NEST、鋭い批評眼で切り拓くポップの新境地 バンドの型に縛られない自由な創作の根源に迫る

NESTが切り拓くポップの新境地

J-POP、ラウドロック、ポップパンク……NESTのルーツを辿る

――では、お二人の音楽的なバックグラウンドを教えてください。

Takuto:僕はあんまり音楽に詳しくなかった人間で、学生時代もJ-POPとかを聴いていて。バンドを始めた後ぐらいから洋楽やバンド物も聴き始めた感じです。最近聴いているのだと、Hayatoと共通しているものもあると思うんですけど、それ以前はたぶん全然違うんじゃないかな。そもそも歌いたいと思ったのも……ただ他の人より歌が上手いって言われてたからだった気がします(笑)。歌うことは好きだったんですね。人の前で歌っているアーティストを観て、いいなって。

Hayato:高校時代で覚えているのは、通学のバスの中でTakutoが「One Directionの『Drag Me Down』いいよね!」って話してたこと。

Takuto:ああ、1Dはずっと聴いてましたね。よく歌ってたし。

Hayato:高校時代、僕はラウドロックをかなり聴いてました。coldrainやSiM、NOISEMAKERとか。そこら辺をどんどん彼に教えていったんですよね。

Takuto:目新しさがあったんですよね、バンドってものに。ジャンルを気にして音楽を聴いたりしてこなかったから。

Hayato:だから彼は歌えるんでしょうね。逆にもっと前から特定のジャンルに染まったボーカルだったら、エゴが出てくると思うから。

――高校以前だと?

Hayato:子供の頃は親の影響で、車の中でMr.ChildrenやTHE BLUE HEARTSを聴いていましたね。それで中2の時に、母の再婚相手の人がギターを持ってきてくれたんです。いきなりタブ譜を渡されて、それがGreen Dayの『Nimrod』だったんです。

――『Nimrod』というのが渋いですね(笑)。

Hayato:そう、『Dookie』とかじゃないっていう(笑)。7曲目の「Worry Rock」って曲がめちゃくちゃカッコよくて、そこからギターの練習を始めた感じですね。中学の頃は洋楽もJ-POPも、日本のバンドもいろいろ聴いていました。ELLEGARDENを後追いで聴いたりとか。それで、高校になってからはラウドにいったっていう。

――その時点でのバックグラウンドと、今のNESTのサウンドにはまだかなり距離がありますよね。

Hayato:そうですね。大学の時に僕は留学したので、2018年にサンディエゴのワープト(『Vans Warped Tour』)でState ChampsやTrash Boatを観たりして。そのあたりから徐々にポップパンクというか、ポップ系のものも聴き始めたんですよね。バンドを始めてからは一つのジャンルにどっぷり浸かるというよりも、いろんなジャンルのアーティストを聴く感じになっていきました。そこで自分がプレイするなら何をやりたいか? って突き詰めていく中で、今の形になったんです。

――今作の資料には「80's風のサウンド」という形容がありますが、ここで鳴っているのはリアル80'sのそれというよりも、2000年代の80'sリバイバルに近いものを感じました。実際の80'sサウンドはもう少しダサいというか、いなたいものなので。

Hayato:うんうん。僕はこれまで80'sの音楽を意識して聴いていたことはなくて、特に好きでもなかったんです。だからたぶん、リバイバル系を無意識に聴いてきたんだろうなって。気づいたら僕らの身体の中に通っていたものが、たまたまそれだったというか。僕らより少し年上の方に「懐かしい感じがある」とか「U2っぽいね」と言われることがあって、でもそこで挙がるアーティストを僕らはよく知らないっていう(笑)。

――(笑)。

Hayato:ただ、初期の80'sにはちょっとしたダサさがあるということは、僕も概念としては理解していて、それをもう少し可愛く作り直してみた曲もあるんです。Metallicaを知らないのにMetallicaのバンドTシャツを着ているようなヤツにはなりたくないっていうか(笑)。そうやっていまだにちょっとずつ昔の音楽も掘っていたりしますね。

NEST "While We Are Sleeping"(Official Live Video) from SATANIC PARTY 2022 at duo MUSIC EXCHANGE

“好き勝手”な曲作りのプロセスと今後の野望

――曲作りはまず何から始めますか?

Hayato:前作まではメロディ先行だったんですけど、今は曲によってバラバラですね。「Young, Cheap, And Helpless feat. うえきさくら」はオケ先行でしたし、「Bow!Kiss!Begin!」はタイトル先行で、これは『ワンダー 君は太陽』っていう映画に出てくるセリフからとったんです。意味としては指相撲を始める合図なんですけど。

――2曲目の「Décalcomanie」は全く方向性が違うエレクトロニックチューンで。

Hayato:「Décalcomanie」はオケ先行で作った曲ですね。この曲では少し速いアルペジオみたいなシンセのリフが流れていているんですけど、単調ではあるけれど繰り返しで流れるように進んでいく曲にしたかったんです。リファレンスとしては小袋成彬さんの最近の曲や、The 1975「Happiness」のDJサブリナ(DJサブリナ・ザ・ティーンエイジDJ)のサンプリングにも影響を受けました。ただ、どの曲も歌詞を書くのが最後ですね。Takutoに渡すのもいつもギリギリになってしまうし、しかも英語なので、そこはかなり迷惑をかけているんですけど。それでもなんとか歌ってくれるっていう。

Takuto:必死に覚えています(笑)。歌詞って大体ボーカルが作ったりするじゃないですか。でも僕らの場合はレコーディングからライブまでの間に、僕が歌詞を自分に落とし込んでいく作業が必要で、そこも普通のバンドとの違いかもしれないですね。僕のボーカリストとしての作業は、レコーディングの段階では俳優の演技に近いんですよね。自分のエゴはなく、作品優先でやっている感覚です。それを自分の言葉にするのはライブになってからなので。

Hayato:僕らの歌詞は、英語の意味が通じるというのは大前提にありつつも、そもそもがフロウ先行だったりもするんですよね。歌詞の意味は、僕にとっては自分の世界の中でいったん完結しているものであって、それをTakutoに渡した段階で彼がどう受け取るかは任せているし、ファンの人に届いた時点でもう自分だけの曲じゃなくなるから。歌詞に限ったことではなくて……いや、これは今後頑張らなきゃいけないことかもしれないんですけど、正直、お客さんのリアクションを考えて曲作りをしたことがないんです。例えばライブでみんなに歌ってほしいとか、手を挙げてほしい、みたいなことは今のところ考えたことがないんです。やっぱり曲至上主義なんですよね……ちょっとバンドとしておかしいですかね(笑)?

――(笑)。ユニークではあると思います。特に邦楽ロックにおいては異質かもしれないですよね。自分たちの日本のバンドシーンにおける立ち位置をどう考えていますか?

Hayato:今の立ち位置としては、好き勝手やって帰るっていう感じですね(笑)。バンドを始めた頃に、ポップパンクやメロディックパンクのシーンにはもっといろんなバンドがいると思っていたんですけど、みんな同じような道を進んでいて……。

――もっと自由なものだと思っていた?

Hayato:それもあるし、もっとごちゃごちゃしていると思っていたんです。でも、わりとフォーマット化されていると気づいて、だいぶ悩んだ時期もありました。僕は性格的に、みんなが進む道があるとしたら、別の道を自分で作りたいタイプだから。でも最近は、じゃあもう僕ららしく、好き勝手やろうよというモードになってきましたね。

――『The Market on One Intense Sunny Day』の4曲に加え、先日のライブでも披露された新曲「At The End of The Day, We Found」を含む2曲を追加したバージョンを、新たにリリース予定だと伺っています(12月13日リリース)。

Hayato:『The Market on One Intense Sunny Day』のジャケットは、前回のミニアルバム『While We Are Sleeping』と同じフォーマットを踏襲しているんです。つまり、今回のEPも最終的にはミニアルバムになるっていうのを、ある意味で予告というか暗喩したデザインだったんですね。2曲追加し、6曲入りのミニアルバムとなる『The Market on One Intense Sunny Day』は、ジャケットもモノクロからカラーに変わります。作品の本当の色が見えてきて、そこでようやく完成するっていう。

――最後にNESTの1年後のなるべく具体的な目標と、3年後のなるべく大きな野望を教えてください。

Hayato:1年後の目標としてはやっぱりアルバムを作ってみたいです。それと、僕たちの冠をつけてツアーを回りたい。自分たちのイベントとして各地でアーティストも呼んで、ちゃんと音楽を鳴らしたい。3年後には……NESTとして海外に行っていたいですね。日本でやることがまだたくさんあるとは思うんですけど、海外に行ったほうが早くない? っていう感覚もあって(笑)。それが楽だとは言わないですけど、そこで失敗を恐れず試したいこと、見てみたい知らない景色がたくさんあるから。

Takuto:1年後には自分たちのイベントをソールドアウトできるようになっていたいです。3年後の目標としては、オーディションではないルートで『SUMMER SONIC』に出演すること。海外のアーティストと一緒に大きなステージに立ちたいっていう夢があるんです。

■リリース情報
EP『The Market on One Intense Sunny Day』
2023年9月6日(水)配信リリース
<収録曲>
01. Bow!Kiss!Begin!
02. Décalcomanie
03. Young,Cheap,And Helpless feat.うえきさくら
04. Say the Flowers Wither.

配信EP『The Market on One Intense Sunny Day (Completed)』
2023年12月13日(水)配信リリース
<収録曲>
01. Bow!Kiss!Begin!
02. Décalcomanie
03. Young,Cheap,And Helpless feat.うえきさくら
04. Say the Flowers Wither.
05. My Cocktail Party
06. At The End Of The Day, We Found.

先行配信曲「My Cocktail Party」
配信リンク:https://lnk.to/mycocktailparty

NEST オフィシャルサイト

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