Mrs. GREEN APPLE、Ado、Rockon Social Club……『紅白』初出場組、見逃せない注目ポイントを総括

 毎年大晦日に放送される『NHK紅白歌合戦』(以下、『紅白』)は、昭和時代から続く年末の風物詩のひとつだ。近年、新しい切り口で毎年“演出のみどころ”をしっかり作ってきている印象がある『紅白』だが、本年の『第74回NHK紅白歌合戦』みどころは、じつに多彩である。まずは初出場組が多いこと、歌唱曲にアニメの主題歌やテーマ曲の多いこと、さらにTikTokなどのSNSでバズを起こしヒットした曲を歌唱するアーティストが複数入ってくるようになったこと、顔出しをせず活動するアーティストが複数組出場するなどがあげられるだろうか。これは、ヒット曲の在り方が、多様化している証拠と言っていいだろう。

アニメ映像と主題歌による華やかな演出に期待

MAN WITH A MISSION×milet「絆ノ奇跡」Music Video

 まずは、アニメの主題歌やテーマ曲に起用されてヒットしたパターンだ。2019年の『紅白』で人気アニメ『鬼滅の刃』の映像を使ったコラボレーションは、放送局の垣根を越えた演出として話題になった。以降、5年連続でアニメ『鬼滅の刃』の主題歌・テーマ曲(映画も含む)が『紅白』で歌唱されている。本年は『「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』オープニング主題歌「絆ノ奇跡」(MAN WITH A MISSION×milet)とエンディング主題歌「コイコガレ」(milet×MAN WITH A MISSION)が、同アニメの映像とともにメドレーで披露される。

 さらに『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」のオープニング曲であるキタニタツヤの「青のすみか」でも、同アニメの名シーンのスペシャル映像が登場。映画『THE FIRST SLAM DUNK』(2022年)エンディング主題歌となった10-FEETの「第ゼロ感」は、同作と『FIBA バスケットボール ワールドカップ 2023』の名シーンの映像とともに披露されるという。

 TVドラマ主題歌やアニメ主題歌は、それだけで耳にする機会が多く、これまでもヒットが生まれやすいところではあった。ここ数年、アニメ主題歌でのヒットが特に目立つのは、映像と楽曲、歌詞のシンクロ率の高さと、スタイリッシュな映像表現が大きく影響していると考える。アーティスト側は、原作や脚本ありきで楽曲を作り、登場人物やストーリーに寄り添った歌詞を書く。アニメのオープニング映像やエンディング映像は、楽曲ありきで制作される。これは、クリエイター同士が“原作”という共通のファクターを通して、コラボレーションしている状態に近い。ゆえに、楽曲と映像のシンクロ率も高くなる。

 例えば「絆ノ奇跡」の〈我が命/果てようとも/繋いで行こう〉というオープニング映像の後半部分は、“刀鍛冶の里編”のメインキャラクターの戦いのシーンで構成されているが、続く〈繋いで行こう〉というワンフレーズで刀鍛冶たちが一瞬登場し、最後のワンフレーズ〈奇跡を〉で主人公の必殺技の描写につながる。これだけでも本編のテーマが伝わってくる。

10-FEET – 第ゼロ感(映画『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌)

 映画『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌の「第ゼロ感」を担当した10-FEETは、楽曲の作詞・作曲をメインで手掛けるTAKUMAが、武部聡志とともに劇中音楽も担当。主人公の心情やバックボーンを深く知った上で楽曲を書き下ろした結果、映像とのシンクロ率が上がったのだと考える。曲の前半に〈それが最後になる気がしたんだ〉という歌詞が4回出てくるが、ここが主人公の生い立ちや葛藤と重なり、映画のエンディングを飾るに相応しい曲になった。

 前述した楽曲と映像のシンクロ率は、大胆に言ってしまえば、アニメの映像が楽曲そのもののMVのようで、ここが視覚と聴覚の両方にインパクトを残しやすい。テレビでのパフォーマンスにおいても、ダイナミックな演出が予想されるだけに、アーティストのファンはもちろん、アニメ/原作ファンも盛り上がることになりそうだ。

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