toroが“ロックの復権”を掲げ、バンドを選んだ意味を語る セルフタイトルの1stアルバム『TORO』に懸けた会心の一撃

toro、ロックとバンドに託す理想

 Winter Wakesのギタリストとして、HIKAGEのサポートメンバーとして活動を続けてきた梅田シュウヤ、NITRODAYのベーシストでもある松島早紀、元ABLAZE IN VEINSの大西竜矢という1999年生まれの3人によって今年4月に結成されたバンド、toro。結成以来コンスタントに楽曲を発表してきた彼らが8月に堂々セルフタイトルの1stアルバム『TORO』をリリースした。クラシックロックの威風堂々たる雰囲気とオルタナティブな鋭さ、そして梅田の書く内省的で孤独な歌詞。さまざまなムードが入り混じるこのアルバムの世界観には懐かしさを感じる人もいれば新鮮な驚きを覚える人もいるだろうが、いずれにしてもシンプルなそのサウンドは多くの人の心を揺さぶるはずだ。これまでラウド畑でキャリアを重ねてきた梅田が今このバンドを始めたのにはどんな理由があったのか、「ロックの復権」という旗を掲げるtoroとはどんなバンドなのか。梅田、大西とエンジニアでライブでのサポートギターも務めるキムラ(LIKE A KID)の3人(松島は所用で残念ながら欠席)に話を聞いた。(小川智宏)

ロックの音楽性も好きだけど、主張する感じ、態度で表している感じが好き

TORO(写真=梁瀬玉実)
左から キムラ/梅田シュウヤ/大西竜矢

――これまでもバンドをやってきたなかで、なぜ今このタイミングでこのバンドを始めたんですか?

梅田シュウヤ(以下、梅田):正規メンバーの3人は1999年生まれで、今年24歳になるんです。いろいろ人生を考えるタイミングで、バンドをやるにも働いて両立しながらバンドをやるか、頑張ってバンド1本でやるかが別れる年齢だと思うんですけど、ちょうどそのタイミングで自分がバンドを辞めて。本気で頑張れるバンドを作ろうかなと思って結成しました。それで最初に話しかけたのがドラムの竜矢で。

大西竜矢(以下、大西):僕も前のバンドではシュウヤと同じジャンルでライブハウスで叩いたりしていて。僕も結構アンダーグラウンドなジャンルをやっていたので、バンド1本でやっていくには難しいかなっていうところで、「どうしよう」って考えていたんです。そこでちょうど声をかけてくれたので、「やるしかないな」って。

梅田:サポートギターの彼(キムラ)はもともとエンジニアもやっているのでレコーディングを頼もうと思っていたんですけど、ライブでギタリストのことを考えていなかった――考えてたっけ?

大西:考えてなかった(笑)。

梅田:それでギタリストをどうしようかと思っていたら、「あれ、ギター弾けるな」と、お願いして。

キムラ:気づいたら入っていました(笑)。

梅田:ほぼほぼ正規メンバーというか、正規メンバーよりも働いているんじゃないかっていう(笑)。楽曲面でも貢献してくれているので、今日もインタビューに参加してもらいました。

toro - THE SICKO (Live Movie)

――なるほど。シュウヤさんのなかで人生的なタイミングでこのバンドを立ち上げたというのもあったと思いますけど、音楽的な部分で「こういうものをやりたい」という思いもあったんですか?

梅田:ありました。今日いる3人は全員、もともとラウドというかヘヴィミュージックをやっていたんですけど、そういうエクストリームなやつよりももうちょっと……自分はLed Zeppelinとか、ギター教則本に出てくるようなクラシックロックがもともと好きだったから、そういうバンドができたらなって。今は、やりたかったことをやれてると思う。

――シュウヤさんがやっていたWinter WakesとかABLAZE IN VEINSみたいなバンドを聴いてきた人からするとだいぶ毛色が違うので、驚いたファンもいたと思います。

大西:最初はやりたくてやったんですけど、そのジャンルでやっていくことの限界値が見えちゃったということもあって。こういう王道なジャンルのほうがいろいろなアプローチできたりするし、やっぱりやっていて楽しいんですよね。こういうことをやりたいなって、自分も思っていました。

――今回のアルバムを聴いても、聴く人によってこのバンドをどう形容するかが変わってくる感じがしますよね。“UKロックっぽい”って思う人もいるだろうし、“グランジっぽい”って思う人もいるだろうし、ヘヴィミュージックの要素を感じる人もいるだろうし。その、勝手に決めつけない感じがすごく自由でおもしろいですよね。

梅田:20年とか、しっかりやっていくバンドにしたいなって思った時に、音楽性で詰まっちゃったらダメじゃないですか。「続けていくためにはどういうジャンルをやればいいんだろう?」と考えた時に、もともと自分が持っていたバックボーンと重ねて、いちばん汎用性があるスタイルというか。そのなかでも、“バンド”という縛りは自分には必要だなと思うんですけど。

――それはどうして?

梅田:なんでなんですかね? 個人的には、たとえば4人だから起こるケミストリーみたいなものには、あんまり魅力を感じなくて。シンプルにドラム、ベース、ギター、ボーカルのサウンドが好きなんですよね。あと、ライブもバンドのほうがかっこいいなって思う。

――バンドマジックというよりも、バンドサウンドに惹かれているというか。まさにtoroの音はそれを伝えるものになっていますよね。4月の結成からリリースもしつつ、ライブもやって、8月にはアルバムを出すというところまで辿り着いたわけですけど、そのなかで得た手応えとしてはどんなものですか?

梅田:始めた時から、バンドとしてはアルバムを出すというところをまずは目指していたので。今時はセルフプロデュースというか、自分で動画作ったりジャケット作ったりすることも大事なんですけど、バンドとしてやっていかないといけないのは、ひたすらアルバムを作り続けることだと思うんですよね。前のバンドも含めて、キャリアで初めてアルバムを作れたことに対しては、まず達成感がありました。ちゃんと自分たちで作った名刺があるからこそ、今後人と話す時も自信を持てるし。そういう名刺をまずは作れたっていうところが大きいですかね。

大西:そうだね。正直、まだ出したばかりだから反応とかはよくわからないんですけど。

梅田:始めたてにしては、反応もいいほうだと思うんですよね。

――曲が出るたびに話題になる感じがありましたよね。

梅田:もともといたラウドなシーンでは、ある程度知られることができたんじゃないかなと思うんですけど、まだいろいろなところに届き切ってはいないとも感じているから。そこを今後どうやっていくかっていうことが――。

大西:すごく課題ではありますね。

――toroは活動するにあたって「ロックの復権」という言葉を掲げているじゃないですか。それはバンドのなかに意志としてある感じなんですか?

梅田:ブランディングというのもありますね(笑)。おもしろいじゃないですか、イケている主張がバンドにちゃんとあったほうが。言いたいことがすごくいっぱいあるんですよ。「ロックを復権させる」ということもそうですけど、個人的にはもうちょっと社会的なステートメントを言えるバンドになりたくて。それこそ、女性の社会進出とか差別のこととか、理想を押しつけられるのってアーティストだけだなと思うので。そういうことを言いたいんですけど、それを一言で伝えられる、わかりやすい言葉があればいいなと思って、とりあえず「ロックの復権」って言ってます(笑)。

――単純に音楽性だけじゃなくて、ロックだからこそ言えることがあるだろう、というか。

梅田:ロックの音楽性も好きですけど、主張する感じ、態度で表している感じが好きなんですよ。同じコードでもその人の意見があるからかっこよく見える、みたいな。Rage Against the Machineとかもそうじゃないですか。そういうところが、結構惹かれる部分だったりする。

――ここまで出してきた曲たちにも、そういう思想やメッセージが込められている?

梅田:そうですね。歌詞の一つひとつで直接「差別はよくない」って表現しているわけじゃないですけど、そういうものは10年、20年というロングスパンで表していく態度かなって思っていて。むしろ、ライブとか直接の場でそういうものを表明していきたいなと思っています。

toro - 本音 (Official Music Video)

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