid Black Cherryにしても、音楽性の幅広さ、手数の多さはいちアーティストの範疇とは到底思えないほどである。高度な技術に加えて、多くのフックで広範囲に訴えかけるものがあるのだから、いずれかが琴線に触れ、そこから彼の歌声/音楽的世界観に魅了されていく道程は想像に難くない。年代や性別、立場を超えて支持されるのも当然だ。

 Acid Black Cherry「イエス」などに代表されるロマンティックなラブソングや、物語性を携えたJanne Da Arcの「月光花」「Fantasia」といった方向性を持つ一方で、妖艶さと激しさを併せ持つAcid Black Cherry「ピストル」やJanne Da Arc「ヴァンパイア」「Heavy Damage」といった泥臭い初期衝動を感じさせる叫び、Janne Da Arc「霞ゆく空背にして」「FREEDOM」のように爽やかなサウンドのなかにメッセージ性が潜んでいるのも、多くの支持を得る理由だろう。もちろん、歌詞世界に潜むユーモアや暗喩といった遊び心は言うまでもない。

Janne Da Arc - 月光花
【Premium】Acid Black Cherry - ピストル

 随所でポップなメロディラインが解放感をもたらすのも、彼の音楽の特徴のひとつと言える。Janne Da Arcを例にとると、「DOLLS」の前奏やサビ前、「will~地図にない場所~」のサビのメロディとサウンドの厚みなどがわかりやすいかもしれない。全編にわたって激しさや切実さを表現していても、どこかで必ずカタルシスを感じられ、それがなんとも言えず癖になるのだ。何よりyasuの美しく力強いボーカルは、その解放感を表現することに長けている。彼の持つ大衆性が彼自身の個性や独特な世界観を侵食することなく共存しているということも、yasuという才能の稀有さを示しているように思う。

Janne Da Arc - DOLLS

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