倉木麻衣、サブスク解禁を機に聴きたい10曲 平成~令和と駆け抜ける“歌姫”の軌跡

倉木麻衣、歴代楽曲で振り返る歌姫の軌跡

 来年2024年にデビュー25周年を迎える倉木麻衣が、25周年イヤープロジェクトの第1弾として、12月8日のデビュー記念日に、自身の楽曲、全439曲をサブスクリプション音楽配信サービスで解禁した。倉木麻衣といえば、長年に渡り『名探偵コナン』シリーズのアニメや映画のテーマ曲を担当していることでも広く知られており、2021年に歴代『名探偵コナン』テーマ曲のみをサブスク解禁していた。今回は、1999年リリースのデビュー曲「Love, Day After Tomorrow」から2023年10月28日にデジタルシングルとしてリリースされた「Unraveling Love ~少しの勇気~」までの全曲が待望のサブスク解禁された形となる。

 倉木は1999年12月8日、シングル『Love, Day After Tomorrow』でデビュー。同曲は2000年3月にミリオンを記録。同曲が大ヒットする中、2000年3月15日に2ndシングル『Stay by my side』をリリース。オリコン初登場1位となったこの曲と前述した日本デビュー曲がオリコンTOP10に2作品同時ランクインした。さらに同年4月に発売したシングル曲「Secret of my heart」は初めて『名探偵コナン』のエンディングテーマに起用され、2度目のミリオンヒット曲に。デビューから駆け抜けるように、時代を代表する女性シンガーとなった。

 本稿では、倉木麻衣の楽曲の中から『名探偵コナン』関連の楽曲を除き、今聴きたい名曲を時代ごとにピックアップ。R&Bを基調とした楽曲で日本とアメリカにてほぼ同時期にCDデビューを果たし、そこから日本の歌姫として音楽性を広げていく倉木の足跡を辿っていきたい。

 「Love, Day After Tomorrow」(1999年)は、リリース当時にトレンドだったブラックミュージックのフレーバーが強く香る裏打ちのバックトラックがグルーヴィーなミディアムチューン。普遍的なビートとメロディは今聴いても魅力的に響く。倉木は最初の一音は低音、そのすぐ後に高音に移行する高低差のあるメロディをシームレスに響かせている。途中の転調を機に、低音のブロックに入るがここでは地声の高音も披露するなど、歌声のレンジの広さはデビュー時から発揮されている。当時17歳、大人と子どもの狭間にある無垢な歌声で、大人の恋愛模様を歌うというギャップも「Love, Day After Tomorrow」の聴きどころだ。

 「happy days」(2000年)では、音譜に音を置きに行く淡々としたボーカルアプローチゆえ、倉木の持ち味のひとつでもある高音の母音抜きの巧さが際立つ。また、1番サビの後の間奏でガラッと転調する展開は斬新だ。倉木麻衣はデビュー時から自身で全曲の作詞を手がけているが、10代としては少し背伸びしている感のある「Love, Day After Tomorrow」とは変わり、「happy days」は転校を機に離れ離れになった親友を思って制作された楽曲なだけに、歌詞からもピュアな心象風景が立ち上がる。ライブで今も大切に歌い続けている1曲であり、感情の乗ったパフォーマンスは音源とはまた違う輝きを放っている。

 NHK連続テレビ小説『オードリー』の主題歌「Reach for the sky」(2000年)は、朝に放送されるドラマに相応しいミドルバラード。大きな展開や盛り上がりが用意されているわけではないが、じんわりと胸に広がるような温かみのある曲調は、当時ミステリアスな雰囲気を帯びていた倉木の新しい一面を覗かせた。タイトルの通り、空へとぐんぐんのぼっていくような伸びやかな歌声は讃美歌のような空気をまとっており、ほっと胸を撫で下ろすような癒しが感じられる。

 「冷たい雨」(2001年)は、冒頭のハミングのようなアドリブ、トラックのニュアンスを大事にした歌い方など、ボーカリスト 倉木麻衣のチャレンジが窺える楽曲。アメリカの音楽制作チーム“Cybersound”が主にアレンジを手がけていた同時代の楽曲はレンジも広く、バックトラックも海外のR&Bを意識しているものが多いが、「冷たい雨」は楽曲のテーマも含めて特にクールな方向性に舵を切った印象。太くうねるようなベースラインとシンプルなビートでサウンド全体はダウナーな質感だからこそ、倉木の透き通るようなボーカルが際立っている。

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