大神ミオ、『Night walk』で“夜”をコンセプトに描いた想い 音楽活動を始めた理由や制作への意欲

大神ミオ、『Night walk』で描いた想い

DECO*27さんが自分に難しい曲を託してくれたことがすごく嬉しい

ナイトループ / 大神ミオ (official)

ーー残り4曲はどの順番で作っていかれたのでしょうか。

大神:この後は「ナイトループ」をまず作って、その後に少し間を開けて、あやめとの「夜と雨」、その後に「Sirius」、最後は自分が作詞・作曲した「君と星の夜に」です。

ーー「ナイトループ」はアルバムのリード曲で、DECO*27さんが書き下ろされています。大神さんはホロライブとDECO*27さんによる音楽プロジェクト「holo*27」で「アニマル」のカバーを歌った縁がありますね。

大神:自分は昔からDECO*27さんのファンで、「ゴーストルール」とか「モザイクロール」みたいなかっこいい系の曲が大好きだったんですけど、DECO*27さんに(楽曲提供の)お願いをしても受けてもらえる自信がなくて。でも、「アニマル」のレコーディングでお会いしたときに「いつか楽曲を作ってほしいです」というお話をしたら、「全然いいですよ、いつにします?」って、結構軽いノリで作っていただけることになりました(笑)。それで後日、楽曲のイメージをお伝えしたら、その返信にいきなり「じゃあタイトルは“ナイトループ”にしましょう」と書かれていて。タイトルを先に決めて楽曲を作る方は初めてだったので、DECO*27さんはやっぱり天才なんだ! と思ったのを鮮烈に記憶しています。

ーーさすがDECO*27さんですね。

大神:しかもそこから1~2週間くらいでバン!と楽曲が上がってきて。DECO*27さんから「新しいことに挑戦してみませんか?」と提案していただいて、セリフやラップも盛り込んでいただいたのですが、とんでもなく難しい楽曲になっていて、DECO*27さんからも「すごく難しい曲になりましたけどミオさんなら大丈夫だと思います!」ってフワッとした感じで言われました(笑)。でも、DECO*27さんが自分に難しい曲を託してくれたことがすごく嬉しくて、自分史上一番練習した曲かもしれません。

ーーいや、この楽曲は常人にはなかなか歌いこなせないと思います。

大神:本当に難しかったですね。仮歌が初音ミクちゃんだったので、「これ、人間が歌えるのかな?」と思って(笑)。ラップの入った楽曲を今までほぼ歌ったことがなかったんですけど、リズムが大事だと思ったので、クリックに合わせながら歌う練習を頑張りました。それとこの楽曲は歌詞を追いながら歌うのは難しいと思ったので、レコーディングまでに歌詞を全部叩き込んで体に覚えさせて臨みました。でも、スタジオで全力投球しすぎて、2番のサビのRecが終わったあたりで酸欠みたいになってしまって、初めてメインの歌を録っている最中に休憩をはさみました(笑)。

ーーその甲斐あってか、いろんなアプローチが詰まった聴き応えのある歌になっていると思います。歌詞の内容も含めて、怒りや苛立ちのようなニュアンスが強いですよね。

大神:大人と子供の狭間みたいな感じの楽曲を作りたかったんです。DECO*27さんにも最初のオーダーで、深夜にコンビニで缶チューハイを買って公園で飲んでる二十歳になったばかりの若者が「社会ってクソだよな」って言っているような雰囲気の楽曲、とお伝えして(笑)。自分は子供じゃないと思っているけど、まだ子供の部分もある、けどどうしようもない、みたいな。アルバムのスパイス的な楽曲になったと思います。

ーー「夜と雨」は百鬼あやめさんをフィーチャーした、チルなムードが心地良いデュエットソング。

大神:最初はあやめと歌うことは想定していなかったのですが、コンペでこの楽曲を聴いたときに、あやめに歌ってほしいと思ったんですよね。むしろ、あやめのオリジナル曲として出せないかな、と思ったくらいで(笑)。

ーーなぜ百鬼さんに合いそうだと感じたんですか?

大神:これは本人にもずっと伝えているんですけど、あやめの声は特別だと思うんですね。中音域なのに鈴が鳴るような声をしていて、カランコロンした聴き心地なので、自分はあやめの歌が大好きなんです。この「夜と雨」という楽曲は、明るすぎず、暗すぎず、でも明日は頑張ろうかっていう緩めの楽曲なので、それがあやめのマイペースな感じにも合っているなと感じて。なのであやめと一緒に歌う形で昇華しました。

ーー実際にデュエットしてみての印象はいかがでしたか?

大神:あやめが歌っているところを見たかったので、あやめのRecにも立ち会って、後ろでずっと手を叩きながら「素晴らしい!」って言っていたんですけど(笑)、自分が思うあやめの良さもしっかり引き出してもらったので、もう何も言うことはありませんでした。相性の部分で言うと、あやめと自分の声はつぶし合わないと思っていて。合わさったときにお互いが邪魔にならず、ちょうどいい感じのハーモニーになるので、完成版を聴いたときも思った通りのものになっていて大満足でした。

ーーそして「Sirius」は壮大に展開するエモーショナルなバラード。どんなイメージで制作されたのでしょうか。

大神:「Sirius」と自分が作った「君と星の夜に」に関しては、このアルバムに足りない要素を考えて、それを埋める形で作った楽曲なんです。「Sirius」は、アルバムの中に恋愛曲があまりなかったので、「君に想いを伝えたい!」みたいに気持ちを強く伝える感じの恋愛曲にしていただきました。曲調的には、バラードはすでに2曲(「カメリア」と「溶けない結晶」)あがったので、バラードとロックを合わせたようなイメージでお願いしました。

ーー「君と星の夜に」は自ら作詞・作曲に携わっていますが(作詞は真崎エリカ、作曲は脇 眞富との共作)、アルバムにどんな要素を加えたかったのですか?

大神:爽やかめのバンドサウンド系の楽曲が欲しいなと思ったのですが、自分の思い描く通りの楽曲を作るためにはアウトプットをしっかりとして伝える力がかなり必要だと思ったんですね。でも、自分の中ですら抽象的だったので、これは自分で作詞・作曲するのが一番早いかもと思って、自分で作ることにしました。

ーー「Sirius」は別れの悲しい気持ちを切々と歌い上げるバラードですが、「君と星の夜に」にも恋愛要素が感じられます。

大神:自分は活動の中で、ファンの方に向けたシチュエーションボイスみたいなものも出していて、例えばバレンタインにチョコレートを渡すシチュエーションみたいに、いろんなボイスがあるんですけど、「君と星の夜に」はそのシチュエーションをそのまま持ってきた感じの歌詞になっています(笑)。実は歌詞を書くのが苦手で、今の自分の中にはシチュエーション以外の歌詞の引き出しがないんですよね。ただ、聴いてくださる皆さんを“君”と呼んで、“君”に想いを伝えたいっていう片思い的なイメージで作ったので、ファンの方がときめいてくれたら嬉しいなと思います。

ーーそのシチュエーション自体はご自身で決めたということですよね?

大神:そうですね。シチュエーションボイスに関しても全部自分で台本を作っているので。なのでファンの方への気持ちも、いつもシチュエーションボイスとしてめちゃめちゃ伝えているんですよね(笑)。もうこれでもかっていうくらい伝えているので、もしかしたらこの曲も「いつものやつか」って思う人がいるかもです。

ーーいやいや(笑)。歌にすることで伝わり方も変わると思いますし。歌詞を紐解くと、“君”のそばにいたいという気持ちが軸にありつつ、“弱い心”の自分も“全部僕だ”と肯定するような部分もありますね。

大神:自分は結構自信がないタイプで。自分のことは客観的にわからないし、そんな自分をみんなが受け入れてくれるのかもわからない、自信の無さが歌詞に表れている気がします。何も考えずに歌詞を書くとメンヘラみたいになってしまう節があるんですよね(笑)。でも今回の歌詞に関しては、一歩を踏み出せないもどかしさを描きつつ、「受け入れてほしい」という気持ちがぶつけられたのかなと思っています。

ーーちなみに大神さんは、さくらみこさん、大空スバルさんとのユニット、ホロライブ運動会実行委員の楽曲でも自分で作詞・作曲されていますよね。なので自分で楽曲を作ることへの興味が強いのかなと思って。

大神:作詞は苦手なんですけど、自分の中には小さい頃から自分の音楽がたくさんあって、それが蓄積されているんですよね。そのせいで既存の楽曲を自分で勝手に改変して歌ってしまったりする癖もあるんですけど(苦笑)。でも、自分の中で気持ちの良い音楽の基準があるので、それをアカペラでアウトプットすればプロのクリエイターさんや編曲家の方に編曲してもらえる今の環境は、すごく楽しいんですよね。

ーーそれもあってホロライブ運動会実行委員の楽曲も自分で作られたわけですか?

大神:そうですね。ミーティング中に「オリジナル曲が欲しいよね」という話になったんですけど、時間的に「今から作ってもらうのは無理じゃない?」みたいなテンション感だったんです。なので自分が「作れるかも」って言ったら、2人に「えっ?ウソでしょ?」みたいな反応をされて(笑)。でも、そのミーティング中、自分が不要な時間にミュートして、その間に楽曲を作ったんですよ。

ーーえっ!? めちゃくちゃすごくないですか?

大神:ミーティング中に曲も歌詞も全部作って、ミーティングが終わったときに「できた!」って送ったら2人とも「え~、なんで!?」ってなっていました(笑)。それが去年のホロライブ運動会の楽曲(「ハッピー☆フィーバー!ホロライブ」)で、今年の「光になれ!」も「今年も作ろうかなあ」って言ったら「じゃあお願いします」ということで作りました。去年は電波ソングでしたけど、今年はアニメのオープニングっぽい曲をイメージしました。

ーー「君と星の夜に」もそうですが、大神さんが作る楽曲はメロディが明るいですよね。

大神:あっ、ディレクターの方にも同じことを指摘されて、「ミオさんは多分ネアカです」って言われました(笑)。作曲する人は、自然に作った曲が明るい曲になるか暗い曲になるか二極化していて、大体明るい曲を作る人はネアカな人が多いらしいんです。

ーー大神さん自身はネアカという自覚がある?

大神:うーん、正直暗い部分もありますけど、もしかしたら暗い部分に憧れているのかなとも思います。椎名林檎さんが好きなのも、ちょっとダークな部分に憧れがあるからで。いつか暗い曲の作曲にもチャレンジしてみたいですね。

ーー自分の中に音楽がたくさんあるというお話ですが、もしかしたらシンガーソングライターの素質があるのかもしれないですね。

大神:何かしらテーマ性があったほうが作りやすいんですけど、でも、たまに曲が降ってくるんですよ。寝ようと思って布団に入った瞬間とか、お風呂に入っているときとかに、「このフレーズ、すごくいい!」というのが降ってくるので、そういうときはすぐ防音室に入ってアカペラで録って、パソコンの「思いついたメロ」というフォルダに保存しています(笑)。もし何かあったときに「これとこれを繋ぎ合わせたらいいかも」みたいな感じで曲を作れるかなと思って。機会があればちゃんと作詞・作曲を勉強したいなと思いますね。

ーー今後が楽しみです。改めて、今回のアルバム制作を経てどんな手応えを感じますか?

大神:正直、もっと頑張れそうと感じる部分もあったので、次のアルバムではそこも埋められるようになれたらと思っています。それと今回のアルバムで自分の幅を知ることができたと思っているのですが、どちらかと言うと自分は“かわいい”よりも“かっこいい”が合うのかなと感じていて。今後は“かっこいい”とか“お洒落”な曲、バラードも好きなので頑張っていきたいなと思います。今回は自分自身もどこまでできるかわからない状態で、ほぼクリエイターさんに作っていただいたのですが、次のアルバムではもう少し自分の作詞・作曲を増やして、自分のアーティスト性が出せたらいいなと思っていて。今はホロライブのファンの方が聴いてくれるのがほとんどだと思うんですけど、いずれは音楽が好きな方にも刺さるような、心にグッとくる曲を歌えるアーティストになりたいです。

ーーアーティスト活動における目標・展望はありますか?

大神:目標はソロライブです! 展望としては、これからも継続的にオリジナル楽曲を作っていきたいですし、作詞・作曲の経験ももっと積んでいきたいですね。

ーーソロライブではどんな演出をやってみたいですか?

大神:なんだろう? 炎を出してみたいですね。バーン! みたいな(笑)。でもミオがそこにいると思ってもらえるような、存在を感じてもらえるようなライブをやってみたいなと思っています。

ーー最後に、大神さんにとってファンはどんな存在か、お聞かせください。

大神:大神ミオの土台になってくれている存在です。ファンの方はミオの足元をしっかりと支えてくれていて、ミオがやりたいことを自由にやってもついてきてくれる、優しくて暖かい、すごく安心できる存在なんです。きっと今回のアルバムも待ってくれていたと思うので、たくさん聴いてほしいなと思います。

大神ミオ5周年記念ライブ『ナイトループ』【 ホロライブ / 大神ミオ 】
大神ミオ 1stアルバム『Night walk』
大神ミオ 1stアルバム『Night walk』

■リリース情報
1stアルバム『Night walk』
販売:https://shop.hololivepro.com/products/ookamimio_nightwalk
配信:https://cover.lnk.to/Nightwalk

<収録曲>
01.夜光通信
作詞・作編曲:堀江晶太
02.深く紺になる
作詞:MegRi
作編曲:如月結愛
03.ナイトループ
作詞・作曲:DECO*27
編曲:tepe
04.サヨナラは、まだ
作詞・作曲:河合泰志、山本恭平
編曲:河合泰志、山本恭平、脇眞富
05.カメリア
作詞・作曲:川江美奈子
編曲:村田昭
06.夜と雨 feat.百鬼あやめ
作詞・作編曲:脇 眞富
07.君と星の夜に
作詞:大神ミオ・真崎エリカ
作曲:大神ミオ・脇 眞富
編曲:脇 眞富
08.夜明けのメロウ
作詞:MegRi
作編曲:如月結愛
09.Sirius
作詞:MegRi
作曲:Nika Lenz
編曲:水野谷 怜
10.溶けない結晶
作詞・作編曲:MIMI

■関連リンク
公式X
https://twitter.com/ookamimio
YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCp-5t9SrOQwXMU7iIjQfARg

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる