大神ミオ、『Night walk』で“夜”をコンセプトに描いた想い 音楽活動を始めた理由や制作への意欲
ホロライブ所属の大神ミオが、1stアルバム『Night walk』をリリースした。今作は“夜”をテーマに制作されたコンセプチュアルな作品ではあるが、DECO*27、堀江晶太、川江美奈子、MIMIといったコンポーザーをはじめ、自身で作詞作曲に挑戦した楽曲もラインナップされた、“歌手 大神ミオ”の魅力を多角的に見せるアルバムとなった。
ホロライブゲーマーズに所属し、配信活動をメインに行っていた大神はなぜ音楽活動をスタートし、『Night walk』という作品に辿り着いたのか。今作の制作背景を紐解きながら、アーティストとしての一面や彼女の人となりを掘り下げていきたい。(編集部)
椎名林檎、宇多田ヒカルら大神ミオのルーツミュージック
ーー大神さんが音楽活動を始めた理由は?
大神ミオ(以下、大神):子供の頃から歌うことは好きだったんですけど、歌手になりたいと考えたことはなかったですし、ホロライブに入ったときも配信活動がメインという形だったので、正直、こうして音楽活動を行うことになるとは思ってもみませんでした。でも、ホロライブ全体でアイドル的な取り組みが本格化していくなかで、初めてステージに立ってカバー曲を歌ったときに(2020年1月に豊洲PITで開催された『hololive 1st fes.「ノンストップ・ストーリー」』で「夜もすがら君想ふ」を歌唱)、自分が想像していたよりも遥かにたくさんの人が楽しみにして聴いてくれていることを舞台上から感じまして。そのときに、ファンのみんなによりかっこいい姿を見てもらいたい、そのために自分のオリジナル楽曲を作りたい、という気持ちが芽生えました。
ーー大神さんは2021年8月に2曲のオリジナル楽曲「Howling」と「わんわん!わおーん」を同時にリリースされましたが、「Howling」はアップテンポのロックナンバーで、まさにかっこいい曲調でした。
大神:「Howling」は水樹奈々さんのようなかっこいい姿を見せたいという思いで制作しました。ただ、当時は(歌唱するVTuberの)キャラクター性を見せる楽曲が流行っていたので、自己紹介的な電波ソング風の楽曲として「わんわん!わおーん」も同時に作ったところ、「Howling」と雰囲気が違いすぎて、大神ミオの本質が見えなくなってしまったかなと思っていて(苦笑)。なので今回のアルバムは、自分の音楽性を定めるためにも、あらかじめ方向性をしっかりと決めたうえで作りました。
ーーちなみに大神さんは普段どんな音楽を好んで聴かれるのでしょうか。
大神:主にJ-POPを聴いていて、特に好きなのは椎名林檎さん、宇多田ヒカルさん。最近だと優里さんもバラードが映える歌声をされていて好きです。基本的に憂いを帯びていたり、お洒落な雰囲気の楽曲、心に沁みるタイプの曲をよく聴きますね。自分は歌詞で自分の中の気持ちを表現するのが大事だと思っていて、それは今回アルバムを制作するなかで難しさを感じた部分でもあるのですが、いま名前を挙げた方々は、そういった自分の体験や感覚を歌詞で表現するのがすごく上手だと思います。
ーー自分の心に特別残っている歌詞や楽曲があれば教えてもらえますか?
大神:椎名林檎さんの「ありあまる富」ですね。〈僕らが手にしている 富は見えないよ〉という歌詞で始まる曲なんですけど、平たく言うと「富というのは物質だけではなくて、君は目に見えない素晴らしいものをたくさん持っているんだよ」という歌だと感じていて。その富は誰も奪うことができないし、壊すこともできない。すごく沁みる歌詞だなあと思います。
ーー大神さんはどんなことに“目に見えない富”を実感しますか?
大神:いま自分の周りにいる人たちとの繋がりもそうですし、自分がつらくなったときにすぐ相談できたり、慰めあったり、アホみたいに笑いあったりできる友だちとの関係性というのは、お金では得られないものだと思うので、本当に目に見えない大切なものばかりだと感じています。自分は基本的に一匹狼な気質なので、あまり人に依存するタイプではないんですけど、やっぱり人間は1人では生きていけないなと感じていて。ホロライブはすごいなあと思うのが、みんな仲が良いんですよ。1人が辛いとなると、誰かが支えてくれる環境なので、その意味では自分も精神的にかなり支えてもらっているし、心が折れてしまったときに、少しでも泣きつける仲間がいるのはすごく素晴らしいことだなと思っていて。そういう繋がりは大事にしていきたいし、おばあちゃんになるまで仲良くしていきたいなって思います。
ーー大神さんがよく支えてもらっていると感じるホロライブのメンバーは?
大神:全員の名前を挙げるとキリがないので限定的になりますけど、自分がいま所属しているホロライブゲーマーズのメンバー、白上フブキ、猫又おかゆ、戌神ころねにはすごく支えてもらっています。あとは、いろはにほへっと あやふぶみで一緒に活動している(百鬼)あやめや、2期生の大空スバルとも、よく会ったりお話してもらっていますね。
ーーそういったホロライブの仲間たちには、一匹狼な気質の大神さんも弱みを見せられるわけでしょうか?
大神:弱みだらけなので完全に見せまくっています(笑)。みんな基本的に依存しすぎず、付かず離れずな感じではあるんですけど、でも誰かが泣いていると、例えそれが深夜でも「〇〇の家に集合!」っていう連絡がきて、みんなで駆けつけることもあるくらいで(笑)。本当にめちゃくちゃ仲が良いですし、一生ものの宝物の友だちです。
ーー素敵な関係性ですね。お話を戻しまして、今回の1stアルバム『Night walk』は、あらかじめ方向性を定めたうえで制作を進めたとのことですが、全体のコンセプトについて教えてください。
大神:今回は“夜”をテーマに制作しました。配信でファンの方と時間を共有するのは夜が多いというのもありますし、オオカミといえば夜かな? という安直な発想もあるんですけど(笑)、自分の中では“かっこいい”“お洒落”“優しい”みたいな雰囲気の楽曲を作りたかったので、“夜“を全体のモチーフにしたらそういう楽曲を作りやすいかなと思いまして。それこそ“夜”にもいろいろあると思うんですね。例えば、今日は上手くいかなかったと思う夜もあるでしょうし、ドライブしたい気分になる夜もあって。自分はもやもやしたときの気晴らしに深夜徘徊することがあるんですけど(笑)、夜には自分の世界観に入れる特別な空気感があると思うんです。その感覚はその人個人の特別なものだと思うし、そう考えると“夜”というテーマは深いなと思って。自分の角度から見たいろんな“夜”を作ってみたのがこのアルバムになります。
ーーその“夜”のコンセプト自体を決めたのも大神さん自身だったわけですか?
大神:はい。おかゆのアルバム(『ぽいずにゃ〜しんどろーむ』)は“毒”をテーマにしていましたけど、自分もアルバムにテーマがあったほうが聴きやすいと感じていたので、自分から「今回は“夜”というテーマを設けたい」と申し出ました。今回は全楽曲のコンセプトも自分から細かくお伝えして、根本からがっつり制作に関わったので、全部の曲がオススメになりました(笑)。